プレマシャンティからの贈り物 水谷商店の「さくらえび」と「しらす」
旬のご馳走、産地直送!
プレマシャンティは、繋がりのなかで生まれます。
それは人であったり、自然であったり、商品であったりします。
ご紹介頂いたご縁を辿って各地を旅するうちに、その土地だからこその出会いもあります。
その土地でしか、その時期にしか出会えない味。
皆さんにご紹介したいけれど、生ものであったり、作る量が限られていたりと、私たちがお預かりするには難しい商品も決して少なくありません。
また作り手を身近に感じて初めて、より深い味わいが生まれる商品もあります。
プレマシャンティの開拓チームが、各地を巡り、作り手の目を見て、言葉を交わして惚れ込んだ数々を、桜のカードを添えてお届けします。
駿河湾名物を旬に食す
日本最高峰の富士山の南、伊豆諸島の西側に広がる駿河湾は湾口が大きく開き、最大水深約2500メートルに達する日本で一番深い湾です。南海トラフの東北端、駿河トラフの深海から流入する栄養豊かな海水と、富士山や南アルプスから山の栄養を豊かに含んだ雪解け水や雨水が、富士川や大井川などの河川を介して、海底湧水として流れ込んでいます。湾中央部でも水深が1500メートルある駿河湾の海底地形は、非常に起伏に富んでおり、その影響なのか、日本に生息している魚類のうち約4割以上がこの駿河湾で見つけられると云われています。水深40メートルから60メートル付近では、イサキやマダイ、カサゴなどが、太平洋から流れ込む黒潮の影響もうける湾内には、サンゴや熱帯魚も暮らしています。体長3メートルを超える世界最大のカニ「タカアシガニ」や、古代のサメの特徴を色濃く残した「ミツクリザメ」などの深海性の生物が生息しているのも駿河湾の特徴です。そしてその中には、駿河湾でしか漁獲されない海産物も存在します。
駿河湾の風物詩、「ピンクの川原」
富士山を背に、河川敷一面がピンクに染まる。
漁の解禁とともに毎年のように報道される駿河湾の美しい写真を、ご存じの方も多いでしょう。
夜のうちに漁にでて獲ったさくらえびを夜のうちに水揚げし、生のまま丁寧に富士川の河川敷に丁寧に広げて天日干しされています。太陽が燦燦と注ぐ、お天気の良い日のみのこの風景。河川敷一面に広がるピンクのさくらえびの背景には、季節によっては雪をかぶった富士山が!万葉の時代から歌に詠まれ続けた駿河湾と富士山の美しい風景に加わった「新しい」風物詩として、さくらえびの季節には、多くの観光客が集まるようになりました。
「さくらえび」はその名のとおり、透きとおった薄ピンク(さくらいろ)の身体をした小型のエビの一種です。体長は大きくても40ミリほど。日中は水深200メートルから300メートルで暮らす深海エビですが、夜になると水深20メートルから50メールまで浮上する習性をもっています。寿命は、2年未満。海の深い場所にのみ暮らすこのさくらえびは、日本でも駿河湾とその周辺、長崎県の五島列島沖にしか生息していないとされる希少な生物です。豊かな海の恵みとともに歴史を刻んできた日本人にとっては、さくらえびも海からの恵みのひとつとして食してきた歴史があります。そしてこのさくらえびは、駿河湾でしか食せないと云っても過言でないほど。日本国内でのさくらえびの水揚げ量は、100パーセントが駿河湾です。
さくらえびの漁は、年2回。
4月から6月までの春漁と、10月から12月までの秋漁です。それ以外の時期は、禁漁期。繁殖の時期の禁漁はもちろんですが、漁が許可されている期間であってもとりすぎないよう漁が制限されます。日本列島の周辺各地で、海の様相が変わりつつありますが、駿河湾も例外ではなく、漁獲量が激減した2018年には、秋漁を中止。操業する船の数を減らしたり、漁の期間を短縮したりと、漁業組合が自主規制しながら、季節の恵みを引き継いでいます。
駿河湾で水揚げされたさくらえびは、「駿河湾さくらえび」として紹介されています。これは由比・蒲原・大井川の3つの桜海老商業協同組合(由比は、桜海老商工業協同組合)にのみ許された商標です。さくらえびの漁もまた許可制で、由比・蒲原・大井川の3か所を基地とする許可証をもつ漁船にのみ漁が許されています。
駿河湾名物、「ふわふわ、銀の宝石」
さくらえびと並ぶ駿河湾の名物が、「しらす」です。
しらすとは、いわしの稚魚のこと。南の海から黒潮にのって駿河湾近郊にやってくる稚魚たちは、身体が半透明(透明?)であることから白子(しらす)と呼ばれています。プランクトンが豊富な駿河湾で育った稚魚は、収穫に適した大きさに育つ初夏が旬とされています。
駿河湾のしらす漁は、全国でも上位3位の漁獲高を誇ります。
いわしの稚魚というと、よく知られているのが「ちりめんじゃこ」でしょうか。適度に乾燥された硬めの食感と海の鹹味が特徴で、保存のしやすさも手伝ってか、全国のスーパーでは定番かもしれません。これと対局をなすのが、生しらす。しらすの漁場が近いからこそ、味わえる旬の味わいです。ぷりぷりした食感と口内一杯にひろがる甘さは、生だけのもの。おなじしらすが、食感も味もこれだけ変わるのだと驚きます。小指のさきほどの小さなしらすは鮮度が落ちやすく、生での流通は非常に難しいとされてきましたが、漁場の近さと冷凍技術の進歩のおかげで、駿河湾のしらすは生での流通もはじまっています。
生しらすにさっと火を通し(釜あげし)た「釜あげしらす」も、駿河湾名物のひとつ。生しらすともちりめんじゃことも全く違う食感と味わいで、作り手によって若干風味がかわるのも楽しみです。釜あげしらすを口に含むと、磯の香りが広がり、ほろほろと解けて崩れ落ちるような柔らかな食感に驚きます。乾燥のちりめんじゃこのような磯の塩気よりも、甘さをダイレクトに感じるのも特徴かもしれません。生のむっちり感からは想像もつかない、ふんわりした食感。炊きたてのごはんに釜揚げしらすを山盛りのせた釜揚げしらす丼は、シンプルだけれどしらすのうまさをダイレクトに感じるご馳走です。
おいしいの発信、「水谷商店」
大正10年の創業以来、駿河湾の恵みと静岡の味を守り続ける「水谷商店」。静岡県蒲原の海岸からそう遠くない場所に店舗を構え、さくらえびやしらす、いわしけずり(いわしぶし)などを製造・販売しています。蒲原の水谷商店といえば、県の水産業界では知らないひとがいないほど。代々静岡の水産業に携わり、加工だけには収まらない「駿河湾」との関りを築いてこられました。年代物の電動削り器で薄くふんわりと削る「いわしぶし」を中心に、季節のさくらえびやしらすの加工にも携わっています。さくらえびの季節には、漁の日にはさくらえびのために。しらすが水揚げされる日は、しらすのために。何が水揚げされるかで、その日の仕事が決まります。その日の天候も、仕事を大きく左右します。水谷さんで釜あげされたしらすの柔らかいこと!そして、甘いこと!!釜揚げさくらえびだって、負けていません。ふんわりとした食感に加えて、噛むと口内で爆発する旨みの濃いこと!!!塩加減といい、食感といい、絶妙です。それだけでなく・・・食べてほっとするのが不思議です。水谷商店に一歩足を踏み入れると、ふわっと漂う温かな雰囲気と水谷さんたちのおもてなしの心がそのまんま、ぎゅっと詰め込まれたような作品たちは、頂いたあとの幸福感ならぬ「口福」感は、鮮度が高く質の良い素材と作り手さんが一体になって、奏でる味なのだろうと納得します。