地域と暮らし、地域で生きる、「無茶々園のおすそ分け」
山、里、海、そして世界へ、循環する自然のありようのまま生まれる宝物たち
プレマシャンティは、繋がりのなかで生まれます。
それは人であったり、自然であったり、商品であったりします。
ご紹介頂いたご縁を辿って各地を旅するうちに、その土地だからこその出会いもあります。
その土地でしか、その時期にしか出会えない味。
皆さんにご紹介したいけれど、生ものであったり、作る量が限られていたりと、私たちがお預かりするには難しい商品も決して少なくありません。
また作り手を身近に感じて初めて、より深い味わいが生まれる商品もあります。
プレマシャンティの開拓チームが、各地を巡り、作り手の目を見て、言葉を交わして惚れ込んだ数々を、桜のカードを添えてお届けします。
「無茶々園(むちゃちゃえん)」~暮らしをつくる
昭和49年(1974年)5月。
愛媛県狩江地区(旧明浜町)で3人の青年を中心とした農業後継者グループが、広福寺住職の好意で貸してもらった15aの伊予柑(いよかん)園を研究園とし有機農業に取り組みはじめました。
「ネオン街の蝶を追っ掛けるよりみかん畑のアゲハチョウでも追っ掛けようや、無農薬・無化学肥料栽培なんて無茶なことかもしれないが、そこは無欲になって、無茶苦茶に苦を除いて頑張ってみようや」という意味合いで、「無茶々園(むちゃちゃえん)」と名付けられたそのほ場が、今や町を超え、国を超え、大きな繋がりに育ち、全国的に名前が知られるようになった地域コミュニティ「無茶々園」のはじまりです。
地域と生きる、地域で生きる
2024年現在、無茶々園(むちゃちゃえん)は柑橘類の有機栽培と加工・販売だけではありません。
農産物の有機栽培・加工と販売、海産物の販売、有機栽培の普及と生産者コミュニティづくり、新規就農者の受け入れ、日本国外からの農業研修者の受け入れ、農業研修施設の運営、ホームヘルパー講座の開設、高齢者のデイサービス運営と有料ホームの運営、総合福祉事業の実施、化粧品や雑貨の企画・販売、海外での有機農業の実施と普及など、活動は多岐にわたります。
目的は、自立した地域づくりです。
有機農業へと舵をきった原点も、「地域を持続させるため」。
海と山が近接する明浜では、漁業も盛んです。アコヤ真珠の養殖、ちりめん漁、わかめや青のりの養殖など、日照が良く、石灰岩質の山から流れ込むミネラル豊富な水に支えられ、プランクトンが多く発生する海だからこそできる水産業が発展しています。山が荒れると、海は再生できなくなります。プランクトンが少なくなり、小魚や貝類が集まらなくなります。樹木が荒れ海面に落ちる陰影が変わると、海底に育つ珪藻類も育たなくなり、海が浄化されません。「山で使ったものが海に流れ込み、海の環境をつくっている」というとても当たり前のことが、科学的な根拠などない遥か昔から「この林を守らなければ、漁ができなくなる」と、この土地の漁師の間で代々口伝されてきたともいいます。そう遠くない昔、大量に水揚げされたイワシなどの海産物を肥料にし、山から流れる生きた水が海を豊かにするという循環が当たり前だったように、地域の自然の循環がひとびとの営みにつながります。
家族経営が多い農業には、地域の支えは欠かせません。高齢になれば、暮らしは閉じがちです。高齢化が進めば、農の担い手は減っていきます。家庭での介護負担が重くなれば、時には農業を営み続けることも難しくなります。家にひきこもりがちな高齢者が集える場所を、体力的に農作業が厳しくなっても仕事が出来る場所を。「100歳になっても笑顔で、人生の完成期に輝けるように」と営まれる福祉事業の枠組みのなかには、「yaetoco(ヤエトコ)」で使われる精油の原料である柑橘の皮を手剥きする手仕事の場もあります。また地域の学校給食への取組みとあわせ、作り手たちが学校に出かけ、農業や漁業を伝える機会も設けています。地域の食文化を取り入れた総菜づくりや、高齢者に向けた弁当の配食もします。
作り手と買い手が関わり合い、お互いを理解しあいながら作る繋がりと関係性が、あってこそ。
経済的な豊かさを求めて社会が変容し、効率が良く合理的な社会になるにつれてひととの繋がりが希薄になってきた近代。有機農業を起点に、山と海との繋がり、ひとと地域の繋がり、ひととひととの繋がりを有機的に繋ぎなおし、過去・現代・未来を俯瞰し、地球を俯瞰しながら、古く新しい地域づくりが「無茶々園」で始まっています。
「無茶々園(むちゃちゃえん)」で育つ柑橘たち
無茶々園が目指すのは、健康な作物を育て地域の環境を守る農業です。
だから土づくりを基本とした有機農業を実践し、除草剤や化学肥料は使いません。
また「できるだけ農薬に頼らないこと」を基本方針としていますが、その年の気候や圃場の状態によっては頼らざるを得ない年もあります。
病害で樹木が弱れば、収穫は維持できません。
収穫する果実がなくなれば、経済的に立ちゆきません。
収穫が維持できなければ、農園の経営や人々の暮らしが危うくなります。
例えば、カメムシの大量発生。ヒノキの人工林を主な住みかとするカメムシは、新生虫の発生数によって住処を移します。食べるものがなくなるから、食を求めて移動する。そんなシンプルな生き物の欲求も、ミカン農家はたまりません。成熟の進んだ果皮の薄い温州みかんを皮きりに、内側の果汁を吸い取ってしまうカメムシの被害で、温州みかんの収穫の半分がダメになった年もあるといいます。目指すは農薬ゼロ。それでもやむをえない時には、有機認証で認められている資材を中心に無茶々園が定めた基準に沿って、状況を見ながら使用しています。
※主に外皮の見た目に影響する病害虫への防除は控えておられます。
温州みかん
無茶々園の看板娘が、温州みかん。
薄い皮と酸味と甘みのバランスの良さが特徴の、日本人には一番なじみが深い柑橘です。
傾斜地や段々畑とさんさんと降り注ぐ太陽を好む温州みかんは、無茶々園のある明浜にはまさに適地適作です。熟すのが最も早い極早生(ごくわせ)から晩生(おくて)まで、10月頃から12月末頃までの期間、意外と長い期間青果が楽しめます。
ポンカン
無茶々園の準主役が、ポンカンです。
温州みかんに良く似た外見で、香りが強く、コクのある濃い甘さが特徴です。¥ポンカンの原産地はインドで、明治時代に台湾から日本に伝わってきたと云われます。みかんのように手軽に食べることができ、みかんよりも甘みの強い柑橘です。愛媛県はポンカンの生産量も日本一で、明浜はポンカンの名産地として知られています。
甘夏
夏ミカンよりは酸味が少なく、食べやすい夏みかんの枝代わりです。
夏みかんと比べると小ぶりで、甘味が強いのが特徴です。また外皮はやや厚く、包丁などで切れ目を入れて剥く必要があります。もともと文旦(ぶんたん)の系統なので、独特の苦みや酸味の爽やかさも感じられます。
枝代わりとは、ある枝だけが他の部分と違う性質になったもののこと。本来なら赤い花をつけるはずの樹なのに、一枝だけが白い花をつけるような状態のことです。
不知火
清見オレンジとポンカンをかけあわせた品種が不知火(しらぬい)です。
外皮は厚いけれど果肉はやわらかく、甘味が強いのが特徴です。果梗部(ヘタ)が突き出やすく不揃いになりやすいうえ果皮は見た目が粗いなど、見た目は不細工なのですが、糖度が間違いなくのってくる力強い品種です。
ジューシーフルーツ(河内晩柑)
柔らかな風味は和風グレープフルーツと呼ぶにぴったり。
果肉が持つやさしい甘み、さわやかな酸味、初夏の柑橘らしい味わいが楽しめます。
4月~6月と出荷時期の長い柑橘で、収穫時期を追うごとに風味が変わるのも特徴です。
文旦系の黄色い外観で苦みと香りがありますが、果汁たっぷりのジューシーな果肉が魅力です。
ひょうかん(弓削瓢柑)
個性的な縦に長いたまご型のかたちをした柑橘がひょう柑です。
文旦系の柑橘で、黄色い外皮や甘く爽やかな香りが特徴です。厚めの皮をむけば、ジューシーさもありながらも食べやすい、程良く締まった果肉が現れます。ほろ苦く爽やかな風味ですが、見た目よりも糖度が乗ってしっかり甘さも感じます。
伊予柑
愛媛での生産が盛んなことから、伊予の国にちなんで伊予柑と呼ばれるようになった日本原産の柑橘です。果汁たっぷりながら弾けるような果肉の食感が特徴で、特に香りが良く、似かよった品種がない孤高の柑橘です。甘みと酸味のバランスの良さが持ち味です。
橙(ダイダイ)
橙は名が代々につながることから、縁起ものとして正月の注連飾りや鏡餅に乗せられています。
苦みと酸味が強いため、皮や果汁などを加工用で使う香酸柑橘の一種で、欧州ではビターオレンジやサワーオレンジなどと呼ばれ、精油やマーマレード、スパイスなどに加工されています。明浜では「かぶす」と呼ばれ、その酸味の強さ・果汁の香りを生かして手作りポン酢の原料として使っています。
「yaetoco(ヤエトコ)」~無茶々園の柑橘から
明浜狩浜地区の秋祭りのかけ声「やー、えーとこー!(浜は良いところ)」を名前の由来に持つ「yaetoco」は、無茶々園で育った柑橘から取れる精油と蒸留水を原料にしたスキンケア製品です。
畑でできたものを、あますことなく
柑橘の収穫は、一年に一度です。外皮に傷がついたり、ごつごつしていたり、見た目が多少不細工でも、たっぷり太陽を浴びた無茶々園の柑橘たちは、その美味しさと価値を知る人たちの手に渡り笑顔を作り出しています。けれどそれでも、あまりに大きすぎたり、小さすぎたり、食用にするには味に影響があるなと判断された果実は、加工用にされます。加工用の果実から作られるのはマーマレードなどもありますが、主な用途は果汁を絞る搾汁です。搾汁すると果汁は使い切れても、使い切れないのが果皮。どうしても余ってしまう果皮をもっと活用できないかと考え、始まったのが精油(エッセンシャルオイル)の抽出です。
yaetocoの精油は、減圧水蒸気蒸留法で抽出されています。
減圧水蒸気蒸留法は、その名のとおり水蒸気を使って植物から香気成分を抽出する方法です。減圧することで低温で水蒸気化できるため、原料の本来の香りを損なうことなく、上品で繊細な植物本来の香りが活きたアロマオイルや芳香蒸留水が抽出されるという特徴があります。
yaetoco(ヤエトコ)にもまた、無茶々園の背骨がとおっています。
保存料、防腐剤などは使わず、ひとにも環境にも負荷のかかりにくいものづくり。
気持ちよく、嬉しく、使い続けたいと感じるものたち。
「コールドプロセス製法」でつくられる伊予柑しっとり石鹸や、ミツロウやパール、蜂蜜などで丁寧に手作りされるさっぱりなめらかな使用感の甘夏なめらかバーム。ハンドクリームやバスソルトにも、無茶々園の柑橘たちの爽やかで甘く、それでいてスッキリする香りが入っています。