人工放射能測定について
私たちの置かれた現実を踏まえた上で、「自分の子どもに安心して与えられるもの」を選ぶことが弊社における品質管理基準です。
2020年5月 「プレマ株式会社 食品放射能測定所」が立ち上がりました。
所長は、弊社代表 中川信男です。
2011年以来、プレマ株式会社は想いを共有する第三者の協力を得て、食品残留放射能測定を続けてきました。これは食品残留放射能測定が、今後の食品の品質管理基準のひとつとして、残留農薬検査や細菌検査と同じくらい必要になるだろうと考えたからです。また同時に、一消費者として知りたい真実は、自ら行動を起こして手にするものだと考えていたからでもあります。食品残留放射能測定自体が、多くのひとにとって全くの未知であった当時、弊社代表 中川は瞬時の判断で、今後、私たちにとって必須だと、空間放射線測定器と共に、放射能測定器「AT1320A」(ヨウ化ナトリウムシンチレーター)を購入しました。同測定器を設置した測定室では、客観性を保つため、弊社とは関わりのない第三者に食品残留放射能測定のみ専任で委託。非常時であった当時は、計測器が示す計測数値の客観性に加え、複数の第三者の計測器オペレーターを配して、より客観性を保った測定に徹しました。中川の陣頭指揮のもと、「多くのひと」のひとりに過ぎない弊社のスタッフも、学びを重ねながら進んできました。そして、震災から10年目に入る2020年。第三者に委ねてきた測定実務を、プレマ株式会社が「プレマ株式会社 食品放射能測定所」として引き継ぎます。名称や体制は変わっても、食品残留放射能測定に対する弊社の姿勢は同じです。所長である中川のもと、測定を弊社の食品選択指標として、またより一般的な品質管理基準として定着するよう、引き続き地道な食品測定を続けてまいります。
使⽤する放射能測定器「AT1320A」は、ヨウ化ナトリウムシンチレーターです。この機器は感度が高く、短時間で効率良く測定することができます。ゲルマニウム半導体検出器と比較すると分解能が低いため、天然放射性核種の影響をうけている場合には、核種同定に注意が必要であり、測定スタッフの慎重な判断が要求されます。プレマ株式会社 食品放射能測定所は30分測定を基本にしていますが、30分で⼗分な測定結果が得られない場合は、条件が許す限り時間を延長して測定します。また「AT1320A」という機器が持つ限界を踏まえたうえで、計測を重ねる中で沸き上がる疑問や課題に対しては、より多くの知識を持つ方々から助言を得、検証を重ねます。
判断基準は何ですか?
「⾷の安全性」を確保するために、品質管理は不可欠です。
残留農薬や細菌、化学添加物などと同じく、人工放射性物質もまた⼈体に害をなす可能性をもつものですから、⾷品中の人工放射性物質の測定もまた、品質管理の⼀環であると私どもは考えます。
「ゼロベクレル」を目指そう!
政府によって定められている基準値ではなく、また多くのメーカーが定めた基準値でもなく、自分たちの目で確認し、納得できる商品だけをご紹介したいという思いもあって定めた目標でしたが、測定を続ける中で「ゼロ」の示す意味を深く考えざるを得ませんでした。2011年から測定を続けてきた今、「ゼロベクレル」を掲げること⾃体、私どもが目指す「誠実さ」とは相反すると考えています。シンチレーション式検出器であってもゲルマニウム半導体検出器であっても、「完全な無」を意味する「ゼロ」を求めることは⾮常に困難だからです。⼤きくは2つの理由があります。
第⼀に検体の比重(密度)による影響、そして第⼆に環境による影響です。
検体の⽐重(密度)による影響
放射能測定は、検体の⽐重(重量⽐)や密度に⼤きく影響を受けます。シンチレーション式検出器であってもゲルマニウム半導体検出器であっても、差こそあれ条件は同じです。
穀物、小麦粉、油、お醤油、ごま・・・・測定する検体は様々です。
比重の大きいものは比較的測定しやすく、検出下限値も下がりやすいです。対して菜種やごま、亜麻仁など種や実を搾って得る食用油や煎りごまなど、比重が小さいものは、検出下限値が下がりにくく、納得できる結果がでるまでに時には24時間近くかかります。密度に関しても同様です。そのまま測定したのでは、密度が低くなるお茶やしいたけ、野菜などの固形物は、すべて粉砕したり細かく刻んだりしてから測定すると、密度が高くなり検出下限値がさがりやすくなります。2011年からの数年間、お客様から「○ベクレル以下の商品を捜しています」というお声を沢⼭頂きましたので、可能な限り測定の精度を上げよう尽力しました。フードプロセッサーで検体を粉砕し試験管に充填たうえで、静電気の影響がでないようにと数日放置し、かつ時間をかけて値が下がり切るまで測定を続けてきましたが、検出下限値が「ゼロ」になることはありませんでした。測定所では、検出下限値をゼロに出来ない限りは、測定の結果においても「ゼロベクレル」とは云いません。
環境による影響
地球上には「環境放射線」が存在します、と云われます。
「環境放射線」と聞くと、往々にして宇宙から降りそそぐ「宇宙線」や地上の鉱物などが発する放射線が連想されがちですが、実際には「⼈⼯放射線」と呼ばれる「人為的に発生した」放射線も多く含まれています。1955年に発足したUNSCEAR(United Nations Scientific Committee on the Effects of Atomic Radiation/原⼦放射線の影響に関する国連科学委員会)は、「⼈⼯放射線」による地球規模での環境汚染の状況を観測・測定し続けることを⽬的のひとつとしていました。⽇本では1963年から「環境放射能と環境放射線」による影響を調査しはじめ、食品によっては、また都道府県によっては、途中で空白があるものの、近年までの調査データを公開しています(※1)。
⼈⼯放射線の⼤部分は、1945年から約50年間にわたって実施された核実験に由来するといわれます。中でも1945年から1963年のPTBT(Partial Test Ban Treaty/部分的核実験禁⽌条約)が締結されるまでの間に実施された500回に及ぶ⼤気圏内核実験による影響は⾮常に⼤きく、世界各地でまだその残滓が計測されます。残念ですが日本もまた、その影響下にある国のひとつです。1986年4⽉のチェルノブイリ原子力発電所における事故の影響が残る地域も少なくありません。福島第一原子力発電所事故直後に、日本各地で広く実施されるようになった食品残留放射能検査において時折みられた、Cs-137が低量で検知されCs-134は検知されないというケースは、⼤気圏内核実験あるいはチェルノブイリ原子力発電所における事故の残滓であるとする意⾒が強いのもまた事実です。
⽬標はあくまでも、「ゼロベクレル」です
しかし下限値がゼロにならない限り、「ゼロベクレルは証明できず、お約束も出来ない」という現実が立ちはだかります。同時に、現在公開されている放射能測定結果の多くが、連動するソフトウェアによって統計的に処理された数値である以上、測定値と定量下限値だけを示した検査報告書だけでは、影響の有無を読み切れない場合も少なくはありません。
弊社が実施する測定では、「スペクトル」と呼ばれるグラフ状に示されるデータから、慎重にI-131やCs-137、Cs-134、K-40という核種の動きを読み取りながら測定します。動きが疑わしい場合には、時間を延⻑するなどしてスペクトル上で核種の存在を示す動きがないであろうと判断されるまで密に測定します。検出下限値や検出・不検出の判定は、その結果得られるものです。
私たちの最終判断基準は、検出限界値ではありません。
事実に基づき正直で有り続けることに基準を置き、親としてその食品を「自分の子どもと⼀緒に安心して食べられるか」どうかを常に考えています。