植物性のUMAMIを凝縮、上品な味わいの「萬福精進白だし」
野菜の旨味を生かしたら、植物素材100%になりました
美味しいを追求したら、砂糖は要りませんでした。
使いやすいを追求したら、動物素材は要りませんでした。
乾しいたけと真昆布を、じっくり浸水してから煮出してとっただし。
木桶で仕込んだ、足助仕込みしろたまり。
焼酎ともち米で、昔ながらに仕込んだ三河みりん。
海水から作った海の精。
大切なひとと食べる食事だから、だしから丁寧に。
家庭で家族に食べてもらうように、丁寧に、丁寧に。
料理の基本は「だし」。
だから、もっと美味しいを追求します。
一般的に、だしを「とる」といいます。
和食の料理人は往々にして、だしを「ひく」といいます。
「ひく」と「とる」は同義語ですが、「ひく」を使うときには少しだけ言外の意味合いが含まれるといいます。
「ひく」=素材のうまみを「引き出す」こと。
取り除くのではなく、引き出す。殺すのではなく、生かす。
諸説あるものの、素材ありきで調理する「和食」の世界の神髄が、まさにこの一言に集結されています。原料の旨味を最大限に引き出した「だし」は、建築でいうところの基礎工程と同じで、基本の基本、全てを支える土台です。旨味を決める昆布、削り節、乾しいたけ。好みや用途にあわせて素材を組み合わせ、味を引き出し、日本料理のだしが出来上がります。昆布のダシから発見されたグルタミン酸、かつお節のダシから発見されたイノシン酸、そして干しシイタケなどの煮出し汁に含まれるグアニル酸。これらは酸味(さんみ)・甘味(かんみ)・塩味(えんみ)・苦味(にがみ)に並ぶ、第五の味覚、「うま味」として知られるようになりました。そして塩味が足りない、甘みが足りないという表現では表現しようのない新しい味覚「UMAMI」が、世界中の料理人の注目の的となりました。
和食の料理人はよく、「だしは昆布が7割、かつおが3割」と云います。鹹味(かんみ)の効いた昆布の、どことなく甘みのあるとろりとしただしは、上品で控えめな味わいです。対してかつおなどの削り節でひいただしは、コクがあり力強く、香りも味わいも、悪目立ちしない程度に自己主張が強いですが、どことなく余韻に欠けます。上品な昆布のだしに、削りたてのかつおをふわっと加えた瞬間、それまで控えめでおとなしかった味と香りに一気に力強さが加わり、深みのある上品さに変化します。
昆布が上等であるほど、香りも味も上品なだしがひけるといいますが、どれほど上等な昆布を使っても、またどれほど技術を磨いても、恐らく昆布だけでは辿りつけないコク深さと力強さを補うのが、かつおなのです。わずか3割を加えるだけで、劇的な変化をもたらすその力強さは、動物性原料にしか含まれないイノシン酸のせいなのか、いずれにせよ、だしを扱う人々の多くが「かつお節を使わなければ、美味しいだしにはならない」と断言します。力強さに慣れ親しんだ舌には、昆布や乾しいたけのだしは、頼りなさがあるのかもしれません。
それでも、昆布や乾しいたけの控えめなうま味は、野菜との相性が良く、それぞれの野菜が持つ味を引き出し、生かしてくれます。特に化学合成農薬や化学肥料などを使わず、自然に委ねて育てられた野菜は、上品で柔らかな昆布や乾しいたけのだしでなければ引き出せない滋味深く個性豊かな風味を備えています。基本に沿わない和食のだしを。だしの黄金比は料理人ごとに異なりますが、それでも必ず加わるかつお。それを省いた白だしが出来ないかと考えたのは、まさに野菜の美味しさを最大限に引き出したいがためでした。
だしの使い分けは、適材適所。和食の世界では、だしを取るだけで30年かかると云われます。素材の個性を引き出せる昆布だしや乾しいたけだしをつくるのは、プロであっても難しいもの。白だしには欠かせないかつお節を省いて、下味のついた白だしをつくるには、原料やだしに造詣が深く、なおかつこの試みを面白いと感じてくれる方々が必要でした。
昆布のダシから発見されたグルタミン酸、干しシイタケなどの煮出し汁に含まれるグアニル酸。だしの開発に一言があり、これら日本料理の「二大旨み成分」を生かした白だしの開発に、興味を持ってくれそうな方。実は、心当たりがありました。
それは、精白した小麦を主体に食塩水を加えて醸造する淡い黄色の「白しょうゆ」の製造が盛んな愛知県・碧南で、小麦と塩水だけの昔ながらの調味料「足助仕込三河しろたまり」を販売する醸造元・日東醸造です。三河地方に伝わる小麦だけの調味料を復活させたいと、理想の水を求めて辿りついた愛知県中北部。紅葉の名所で知られる香嵐渓からさらに山奥の、四方を山に囲まれ谷沿いに広がる町、足助。過疎化が進み、廃校になった小学校の裏手には、そのまま汲んで飲めるのではないかという無色透明の流れがあり、そのせせらぎが耳を和ませます。足助の入り口で、眼下に広がる風景の美しさに衝撃を受けて以来、廃校になった小学校を借り受け、足助での仕込みが始まりました。冬季は雪に閉ざされ、秋は押し寄せる観光客に仕込み蔵に辿りつくのも一苦労というこの地での仕込みを決めた蜷川社長なら、「かつおを使わない」という無理難題にも、力を貸して下さるのではないかと考えていました。
「精進のだし、面白いねえ。やってみましょうか。」
上品な旨みの昆布だし。クセはあるけれど、まろやかな味わいのしいたけだし。
だしの根幹をなす昆布・乾しいたけ・かつおの三つのうち、二つの植物性原料を軸に、香りにおいても、旨みにおいても、味の深みにおいても、いつも主役となるかつおを欠いた、無謀ともいえる白だしの開発が始まりました。開発に際して、蜷川社長からのお願いはただひとつ。わずかでも「足助仕込三河しろたまり」を入れること。しろたまりは、使い方によってそれだけで十分に素材の味を引き出せる調味料だと知っている私たちに、NOはありませんでした。対して私たちの希望は、だしの素材は可能な限り、プレマシャンティを信じ、商品を預けて下さる方々から分けて頂くこと。そして甘みに精白糖はもちろん、粗糖や甜菜糖は使わないこと。この先、恐らく誰も思わなかったほどの長い長い道のりが待っていた「萬福精進白だし」誕生までの第一歩は、こうして踏み出されました。
精進白だしのご相談をしてから数か月後、サンプル第一号が手元に届きました。
昆布や乾しいたけが定番と思い込んでいた私たちの手元に届いたのは、なんと野菜のだし!それも単に植物素材を加えただけではない、独自の工夫を凝らした商品もバリエーションに加えられていました。濃縮されたままでも味の違いを感じましたが、希釈すると、同じ素材でも下処理次第でこれだけ味が変わるのかと感心したほどその味の違いがはっきりとします。
昆布や乾しいたけ、かつおなどの魚の節、いりこなどのだし原料の利点は、年間を通じて比較的安定して手に入ること、常温で保存できることです。フランス料理などで使われる野菜のだし(スープストック)であっても、にんじんや玉ねぎなど、年間通じて手に入りやすい素材を使っています。その場で調理するレストランであれば、だし原料が多少変わったとしても、最終的にはほとんど差異がない料理に仕上がるように微調整をしながら調理ができますが、「だし」として商品化するためには、原料の時点で「味の安定」が求められてしまいます。つまり、生野菜を使うにしても、乾燥野菜を使うにしても、年間をとおして安定して供給される原料が必要になるのです。
野菜だけで「だし」を取るのであれば、複数の野菜を加えるほどに味が複雑になり深みが出ます。しかし同時に、加える野菜が多くなればその分、「材料が手に入りにくい」という事態が起こりえます。季節や収量によって変動する原料野菜の価格の影響を受ける可能性もあります。初回のサンプルから導かれた方向は、生の野菜は使わず、日本伝統のだし素材である昆布としいたけに、乾燥野菜を1点加えることでした。
「餅は餅屋に」と云います。乾しいたけをだしに使うと決めたとき、真っ先にご相談したのは、ご縁の深い乾しいたけの専門家でした。福岡で乾しいたけの卸問屋を営む「武久」さんに、味わいを引き出し切るのに一番適した乾ししいたけを勧めて頂きました。乾燥野菜は、こちらもご縁の深い奈良の農業法人「王陰堂農園」さんに助言を求めました。
武久さんから預かった、乾しいたけ。
王陰堂さんから預かった、天日干の切干大根。
大切なお取引先から預かった貴重な商品を、だしの原料として再度託し、何度も試作が繰り返されました。昆布や切干大根の量を変えて、乾しいたけの種類や配合、量を変えて。粗糖を使いたくないからと、切干大根の甘みを追加してはみたものの、逆に臭みが増えたりもしました。しろたまりの個性に負けないようにと乾しいたけを増やすと、乾しいたけが強くなりすぎ、昆布の香りや味が覆い隠されてしまい、希釈すると乾しいたけ以外の風味が感じられなくなったこともありました。手元に届いたサンプルだけでも、十数回。恐らくその倍は、試作が繰り返されたのではないでしょうか。
だし原料は椎茸、昆布、切干大根。
調味料はしろたまり、食塩、本みりん。
わずかこれだけの原料で白だしを作るには、配合を調整し、だしの取り方を工夫するしか道がありません。甘味を加えるというわずかな逃げ道すら、甘味を本みりんに限ると塞いでしまったために、これという決め手がないまま夏を越え、時間が経過していきました。
そして2014年も終わりに近づいたある日、久々に手元に届いたサンプルは、驚き以外のなにものでもありませんでした。同封された配合では、今までとの違いは読み取れません。それなのに、濃縮された状態でも、希釈した後も、確実にだし素材の旨味を感じ取れ、香りも違うと感じます。いったい何が起きたのか? 仕事を忘れ、思わず「どうやったんですか?」と尋ねてしまったほどでした。
構想から一年以上。
何十回かの試作を重ね、ようやく植物性素材でとっただしをつかった「白だし」が誕生しました。萬福精進白だしには、乾しいたけの目利き「武久」が厳選した乾しいたけと、農業のプロ集団「王陰堂農園」で手干しされた切干大根、そしてそれらのだし原料から最大限に味を引き出す「職人集団」日東醸造の創意工夫が生きています。
「植物性素材だけでは、旨味のあるだしはひけないのか?」
その答えのひとつが、萬福精進白だしです。
茶わん蒸しやうどん、お吸い物のおだしにはもちろん、淡白な味の野菜や、蒸しパンなどにも使える萬福精進白だし。白菜やキャベツなどは、千切りして白だしを入れ、揉むだけで浅漬けに。甘味のある野菜を使った料理では、野菜の旨味が溶け出した煮汁をそのまま、ふくよかな味わいのだしに仕上げてしまいます。ちょっと細めの麺との相性が良く、そうめんや冷麦はもちろん、半田めんなどの細目のうどんやカッペリーニ、リングィーネにも。じゃがいもやアボガド、トマトにも不思議と合うおだしです。
煎り黒豆ごはん
- 煎り黒豆
- 50g
- 白米
- 2合
- 精進白だし
- 大さじ2
米を洗って水加減を少な目にして炊飯器にセットする。
精進白だし、煎り黒豆を加え、通常と同じように炊飯する。
炊き上がったら天地返しをし、塩味が薄ければ精進白だし大さじ1/2(分量外)を加える。
わかめと白ネギ、薄揚げの細うどん
- 白ネギ
- 1本
- わかめ
- 適量
- 舞茸
- 15g
- 油あげ
- 1/2枚
- 細うどん
- 50~80g(お好みで)
- 水
- 300㏄
- 精進白だし
- 30cc~
白ネギと油あげを細く切り、舞茸をほぐし、わかめは水戻ししておく。細うどんはゆがいておく。
鍋で舞茸を炒めて、しんなりしたら取り出す。同じ鍋に白ネギ、油あげを加えて弱火でしんなりするまで炒める。
舞茸を戻して、水を加えて沸騰させ、5~10分間ほど弱火で煮た後、精進白だしとわかめを加える。細うどんを入れた後、味をみて、塩分が足りないようであれば、精進白だし もしくは 淡口醤油で味をととのえ、器に盛り付ける。
2014年。年末の慌ただしい折に、最終の打ち合わせのためにご訪問した日東醸造さんで、嬉しいビックリに迎えられました。
なんと、手作りのラベルがついたケースにいっぱいの精進白だしのサンプルでした。
150mlのミニサイズの見た目が可愛く、カラープリンターで手作りされたプレマシャンティの桜ラベルが張り付けてありました。
「遠路を来て下さるのだから、せめてお土産を」と、開発者の毛受さんが手をかけて作ってくださった、本当に心のこもったお土産でした。
折角のサンプルだからと「ご紹介したいお取引先様にお送りします」との私の言葉に、「これは親しい方に渡してください」とのお返事。
そこでそのうち1本を、プレマシャンティ開始時からの影なるサポーター、コンサルティングチームの坂井に手渡しました。
いつもはっきりと、時には辛口に、時には大絶賛してくれる彼女の声は、「この商品を仲間に迎え入れるのか?」を判断する大切な尺度なのです。
サンプルを渡してから数日後。とても興味深い声が届きました。
車麩のステーキ
- 車麩
- 4枚
- 精進だし
- 適量
- しょうが
- 少量
- 葛粉
- 適量
水に精進だしとすりおろし生姜をを加えて車麩をもどす。
柔らかくなったら、軽く搾って葛粉をまぶす。
フライパンに油を入れ、表面を焼き付け精進だしをこのみの味に希釈して、まわしかけ水分をとばしてできあがり。
サンプルを預かって、さあどう使おうとわくわくしながらお正月を迎えました。
お正月のごちそうの後、体が求めてるのはおだやかな食事、ということで精進だしの出番がやってきました。
年始のお仕事はじめの日、帰宅が遅くなる前提で朝、晩ご飯の用意をしてから出かけました。
メニューは車麩のステーキ。
葛粉をまぶして焼き、精進だしで味付け。
楽しみにして帰ったのに、お皿は空っぽ
すでに片付けられていて、涙・・・。
聞けば5歳の息子が一人で食べちゃったんですって!
食わず嫌いの激しい息子、見た目が気に入らないとお麩は全般、ほとんど手をつけないのに、よっぽど空腹でひもじかったんでしょうか。
「おいしかったの?」と聞くと、してやったりの表情でニヤリ。
仕方ないので、翌日のお弁当で車麩のリベンジ。
椎茸の風味が濃すぎずにちょうど良い感じ。
子どもにも受けが良い訳ですね。
なぜ、日東醸造か? そう尋ねる方もあるかもしれません。
「足助仕込三河しろたまり」で知られる日東醸造は、実はだしには一家言ある職人集団です。こう云うと、蜷川社長は「それは違うよ、恐れ多いよ」と全力で、そして真剣に否定されるかもしれません。けれども西で、東で、そして世界で、料理人や職人たちの主張や工夫に耳を傾け、全社を挙げて商品づくりに活かしていくその姿は、まさに職人そのものです。
一度に何百リットルという大釜で作られ、半年先の味をも保証する商品。
数十リットルの鍋でだしをとり、その場で味わう料理。
この二つの間に横たわる溝は、越えがたく厳しいものです。家庭の台所で日々の料理をする中で、同じ味に仕上げる難しさを感じている方も少なくないでしょう。往々にして食品会社は、生産規模や食べるタイミングなどで生まれる風味の溝を、食品添加物やうま味調味料、香料をもって埋めようとします。化学のちょっとした力を借りることで、味のブレは抑えられ、量産のしやすい商品に仕上がります。長期にわたる保存が可能となれば、流通させやすくなります。原料費が抑えられれば、より使いやすい価格の商品をつくることができます。だから、安価な商品を求める声が多ければ、原材料費を低減し、均一な味の商品を求める声が多ければ、原料によるブレ、生産ロットによるブレを抑え、機械的に量産しやすい味に仕上げるしかありません。食品添加物や化学調味料、香料を使用した商品が増えるのは、ある意味仕方のない連鎖で、当然の結果です。
けれども、その溝を超える方法は、他にもあります。
原料を生かす技術を習得した職人が、創意工夫と自己研鑽をもって、比較的少量ずつ製造する方法です。時間も費用もかかるうえ、何より熟練の「職人」が必要です。現状に満足せず、探求を続ける根気のある人材が必要です。あまたある材料の中から「つくりたい味」を支える品を見極め、それをどう調理するのかを考える職人。その存在がなければ、半年先にも作りたてと遜色のない味はできません。
枕崎の一本釣本鰹、北海道の真昆布、地元愛知県産の乾しいたけ。
日東醸造には、一流と呼ばれる料亭と遜色のない品質の原料を選び抜く職人が存在します。
そして彼らは、天然の原料だけで、素材を十分に活かして商品をつくる技術も兼ね備えています。その職人たちが作り上げたのが、三河白だしです。蓋を開けると削りたてのようなかつおの芳醇な香りと、生きた旨味。日東醸造のだしが、日本でも有数のだし名人にお墨付きをもらったという事実は、公言されることのない機密ですが、彼らのつくる濃縮だしは動物臭さのない、薄めてもうま味が抜けない深い味わい。そしてそこで満足せずに、より味わい深いだしがとれないかと、常に新しい試みが繰り返されています。
原料を知る、そして更なる深みを目指す。
料理人には欠かせないそれらの資質を備えた職人集団が、日東醸造という会社の本質です。
萬福精進白だしを支える旨みのひとつは、「グアニル酸」。
日本料理の「三大旨み成分」に数えられるこの成分は、乾ししたけに含まれています。
植物性原料だけの白だしを考えるにあたって、一番最初にご相談したのが福岡の武久さんでした。
九州産の乾しいたけを専門に取り扱って、80年以上の歴史を持つ株式会社武久さん。
厳しいチェックを受けたものしか立ち会えない、熊本や大分の入札所でずらっと並ぶ何百という原木乾しいたけの中から、品質の高い商品をプロの目で選び抜き、自社工場で手選別した後、お客様にお届けしています。しいたけのプロが厳しい目で選んだ乾しいたけも、移動途中に欠けたもの、割れたものが出てきます。また同じ原木でも、太陽のあたりが弱く育ち切らなかったものも含まれています。それらは、選別工程で規格外と選別され、安価に売り払われてしまいます。
欠けたり割れたりした商品も、味・質ともに変わりません。
「どんこ」と呼ばれる高級な乾しいたけと変わらない、旨味の濃いおだしがとれます。
ただ、お客様が望む「形」ではないだけなのです。
お客様が一番喜ぶ「どんこ」の裏側には、選別されて落ちていく「かげ小」・「並小」という商品があります。それぞれどのような商品かは、武久の看板娘・景子さんの言葉を引用します。
- かげ小
- 篩をした際にでる、椎茸のどちらかというと、われや、破片、粉等になります。
よって値段は安いですが異物の心配もあります。お使い頂く際には必ずこして頂くこともそうですが、破片も多く味の出方は落ちるかもしれません。
- 並小
- 選別をする際にでるどんこや中葉のわれているものです。選別をするため異物等も出にくいものです。
提供いただいた原料で試作を繰り返し、萬福白だしに最適な配合と商品を決定しました。
だし原料は、衛生管理の面からも、最後には破棄されてしまいます。だからこそ、限界まで旨味を引き出し、その役目を全うさせる技術を持った職人の力が生きます。
「プロにしかできないことをやろう」という気概に満ちた職人の腕にかかると、規格外の乾しいたけも見事に化けます。代々乾しいたけと関わってきた武久さんの言葉を借りると、「食べるための乾しいたけがどんこで、だしのうま味は遜色ない」そうですが、それでも思い込みの仕業か、どうしてもどんこのだしがより味わいが深いように感じていました。ところが職人の手によってひかれただしは、味の深さとコク、しいたけ独特の旨味が存分に引き出され、味比べをしてもまったく違いが判らないほどです。この事実を前にして、「見た目」を重視する規格には、味は含まれていないのだと痛感しました。
萬福精進白だしは、武久さんが厳しい目で選んだ原木乾ししたけの旨味が存分に出ています。
白だしとして役目を果たすような旨みやコクを引き出すために、選んだのが切干大根です。
切干大根は、野菜を干すとこんなに旨味が凝縮するのかと驚くほどの、甘みと味わい深さです。中でも天日に干された切干大根は、甘みも旨味もぐっと凝縮された深い味わいです。
切干大根を保管していると、賞味期限前でも茶色く変色してしまうことがあります。
一般に「褐変(かっぺん)」と呼ばれるこの現象の原因は、大根に含まれる糖分にあります。砂糖を焦がすとカラメルソースができるように、切干大根が持つ糖分が太陽や蛍光灯の光で茶色く「焦げた」ような色合いになるのです。
つまり切干大根は、人間の舌が「甘い」と感じる糖分を含んでいるということ。
この糖分と独特の味を「白だし」の旨味に生かせないかと考えました。
ご相談を持ち掛けた先は、奈良県吉野で梅や柿の生産者とともに歩む「農悠舎王隠堂」さん。パンドラファームという名前でご存知の方も多いかもしれません。
「そんなに量はないですけれど・・・」
そう云いながら教えていただいたのが、端材と呼ばれる「製品にならない」切干や割干大根です。
農悠舎王隠堂がつくる切干大根は、寒風吹きすさぶ中、山の急斜面を行き来し手干しされています。風が駆け上る近畿の山間部では、条件の良い時には、半日で乾し上がるといいます。出来る限り化学合成された農業資材を使わず育てられ、千切りや輪切りにして乾される大根は、思わず「美味しい!」と声が漏れてしまう滋味深さと味の濃さ。しかしこの大根も、商品にする過程で短いものや色の白くないものは選別され、お客様の手元に届くことはありません。
年間何トンという単位で切干大根や割干大根を製造する中、なるべく「規格外」が出ないようカットを工夫し、干し方を工夫しても、どうにもならないものがあります。大根自体も一本一本形状が違うのですから、当然のことです。お客様が求める「安心・安全」な食品と、「形状の揃った見た目の美しさ」は、天産物を加工する以上、常に両立するものではありません。お客様の満足を一番に考えた時に生まれる「規格外」を加工し、保存する術であるはずの「乾物づくり」の場から生まれる更なる「規格外」。それが、切干の端材です。
丁寧に千切りや輪切りにして干し、集めて手選別した際に、何の因果か色や形が「規格」に合わなかっただけの選外品は、旨みも糖度もだしには十分。端材であっても同じ大根です。その年の気候によって、また乾し上げる時の天候にも左右される天産物ではありますが、それをどう使い、安定した味に仕上げるのかが、職人の腕の見せ所でもあります。
萬福精進白だしの基礎を支える縁の下の力持ちは、農悠舎王隠堂の切干大根。
他の切干大根では決して出せない深いコクを備えた、「これでなくては!」とため息が漏れる逸品です。
武久から預かった、乾しいたけ。
農悠舎王隠堂から預かった、切干大根。
これらのだし原料はどれも、「流通には乗りにくい」商品です。そして、日東醸造が選んだ真昆布もまた、「流通には乗りにくい」商品です。
消費者の手元に届く商品は、多くが流通や生産者が自主的に定めた規格によって、選別されているという事実をご存知でしょうか。規格とは、単純にいうと基準です。例えば、JAS(ジャス)やJIS(ジス)。これは国家によって様々な産業製品において定められた等級やサイズ、設計方法、記号や単位など、商品から計測単位に至るまで、消費や生産に便利なように多岐にわたり定められた「標準」です。規格を定めるのは、国家だけではありません。また規格が適用されるのは、工業製品だけではありません。流通業者や小売業者が、より販売しやすいように、よりお客様が喜ぶようにと、食品に対して定める規格も存在します。
乾しいたけであれば、カサの厚さ・大きさや、割れ・欠けの有無。
切干大根であれば、色目や長さ。
農産物が天候や日照によって左右されるものである以上、サイズや色、形は一つずつ異なるものです。生産地から移動させる間に、欠けや割れも生じるでしょう。けれども、欠けた乾しいたけはどんことしては袋詰めされず、長さが足りない切干大根は規格外として除外されます。食品の本道である「味」以外の部分で選別され、「商品」になり切れなかった商品たちは、永遠に一般消費者の手元には届きません。生産者は出来る限り「規格外」をつくらないよう努力しますが、それでも出来てしまうのが規格外です。味という面では、遜色のない「規格外」の乾ししいたけと、「規格外」の切干大根。永遠に一般流通しないこれらが一体年間どれだけ生まれるものなのか、武久さんと王陰堂農園さんと打ち合わせを重ねた末に、年間をとおして選別される規格外のみをだしの原料に使い、萬福精進白だしを製造すると決めました。
この「規格」は、別の観点から「足助仕込三河しろたまり」にも当てはまります。三河で昔から使われていた琥珀色の発酵調味料が白しょうゆ。三河では、大豆を含まない小麦だけの発酵調味料も、伝統的に白しょうゆと呼ばれていたといいますが、時代を経るごとに法律や法令が変わり、大豆を含まない白しょうゆは「しょうゆ」と呼べなくなりました。これが「足助仕込三河しろたまり」が、しろたまりと名付けられた所以です。
味の濃い野菜の混ざり気のない味を楽しめる調味料を作りたいと始まった、植物性素材のみを使った白だしの構想でしたが、原料を探し求めているうちに、私たちの食生活を支える「商品」たちが、どう成り立っているのかが少しずつ見えてきました。見よう見まねで大根を干し、切干大根をつくると必ず、長い短いが出てきます。しいたけを育てると、カサの開きがばらばらになり、色目や形の悪いものが出来てきます。けれども自分で育てると、どれにも愛着がわき簡単には「ダメ」と云えなくなります。
自然の食材を使い、台所でつくるように作り上げていく食品たちは、大量生産に向かない場合も多々あり、機械的な量産が難しい分、人の手が多く入り、製造費用が嵩みます。原料を選べばその分、土台となる費用も嵩みます。また原料や生産ロットによる味のブレも、機械生産される商品よりは幅が広くなります。このようなブレやコストを抑えて、手に取りやすい商品をつくるのも、作り手の努力です。しかし努力にも、限界があります。
だしを濃縮する過程で、おりが出ることもあります。
瓶詰めされた商品が保管される間に、旨味成分が結晶することもあります。
工業製品ではデメリットと捉えられがちなこれらの性質は、食という観点に立ち返ると、意味合いも異なってきます。「家庭の台所で、自分の手で、同じものをつくればどうなるか」という視点が加わると、考え方も更に変わります。クラフトマンシップに満ちた商品は、多くの理解者に支えられて、はじめて商品として販売できます。そして価格に見合うだけの価値を持った商品であると認められて、初めて市場に流通し始めます。食品は工業化されるものではないという声を多々耳にしますが、まずは消費者も生産者も、お互いが、天然の素材を使い「工業化されない」食品が、どのようにつくられ、どのような性質を持つのかを良く知っておく必要があるのかもしれません。
プレマシャンティ® アイコンについて
植物性原料100%アイコン
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植物性素材のみを原材料として作りました。
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原料として含まれるもの
※アレルゲン表示ではありません。
●使用している原材料をカラーで示し、使用していない原材料はグレーで示しています。
- 含まれる
- 含まれていない
※原材料として不使用でも、同製造工場・設備、キャリーオーバーで含まれている可能性があります。
食物アレルギーをお持ちのお客様へ
プレマシャンティで使用しているアイコンは、あくまでも原料として使用していないことを意味するものです。 アレルギー対応を示すものではなく、またアレルゲンの除去を保証するものではないことをご理解ください。 ご購入の際には、お客様ご自身で慎重に判断頂きますようお願いします。