ネオベジタリアン料理研究家ericoさん~高野豆腐の料理教室~
プレマシャンティの試みを支えてくださるパートナー様をご紹介
ericoさんプロフィール
ベジタリアン料理家。マクロビオティックの望診法指導士プロフェッショナル(山村慎一郎 名古屋山村塾)。『erico のベジタリアンお料理教室』主宰。1970年生まれ。美大卒業後、タイルモザイクアーチストとして活動。京都にて2件のカフェ立ち上げ&マネージメントを経て、現在に至る。重度のアトピーだった息子と暮らす経験と、「完全菜食」の実践経験を生かし、時代に沿った「プラントペース(穀菜食)」の料理&スイーツを伝えている。料理教室は毎月200名以上が参加する人気クラスで、食育講座や美容講座も企画。男性や子どもに好まれる“輪郭のはっきりしたレシピ”を得意とする。ヨガインストラクターの夫と高校生の息子と2014年1月に誕生した第2子との4人暮らし。
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「勝手に、高野豆腐普及委員会」発足!
最後に高野豆腐を召し上がったのは、いつでしょうか?
小学校の給食?去年のお正月?それとも昨日?食品を乾燥し、保存する文化は世界中にあります。日本もまた、例に違わず多くの乾燥食品、いわゆる「乾物」が沢山あります。お寿司に欠かせないかんぴょう、だしには必須の乾しいたけ、夏の和菓子には定番の寒天、ミネラルたっぷりのひじき、抜群のたんぱく源である高野豆腐(凍み豆腐)。我々の祖先は、収穫物を長く保存しておくために乾燥という手法を用いたのかもしれませんが、れは結果、生では出せない旨味や良さを食品に与える手段でもありました。日々の食生活をとおして、親から子へ引き継がれてきた「食べ方」や「使い方」はしかし、時代の流れが加速し、核家族化が進むと、いつの間にか消えてき、今ではただ、戻す手間の面倒さや調理方法の不明瞭さだけが目立ち、「乾物」そのものが敬遠される傾向にあります。
2015年3月18日、食と健康フォーラムが長野県で開催されました。
ここ数年の間に徐々に注目を集めつつある高野豆腐ですが、開催場所が長野県ということもあってか、当フォーラムでもその「優等生」さに注目が集まりました。信州と呼ばれる地域は、寒天やキノコなどの食物繊維を多く含む食品や、みそなどの発酵食品の産地として良く知られています。中でも高野豆腐は全国一の生産量を誇り、恐らく一般的な量販店の店頭に並ぶ高野豆腐のほとんどを長野県で生産しているといっても過言ではありません。我々も馴染みのある「四角い」高野豆腐だけでなく、粉末にした粉豆腐(雪豆腐)などが、煮物や汁物などの惣菜として食卓に並んでいるといいます。基調講演をされた医師の鎌田實さんによると、高野豆腐は「若々しさを保つ食べ物の代表選手(※1)」なのだそうで、「骨を強くするカルシウム、腸で作用して免疫を高める食物繊維、貧血を防ぐ鉄分、味覚に不可欠な亜鉛といった栄養素が豊富に含まれている(※2)」だけでなく、高脂血症を防ぐ働きをもつとされるレジストタンパクも高野豆腐には多く含まれています。(※1&2 引用:信濃毎日新聞2015年4月10日)またオメガ3脂肪酸や女性には見逃せない「イソフラボン」なども豊富に含まれています。
高野豆腐は、こんなにすごい?!
- タンパク質が豊富
- 100g中に50.2gのタンパク質を含みます(豆腐類のタンパク消化吸収率は、一説によると約95%といわれます)。
- リノール酸が豊富
- 血液中のコレステロール値を下げる働きをすると云われる「リノール酸」を多く含みます。リノール酸は人間の体内では合成できないとされる不飽和脂肪酸のひとつで、中でもオメガ3脂肪酸は、血管や脳、神経の老化や血栓、炎症を抑えると云われます。
- イソフラボンが豊富
- 骨のカルシウムの過剰な流出を防ぎ、補給したカルシウムを逃さないといわれるイソフラボン。女性にとっても魅力的な成分をたっぷり含んだ大豆をぎゅっと凝縮してつくる高野豆腐にも、もちろんイソフラボンが含まれています。
- カルシウムが豊富
- 100g中660mgのカルシウムを含んでいます。これは成人一人当たりが一日に必要とする量 600~700mgに匹敵します。
- ダイオキシン排出効果
- 凍らせて解凍する製造工程の中で変質したタンパク質(レジストタンパク)が主となり、摂取したダイオキシンを体外へ排出する力と、肝臓への蓄積を抑制する力があると研究報告されています。
研究によって様々な力を知られるようになった高野豆腐ですが、やはりそれでも「面倒」で「食べ方がわからない」ことには変わりがありません。そのせいで、消費量も年々下降の一途を辿っている・・・とも聞いています。それもそのはず。我々の食生活の主流は「ハンバーガー」や「コロッケ」、「カレー」などの、明らかに伝統的な日本の食事からかけ離れたメニューにとって代られています。野菜と一緒にだしで煮たり、おからのように粉豆腐を炒り煮にしたり・・・「毎日食べると健康や美容に良い」と云われても、祖母の代までが好んで食べたであろう地味なお料理ばかりでは、食が進まないかもしれません。また、調理方法のバリエーションが少なくても食べ飽きます。週に一度は食卓に高野豆腐が並ぶのを理想とするなら、忍耐で短期間食べるのではなく、飽きずに美味しく頂ける「現代の食生活に合った」調理方法も知りたいもの。こんな優れた、そして現代に沿った食材を使わない手はないと、伝統食材高野豆腐を、いかにお洒落に食卓に供するかをご紹介する「勝手に、高野豆腐普及委員会」を発足しました。第一弾は、「高野豆腐が大好き!」「食べないなんてありえない!!」と公言されるネオベジタリアン料理研究家のericoさんのお料理教室へ突入です!
高野豆腐、七変化!ericoさんの場合
初夏というには、気温が高すぎる日が続いた5月中旬。ericoさんから「高野豆腐の料理教室をやるので、ご招待します」とお声掛けを頂き、お邪魔した先は京都市内御池通沿いにあるゴマクロサロン。ゴマクロサロンは弊社でも取引のある山田製油さん経営の、スタジオを併設した落ち着いたカフェです。らせん階段をのぼり2階に上がると、机を並べて30人ほどが一緒に食事が出来る大きさの細長い部屋の正面に、クッキングスタジオと呼んでも遜色のない大きなアイランドキッチンが設置されています。
開始時間が近づくにつれて続々と集まる今日の「生徒さん」は、20人強。既にお馴染みの方も多いらしく、「ericoさんの教室に来てから、高野豆腐が大好きになったんです。だから今日は絶対楽しいよ!」と教えて下さる方も。続々と集まる方々は、馴染みの方も初めての方も、生徒さんというよりも、ericoさんの「お友達」が沢山集まり、一緒に何か楽しいことをしようか?という雰囲気です。
「高野豆腐って、めっちゃすごいんよ。たんぱく質もいっぱいだし、デトックスもできるし。一週間に最低でも2回は食べたらいい食材だから、使いやすくて、美味しくて、簡単になったらいいやん?」 本当は高野豆腐が大嫌いだという彼女のご子息も、外食する機会が増えた今では「嫌い」だと云いながらも、食卓に高野豆腐があると黙って食べているのだそう。彼女の高野豆腐トークとお料理に魅せられて、高野豆腐ファンになった!という方も多く、「高野豆腐の教室をやります!」とお知らせすれば、あっという間に満席になってしまうほどの人気のクラスだと聞いていましたが、集まってくる生徒さんたちの明るい雰囲気と、クラスが始まる前からノンストップのericoさんトークで、スタジオ内の華やかさが増します。初のレシピ集「Choice Vegetarian Cooking」で、多国籍でカラフルなお料理を紹介されたericoさんの手で、地味で素朴、どちらかというと敬遠されがちな高野豆腐がどう変身するのか、期待が高まります。
手渡されたレシピを拝見すると…
●高野豆腐のとろりんスープ
●高野豆腐とリンゴのピラフ
●基本の高野豆腐ミンチを使った
ラオス風そぼろサラダとミンチカツ
せっかく京都に暮らすのだからと、京の白味噌をたっぷり使ったスープに始まり、牛肉を食べない娘のためにお母様が作られた手料理をベースにした「リンゴのピラフ」、タイやベトナムなどのエスニックのエッセンスを取り入れたサラダ・・・と、無国籍なお料理に圧倒されます。材料も、定番の四角い高野豆腐だけでなく、ピラフにはHappy beans つぶつぶを、ミンチカツの衣にはパウダーをと、レシピを拝見するだけでもワクワクします。
「高野豆腐はだしで甘辛く煮るか、卵でとじるくらいしかないやん? それだと飽きるし、つまらないし。」
京料理には高野豆腐は欠かせません。だしの旨みを吸い込んで、主張しすぎず、それでいて十分にボリュームのある一品に仕上がる、さすがに歴史のある保存食材だとは思います。けれどもericoさんが云うように、面白みがないのも事実です。湯戻しするのもすでに面倒なのに、用途が広がらなければ使わなくなっても当たり前。乾物と呼ばれる食材の多くが、面倒な上に使い方がわからない、あるいは、使い方が古いせいで、消費が落ちているようにも思います。けれど、乾物なんて簡単、こんな便利な食材はないと彼女は云います。
「自然食品店に行くと、薄い高野豆腐があるでしょう?あれだとふっくらしないから何か違うんだけど、これはスーパーに売ってるのみたいにぶ厚く戻るんですよ。プレマシャンティの高野豆腐はふわふわしてないけど、ふわふわさせたかったら戻すお湯に重曹を入れたらいいだけです。戻すのもね、あっという間に戻ります。お湯を入れたら、本当に瞬間に戻るよ。」
軽快に話を続けながら、鍋に湯を沸かし、大きなステンレスボールにはった湯に重曹を入れて、次々と高野豆腐を入れ・・・と、手際よく進みます。最初に入れた高野豆腐を引き上げて、「ほらね、これさっき入れたばかりの。もうこんなに戻っているでしょう?」と、生徒さんに見て頂くことも忘れません。デモンストレーション形式でのお料理教室だから、今まさに全員分のお料理が出来上がっていくのですが・・・6個入りの高野豆腐の袋が、次々と開封され、次々と湯戻しされていくのには驚きです。
「高野豆腐のパッケージにね、浸し過ぎたら溶けますって書いてあるやん?あれ本当かと思って試してみたことがあるんです。そしたらね、本当に溶けた!」
重曹水に長く浸しすぎて、全部溶けて鍋底に沈殿していた経験や、その鍋ごとゆっくりと火をかけたら、底に湯葉のようなものが出来たという話。重曹液でちょっと長めに湯戻しし、角が溶けてトロンとなった高野豆腐の方が、口当たりも良くお出汁がしみて美味しいのだという話。そして、その縁がとろんと溶けた高野豆腐が、今日のメニューにある「高野豆腐のとろりんスープ」に繋がったという話。そういえば・・・以前、『高野豆腐は角がとがっているけれど、私の高野豆腐は角が丸くて楕円なんですよ』とお聞きしたような。「基本の高野豆腐ミンチ」では、高野豆腐を粉々に砕いて。「高野豆腐とリンゴのピラフ」では、5mm角のキューブに刻み。ミンチカツには、粉に挽いた高野豆腐を衣にし。ericoさんの高野豆腐は、変幻自在に姿を変えます。経験と好奇心、そしてひらめきが全て融合すると、枠組みは簡単に越えられるのだと、軽快なおしゃべりとお料理をとおして教えて頂いたと感じるのは気のせいでしょうか。
1回のクラスは、約2時間半。
開始前からおしゃべりが絶えず、笑い声が絶えず、気が付いたらお料理が出来上がって、盛り付けられて、ボリュームたっぷり、お皿一杯のお食事が目の前に並んでいたという感じのあっという間の午後でした。長くカフェでお料理していたという彼女の手際は、「さすが」の一言です。そして概して「冬景色」になりがちな地味な高野のお料理が、期待どおりのカラフルさに仕上がっていました。
生徒さんと一緒にお料理を囲み、「高野豆腐を食べない人が増えてきた」、「消費量がどんどん減っている」という話をしていると、「もったいない!」、「うちでは一日おきに出すよ」との声が。クラスが始まる前の雑談中に、人生の目的は「美肌」と断言された女性は、「私なんて、高野豆腐のお蔭でめっちゃすっきりしたよ」と一言。教室の開催までに後2週間ほどというタイミングで募集を開始した今回の高野豆腐の会は、しかし「高野豆腐の教室は人気だから、あっという間に満席になる」との彼女の言葉どおりに大盛況でした。高野豆腐は、日本に初めて暮らす方々にとっても謎の物体です。欧米に持ち出すと、何度も「白くて四角い、これは何?どうするものなの」と質問されるのですが、留学生や駐在者も少なくない京都でもやはり同じようで、「この高野豆腐をどうやって使うのか」とericoさんの教室に来られる方もあると聞きます。日本ではまだまだ「ベジタリアン」文化は定着しきっていませんが、「精進料理」という文化の根付く国には、多種多様な、そして長く保存が出来るベジタリアン食材が身近にあります。
長く残ってきた食材には、それなりの理由があるのだと思います。
そして、高野豆腐もそのひとつです。
ご招待を頂いたお礼にと、手土産に「萬福 精進白だし」をお持ちしました。
「今日のお土産に…」と差し出した瞬間、「この白だし、すごいよ。何にでも使える。私は出汁の取り方とかお伝えしないといけないんだけど、これがあったら出汁取らなくていいもん。味はまろやかだけれど、白しょうゆの代わりに使えるし、これとみりんと合わせたら和え物もできるし、炒め物にも使えるし…」と大絶賛。そう話しながら、クラスの準備を進める彼女の手には、精進白だしの瓶がありました。
「今日のレシピにも使ってます。本当にだしを取らなくてこれだけでいいから、本当に便利!家にひと箱あるよ。」
朗らかで軽快なericoさんのお褒めの言葉に、きっと「萬福精進白だし」も鼻高々のはず。高野豆腐のお教室にご招待頂いたのに、こんなに好感触を頂けている「精進白だし」に私も嬉しくなりました。