プレマシャンティ 作品情報
プレマシャンティ自然食品を詳しくご紹介
サルバチアシード(ダークチアシード・ホワイトチアシード)
サルバチアは何がミラクル?
内容量 | 100g | ||
カロリー | 383(1609KJ) | ||
総脂肪 | 34.5g | ||
飽和脂肪酸 | 3.38g | ||
トランス脂肪酸 | 0.0g | ||
オメガ6不飽和脂肪酸 | 6.35g | ||
オメガ3(ALA)不飽和脂肪酸 | 22.87g | ||
一価不飽和脂肪 | 1.9g | ||
コレステロール | 0mg | ||
ナトリウム | 18mg | ||
カリウム | 660mg | ||
総炭水化物 | 37.5g | ||
水溶性繊維 | 3.5g | ||
不溶性繊維 | 31.0g | ||
ビタミンA13 | IU | ビタミンC | 5.4mg |
カルシウム | 770mg | 鉄分 | 7.9mg |
リボフラビン | 0.20mg | チアミン | 0.74mg |
ビタミンB6 | 0.10mg | ナイアチン | 7.15mg |
ビタミンB12 | 0.00mg | 葉酸 | 80mcg |
パントテン酸 | 0.6mg | ビオチン | 1.44mg |
マグネシウム | 380mg | リン | 780mg |
銅 | 1.7mg | 亜鉛 | 4.4mg |
モリブデン | 0.20mg | クロム | 0.5mg |
セレン | 0.1mg | ニッケル | 0.25mg |
身体に必要な必須脂肪酸であるオメガ3(アルファリノレン酸)を多量に含むと云われ、ブームになったフラックスシード。欧米ではオイルはもちろん、種子のままでもシリアルやエナジーバー、パン、クラッカーなど、様々なところで多用されています。
不飽和脂肪酸に属するオメガ3とオメガ6は、人間の体細胞が正しく機能するために不可欠であり、新陳代謝を調整するホルモンの形成に関わっていると云われます。オメガ6は市販の植物油にも含まれており、比較的摂取しやすいものです。オメガ3はアブラナ(キャノーラ)、ダイズ、エゴマ、ホウレンソウなどの緑黄色野菜にも含まれているといわれますが、もっとも多いのは「背の青い魚」だというのが通説です。一般的に理想とされるオメガ3とオメガ6の摂取バランスは1:1から1:4と云われますが、植物油を多用する現代人はどうしてもバランスが崩れがちです。特にベジタリアンで魚を口にしない人々にとっては、オメガ3を「いかに効率よく摂取するか」が課題になるといえるでしょう。
エゴマ、フラックスシードなど注目される種子は多くありましたが、ローフードのブームに乗って注目を集めたのがチアシードです。中でもサルバチアは、オメガ3脂肪酸を豊富に含むだけでなく、タンパク質や鉄分、葉酸、マグネシウムを豊富に含む中南米原産のミラクルフードです。サルバチアは香ばしい風味でフラックスシードのような独特なクセが少ないので、生でもそのまま食用できます。また、パンやクッキーなどの焼き菓子にも練り込んだり、スムージーに入れたりしても、食材の味を損ねません。そのまま食べても、ドリンクに入れても使える用途の広さは、慌ただしい毎日を過ごす方には最適です。
味にクセが少なく、用途が広く、簡単に食せ、持ち歩きも簡便。
フラックスシードのクセが苦手な方にもお勧めできる、新しいオメガ3の供給源です。
大豆まるごとミート
ヘキサン・フリー 何がすごい?!
畑のお肉 ソイミートには、脱脂大豆が使われています。この脱脂大豆はヘキサン(ノルマルヘキサン)を使用せず、国産大豆100%を原材料とした脱脂大豆であり、適度に油分が残った脱脂大豆です。
水に浸したタオルを両手で力を込めてぎゅっと絞った時と、洗濯機の脱水機能を使用したとき、どちらがより水分が少ないでしょうか。
水分を完全に絞り出すことは物理的にも不可能に近い作業です。これは植物油もおなじ。圧力だけで搾り出す『圧搾法』では、胡麻やなたね、大豆の油分を多量に搾り取ることができません。搾油率が低いと、必然的に原材料が沢山必要となりますし、効率が悪くなります。そこで考え出されたのが、油が油に溶け易いという性質を利用した、ヘキサン(ノルマルヘキサン)抽出です。タオルの例を当てはめるとそれぞれの抽出率は、圧搾法が手絞り、ヘキサン(ノルマルヘキサン)抽出が脱水機能に似ています。原材料をヘキサン(ノルマルヘキサン)に浸し油分を抽出した後、沸点の差を利用して植物油を分離します
ヘキサン(ノルマルヘキサン)の沸点約80度に対して、例えばごま油の沸点は約200℃以上。加熱すると沸点が低い油の方が先に揮発し、必然的にごま油が残ります。ヘキサン(ノルマルヘキサン)の沸点は、植物油よりも低く完全に揮発するため油には残存しないとされており、現在は家庭用植物油として一般的に販売されているものの多くが、有機溶剤である『ヘキサン(ノルマルヘキサン)』に原材料を浸け油分を溶かし込んだ後に、油分だけ分離するという抽出法で作られています。「圧搾」と書いてあっても、共に「抽出」と記載があればこのヘキサン(ノルマルヘキサン)を使用しているのが現実です。
丸大豆が使用される以外の大豆加工品にも、ヘキサン(ノルマルヘキサン)を使用し大豆から大豆油を取り出し、残りの脱脂大豆を原材料としている商品は少なくなく、実は国内で製造する醤油ですら対象外ではありません。
搾油するという目的で利便性や効率を考えた結果、使用されるようになったヘキサン(ノルマルヘキサン)。原料大豆に油分が残っていると、加工しにくい食品も沢山あり、畑のお肉 ソイミートもまたそのひとつではありますが、ヘキサン(ノルマルヘキサン)抽出では、大豆が本来持っている旨味も損ねてしまう場合があります。目的は油を搾ることではなく、脱脂大豆をより旨味と簡便な食材に変化させること。だとしたら、ヘキサン(ノルマルヘキサン)を使用せず、加工の邪魔にならないギリギリのラインまで大豆を搾油できるのであれば、美味しさと旨味を保証できるのが一番。
科学(化学)技術は確かに様々な利便性や効率の向上をもたらしましたが、「素材の旨味」をそのまま伝える食文化においては、時には非効率と思われる手法が一番いいのかもしれません。
【ヘキサン(ノルマルヘキサン)とは?】
常温では無色透明で、灯油のような臭いがする液体。有機溶剤の一種で、示性式CH3(CH2)4CH3で表される直鎖状のアルカン(飽和炭化水素)です。水溶性は非常に低く(20℃で13mg/L)、灯油やガソリンに多く含まれておりベンジンの主成分としても知られています。ベンジンとは、染み抜きに使ったりするあのつんと鼻を突き刺す刺激臭の液体です。ヘキサン(ノルマルヘキサン)は約700℃で熱分解を起こし、水素、メタン、エチレンを生ずることが知られていますが、極性の低い溶媒として、油脂の抽出をはじめ様々な用途に使われています。
大豆まるごとミートの戻し方
大豆の香りが気になる場合には、湯戻しした後に生姜汁や醤油などで下味をつけたり、湯戻しの際にだし汁を使用します。
湯戻ししただけでもお料理に使用できますが、よりお肉に近い食感にするには、素材を酢上げしたり、軽く炒めてから調理するとより一層美味しくお召し上がり頂けます。
大豆まるごとミートのレシピ
大豆の栄養素は世界中でも注目されています。大豆まるごとミートは、原料は大豆のみ。今話題のイソフラボン、レシチン、サポニン、タンパク質などが豊富に含まれています。肉類と違い脂肪も少なく、良質なタンパク質、ミネラルと食物繊維を少量で摂取できるところがポイントです。
大豆まるごとミート(小エビタイプ)を使った「かき揚げ」
<材料>
- 大豆まるごとミート(小エビタイプ)
- 薄力粉
- 野菜(玉ねぎ/きぬさや/人参など)
- 冷水
- てんつゆ、塩など
- 和しぼり(揚げ油)
<作り方>
- 大豆まるごとミートを湯戻しし、しっかり水気を切る。
- 野菜を適当な大きさに切り、ボウルに入れ、菜箸で混ぜる。
- 薄力粉を振り入れて混ぜ、冷水を入れてサックリ混ぜる。
- 木べらに軽く広げ、揚げる。
大豆まるごとミート(手羽先タイプ)を使った「黒酢照り焼き」
<材料>
- 大豆まるごとミート(手羽先タイプ)
- 富士玄米黒酢
- 醤油
- コーボン
- 薄力粉
- 和しぼり(焼き用)
<作り方>
- 大豆まるごとミートを湯戻しし、しっかり水気を切る。
- 大豆まるごとミートに小麦粉をまぶす。
- 油をひき、お好みの硬さまで焼く。
- 醤油、コーボン、黒酢を入れ、味が染みるまで火を入れる。
とうきびみそ(とうもろこしみそ)
お味噌をトウモロコシで作っちゃったの?
長年・根本的な健康・美に携わる中並さん
ある料理研究家が自宅用に毎年仕込み、家族や仲間達とお味噌汁として愛用していたレシピをもとに、研究を重ね商品化したとうきびみそ。
とうきびみそには一般的な味噌の原料である米と大豆の他に、米以外の主原料としてトウモロコシを使用。ナンバンゲ(南蛮毛)と呼ばれるトウモロコシのヒゲ、そしてウコンが入っています。
もともとは家畜の飼料用として、代々つくられていたトウモロコシの栄養価に着目した農家さんから、とても固いこのトウモロコシをどうにかして食用に出来ないものか?と、相談を持ちかけられたのがきっかけでした。
それから研究開発を続け30年以上の年月を費やし出来たとうきびみそに、福岡で統合医療的視点を持ち、根本的な健康と美を提供する施設をご家族で運営されている中並さんの知恵と努力、味噌蔵の社長の経験と工夫が加わって商品化に成功。やっと皆様にお届けできる事となりました。
お味噌にはちょっと不思議な原料のうんちく~和漢の知恵~
トウモロコシ
どんよりしがちな身体を内側からキレイにし、朝からスッキリを促す、活力向上にも効果
トウモロコシのヒゲ(南蛮毛)
煎じたお茶はスッキリを促しノンカロリーでダイエット時の栄養補給によいと流行りました。
うこん
体のリズムアップ。乱れた身体環境を整えるために使われています。日本でも 宴席時のスッキリ対策等によく使われていますね。
トウモロコシとウコンは還元の力も強いといわれています。
手でもぎもぎ
“とうきびみそ”を作るために、実をひとつひとつ、一粒一粒を大切に手で取り外しています。芯により近いところにある胚芽を傷つけないように、綺麗にはずす為でもあります。大変な手間と労力。
料の阿蘇のトウモロコシは、胚芽の部分が12~13%と多く、胚芽の占める割合は大豆の6倍。トウモロコシを多く使うことで胚芽の様々な栄養成分も期待できます。
トウモロコシの胚芽からコーン油が取れることから分かるように、得に 還元が高いといわれているビタミンEやミネラルなどもバランスよく含まれています。
味噌蔵さんから「大豆じゃない味噌は邪道だ!!」
中並さんは2011年の東北震災をきっかけに商品化に走り出しました。もともと知っていたトウモロコシで作ったお味噌が、身体環境を補って被災者の方の健康を支え、お役に立つのではないか…と、導かれるように商品化を進めたのです。
今の味噌蔵のご主人に出会うまで、トウモロコシで味噌を作ってくれる昔ながらの丁寧な製法で味噌作りをしている蔵を探して数社を訪ね歩きました。
「大豆じゃない味噌は邪道だ!!」とお叱りを受けた事もあったと言います。
現在の味噌蔵を見つけたのも、お母様の知人から「正道を突き進み、昔ながらの作り方で味噌をつくっているところがある」と聞き、そんな味噌蔵のご主人にほれ込み、思いを伝え、トウモロコシの味噌を作っていただけるようお願いに行きました。現在では理解してもらうことができ、いろいろな工夫を一緒にしていける、良きパートナーになりました。
厳選した九州の作物を原料に
原料は厳選しています。もともとは阿蘇のふもとで種を残す為に地域の方々が種を代々取りつないで小規模に農薬を使わずに栽培していたトウモロコシ。ウコンは沖縄産の農薬不使用のもの。麹をつける米と、併せて使う大豆には福岡産を。ここまではすべて九州産です。この味噌をつくる味噌蔵さんの思いでお塩はメキシコの綺麗な海の天日干しのお塩を使っています。
発芽キヌア醤油 発芽キヌアみそ
スーパーフード キヌア
キヌアは、もともとは南米のアンデス地域で古くから食べられていたローカルな作物です。1993年、NASAが宇宙食としてキヌアに注目し、高い栄養価を評価したのを契機に一気に世界の注目を浴びることとなりました。2013年2月20日には、ニューヨークの国連本部で「国際キヌア年」を公式に宣言。この宣言は、「キヌアは、全ての必要不可欠な必須アミノ酸、微量元素及びビタミンを含む唯一の植物性食料であり、また、異なる生態学的環境や気候に適応する能力を持っている」として、キヌアの持つ食料・栄養の供給に果たす役割と価値に焦点を当てるものでした。その高い栄養価が現代人の栄養不足を補い健康的な食事を推進するとして、また、摂氏-8℃から38℃の気温変化にも耐え、海抜0メートル~4000メートルまで育つという、農業生態系への高い適応能力が世界的飢餓対策として期待されています。
ハリウッドの美しいセレブリティ達がキヌアをダイエット、美容食として取り入れているのはご存じでしょうか? その秘密はもちろんキヌアの多様な栄養成分にあります。キヌアは、米や小麦、トウモロコシなど他の穀物よりも高タンパクであると同時に、人間に必須なアミノ酸やビタミン・ミネラルをバランス良く含んでいることが確認されています。
白米よりも栄養価の高い玄米と比較しても、キヌアはおよそ、タンパク質は2倍、脂質は2.25倍、カリウムは2.5倍、カルシウムは5倍、マグネシウムは1.8倍、リンは1.6倍 鉄は2倍、食物繊維が2.3倍も含まれているのです。しかも脂質は良質な必須脂肪酸が多く、必須アミノ酸が非常にバランスよく含まれていること、特に女性に嬉しい成分であるフィトエストロゲンを含んでおり、美と健康に役立つと大注目されています。グルテンフリーであることも安心して取り入れることが出来る要素として評価されています。
成分名 | 単位 | キヌア | 玄米 | 白米 |
---|---|---|---|---|
エネルギー | kcal | 368 | 350 | 356 |
たんぱく質 | g | 14.1 | 6.8 | 6.1 |
脂質 | g | 6.1 | 2.7 | 0.9 |
炭水化物 | g | 64.2 | 73.8 | 77.1 |
カリウム | mg | 563 | 230 | 88 |
カルシウム | mg | 47 | 9 | 5 |
マグネシウム | mg | 197 | 110 | 23 |
リン | mg | 457 | 290 | 94 |
鉄 | mg | 4.6 | 2.1 | 0.8 |
亜鉛 | mg | 3.1 | 1.8 | 1.4 |
食物繊維 | g | 7.0 | 3.0 | 0.5 |
(キヌアはUSDA Basic Report、 玄米・白米は文部科学省の食品データベースより)
古代アンデスからの贈り物
キヌアは自然環境の厳しいアンデスの高地で5000年前から食べられているヒユ科のアカザ亜科という、ほうれん草の仲間。インカ帝国では神聖な食物として「母なる穀物」と呼ばれ、主食として重用されていました。種まきの時期には皇帝が自ら金の農具で神聖な儀式を執り行っていたそうです。歴史的には、インカ帝国をスペインが滅ぼした時にキヌアの栽培も禁止したといわれており、近年になって、栄養価が高く厳しい環境にも適応する穀物として見直され、スーパーフードとして再認識されました。プレマシャンティの発芽キヌア醤油と発芽キヌアみそは、南米で農薬も肥料も使わずに自然の力で栽培されたキヌアを、充分に浸水し発芽させて、キヌアそのものに麹をつけ、発酵熟成させたものです。匠の技を活かしたキヌア麹100%。雑穀を原料とする発酵食品の中でも、雑穀の素材そのものに麹をつけて作られるものは大変貴重です。
キヌアそのものに麹をつけています。
発芽したキヌア
発芽して蒸したキヌアに麹菌を接種した翌日の様子。キヌアの表面にも、キヌアの内部にも菌糸が伸びてきます。
菌糸が伸びてきた状態。
菌糸が伸びると、通風が悪くなり、酸素の供給がうまくいかない。また、細胞分裂を繰り返すと発熱して熱がこもる為、ほぐして熱をさげ、酸素の供給を助ける。
このミゾにも意味がある。全体が均一の温度になるようにこの形にしている。
キヌア自体に麹をつけるために工夫を重ね、開発したオリジナルの製麹機。送風・湿度・温度・酸素を適した状態にする。
麦・大豆を使っていません
発芽キヌア醤油、発芽キヌアみその製造工程は、コンタミネーション(混入)が起きないよう完全に独立させ、細心の注意をはらっています。瓶詰めのラインは通常の醤油と同じラインを使用するため、機械をはじめ使用するものすべてを分解できるところまで分解し、水や熱湯で徹底的に洗浄しています。
「発芽キヌア醤油」は、キヌアを発酵させることによって生まれる特徴ある香りを楽しめます。淡口醤油のようなうすい色味で、しっかりとした塩気がありますが、旨味を十分に含んだ軽やかな味わいで、白醤油や淡口醤油のようにお吸い物や和え物にふんだんに使っていただきたい調味料です。また、そうめんやそばのつけつゆにぜひお試しください。麦も大豆も使わない商品ということで、他のプレマシャンティ商品の中からでも見分けやすいよう、珍しい鮮やかな緑のキャップを採用しました。
「発芽キヌアみそ」は、醤油と同じくキヌア独特の香りと、豊かな旨味を楽しめます。なめらかなすり味噌風で、ドレッシングや和え物にも混ぜやすく、大変使い勝手の良い調味料です。
どちらも、麦や大豆以外の選択肢として、手軽にスーパーフードを取り入れことのできる、自信の逸品です。
小麦の風味とサクサクした食感、無添加パン粉
今朝焼きあがったばかりという粗熱の取れた食パンを、ラックから一斤抜き取り、両手で挟んで左右からぐっと圧力をかけました。
((ああっ、もったいない!))
袋売りの食パンであれば、ひしゃげて元には戻らないであろうという強い力です。商品を手で押しつぶしてしまうなんて、申し訳ないことをさせてしまったと内心ハラハラとして、相手を見ました。
ほらね、こうやって押しても、元に戻ってくるんです。
変形するのではと思った食パンは、圧を緩めると同時に、他のパンとも寸分違わない形状に力強く復元されました。湿気を含んで少ししっとりとしたパン耳も、ひび割れることもなくそのまま何事も起きなかったかのようです。
この弾力は、イーストでは望めません。塩と小麦粉を練り合わせて、天然酵母でじっくりと時間をかけて発酵させて、初めて出来上がる弾力だと思います。
これ、生きていますね。
まだ復元を続けるパンを見ながら、言葉が滑り落ちました。完全に元の形に戻ろうと、まるで意志を持つ生き物のようにゆっくりと膨らみ続けるその様は、本当に生命を持っているかのようでした。
食べてみてください
差し出された欠片から、ふわっと香る香ばしい香り。口に含むと、非常に淡白な、それでいて香ばしさの中に、小麦の甘さがしっかりと感じられます。なにより、弾力があるのに、キメの細かい柔らかな食感とどこかしっとりと優しい舌触りに驚きました。パンなのにお味噌汁にぴったりな、まるで炊きたてのご飯をいただいたような満足感です。表情の変化を見取ったのでしょう、次の言葉は確信に満ちていました。
どうですか、美味しいでしょう。
高さ170cmを越えるラックに整然と、かつぎっちりと並んだ数百本の食パンを前に、唯々うなずくばかりでした。
このまま店に並んでもおかしくはない食パン達は、しかしパン粉になるためだけに焼き上げられたものでした。素材の味を邪魔しないよう、塩分は控えめ。カラッと切れよく仕上がるよう、油切れが良いように調整された水分。
料理に使うものなので、自己主張をする必要はありません。
ですが、パンそのものが美味しくなければ、パン粉も決して美味しくは仕上がりません。
工場の稼働時間は、25時(1時)の焼成開始からお昼の12時頃まで。朝の9時には、当日に焼きあがったばかりのパンが店頭に向かって出発します。出荷が済むと翌日の仕込み。酵母の様子を確認し、粉を捏ね、発酵させます。工場内には、一度に百本近いパンを焼き上げる巨大なオーブンやホイロ、ニーダー、ローラー、分割器の他、アンパンなどの餡をくるむ機材など、敷地面積比で考えると豊か過ぎるくらいの製造設備を備えています。
こういった道具を使うようになって、パンづくりの経験が浅い方にも、ある程度深い部分までお手伝い頂けるようになりました。そのお陰で、ご贔屓下さる沢山のお客様に、私どものパンをお届けできるようになりましたし、こうやってパン粉のためにだけパンを焼けるようにもなりました。
とはいうものの、工房の要は、少数精鋭、熟練のパン職人です。
米を主食にする日本人にあったパンを焼こうと、長い間使っていた既製の天然酵母粉末の使用をやめ、酵母作りからの再出発を決意した約三十年前。酒や味噌、醤油などの根強い発酵文化を持つ国だから、西洋の「小麦」文化で生まれたパンという発酵文化にも馴染む酵母を作り出すだけの環境が整っていたのかもしれません。しかし、今まで誰もやろうとはしなかった米麹を使った酵母づくり。それは、「米」と「小麦」という二つの食文化圏を違和感なく繋ぎ合わせただけでなく、強く印象に残る食感と旨みに満ちた新しいパンの世界を生み出しました。麹蔵で種付けから始まる麹づくりは、日本に昔から残る先人の叡智です。
そして何日もかけ、我が子を育てるように手をかけて産み出す酵母種は、千年近い和(やまと)の食文化を支えてきた根幹を引き継いでいます。自社の麹室で作られる自然酵母は、蒸した米に蔵つき麹を定着させて起こすところから始まります。この米麹が安定するまでの一番難しいとされる約二十日間、会長と社長が元種づくりにつきっきりになります。麹造りの技術も、元種づくりも一子相伝。櫂と呼ばれる木の混ぜ棒を使い、麹の仕込桶をひとつひとつ丁寧にかき混ぜる作業は、命の種をつくる仕事。米という天産物に、新しい役目を与える神聖な仕事です。
最初は海外産の小麦を使っていましたが、どうしてもうちの酵母に合わないので、すべて国産の小麦に切り替えました。
高く積まれた小麦の袋には、自社の名前が製品名として印字されています。国産小麦の産地の一つである北海道の製粉会社に依頼をし、自社用に特別に製粉、ブレンドされる二種の粉。それぞれ用途が決まっているのだと言われたひとつは、パン粉用にブレンドされたものでした。米麹由来の酵母に合う国産小麦。その味に、合う原料をと厳選していくと、自然と削除されたショートニングやバター。簡素な材料を使い、時間と手間をしっかりかけること。原料のパンづくりの根幹から考え直した末には、それぞれの素材の力を最大限に引き出した味わいがつくり出されています。
板わかめ
出雲の名産「板わかめ」は、ただの『わかめ』ではないのです!!
6月の登場以来、連日たくさんのご注文を頂いている板わかめ。
十分なご紹介が出来ないままになっていましたが、まだ知らない方にこそ食味して欲しい!と、そのおいしさをお伝えするため、弊社広尾オフィスで試食会となりました。
スタッフ 谷口
板わかめ、というものを全然知らなかったのですが、食べてみたら予想をはるかに上回るおいしさでした!
袋を開けたときに磯のおいしそうないい香りがし、そのまま食べると、程よい塩味と薄くて軽いわかめの食感と風味ですごくおいしい!
わかめは肉厚だと思い込んでいたせいか、想像を裏切る軽やかさに驚きました。
「お召し上がり方」を参考にして、指でパリパリとふりかけのように細かくしてからごはんにかけて食べたら、「わかめごはん」のようで塩味がぴったりでこれもおいしいっ!
わかめなのにふりかけのように扱えるところも簡単に食べられていいなと思いました。
島根県出雲地方の郷土食、板わかめ。
刈り取った若くて柔らかいわかめを水洗いし、干し上げるだけと作り方は至ってシンプルですが、その作業はとても過酷です。
原材料のわかめは、寒さが深まる1月から春先の5月。
丁度わかめの成長する時期にもっとも美味しいと云われる新芽を収穫します。
わかめの収穫は早朝、夜明けの海で行います。
日本海の荒波の中を漕ぎ出した漁師が手作業で刈り取ったわかめを陸にあげ、何度も丁寧に水洗いし塩抜きをし、一枚ずつ手で伸ばしながらすのこやむしろの上に干していきます。
収穫から干し上げまでは、一日の作業です。
1月から3月は、一年で一番気候の厳しい時期でもあり、海も荒れます。
だから漁に出られるかどうかは、海次第。
海の様子を見ながら、限られた期間に1年分のわかめを収穫するのだそうです。
美味しい板わかめは、むこうが透けて見えるほど薄く干すのがポイント。
軸の部分を伸ばし、柔らかいわかめの葉を薄く左右に広げる作業は、手慣れた方々だからこそできる熟練の技です。
「別の土地に持って行くと、味噌汁に入れたりする人がいるけど・・・」
出雲地方では、板わかめはそのまま食べるものです。
そして、炊きたてのご飯にかけるのが一番美味しい!
本場出雲では、とにかく細かくしてご飯にかけるのが一番美味しい板わかめの食べ方だとか。
海の野菜「板わかめ」は、海水そのものを含んだ旨味のもと。
簡単にご飯に旨味を添えられる家庭の常備菜、万能ふりかけです。伝統中医学で腎・膀胱の働きを補い、血肉に作用するといわれる鹹味(かんみ)は、塩辛い味と云われがちですが、本当は板わかめのような「天然に含まれたうま味のある塩味」を指しているのかもしれません。
昔は「わかめ漁」を生業にしている漁師さんが沢山いたと云います。
作業の過酷さや産業構造の変化によって、多くの方が漁師という「職」を手放してしまいました。
故郷に戻れば、当然のように味わえた「ふるさとの味」ですが、守り伝えるひとたちがいてはじめて味わえる貴重な旨味になりつつあります。
おまけ。
丁度お昼時だったにも関わらず・・・
試食会の第一声は、「お酒が飲みたくなる・・・!(笑)」
板わかめの海水本来の旨味と塩加減は、おつまみとしても最高。お酒好きにはたまらないようです。
古式なたね油 ~色目の違いは、自然の証~
昭和三十年代の製法をそのままに引き継いだ、「なたね油」らしいなたね油
近年、各地で復活しつつある「なたね栽培」。
日本古来の「菜種」からキャノーラ種に品種こそ切り変わりましたが、再び昔ながらの「国産100%」圧搾なたね油が増えつつあります。そしてそれに呼応するかのように、近隣農家から持ち込まれたなたねを、天日干し・薪火焙煎・圧搾という昔からの製法で搾り続けてきた小規模の製油所も再起動しました。育てたなたねを搾油して欲しいと持込む農家と、化学肥料や農薬を使わずになたねを育てて欲しいとお願いする製油所。もっと美味しいなたね油をつくりたいと、農家と製油所がお互いの要望を出し合いながら、新しい「なたね油」が育ちつつあります。
黄金色が美しいなたね油ですが、全て同じ色合いというわけではありません。
コンバインで刈入れ乾燥機を使って乾燥させたものと、刈入れてから天日で乾燥させたものでは、金色の濃さも色合いも全く異なるといいます。また品種によっても、搾り取った油の色合いは異なります。
「それぞれ色が違うのがわかりますか?一番ひだりがキザキノという寒い地方、北海道や東北などの有数の産地で育てられている品種のなたねを絞ったものです。黄色く輝いているでしょう。」
火入れをしても金色が曇ることのないキザキノの油。その美しさが一番好きなのだと云いながら、ご自身で植え、房から落ちそうになるまで熟すまで待って収穫したたねから搾った「自家製」の油を見せてくださいました。
「次が乾燥機に入れていないコンバイン狩りのナナシキブの油です。ナナシキブという品種は、中部圏、愛知県から滋賀県にかけての地域で栽培しやすいエルシン酸のない品種です。このあたりのほとんどの農家がナナシキブを栽培しているものですから、ここに持ち込まれる原料はほとんどがナナシキブです。僕個人的にはキザキノを栽培して欲しいですが、収穫が遅れると梅雨の時期と重なってしまって刈り取りが非常に大変なので、このあたりではナナシキブという品種が主流です。品種によっても育ちが違うんですよね。色目の良さからキザキノがよいという精油所は多いようですね。けれどナナシキブもにおいを嗅いで頂くと分かりますが、甘いです。揚げた食材がなんとなく甘みが強いような気がします。」
並べてみると、確かに色目の違いがはっきりわかります。ナナシキブとキザキノ。そして天日干しと機械乾燥。それ以外にも収穫地や収穫時期によっても微妙な色合いの違いが生まれます。
「これもナナシキブで品種は同じですが色味が深いですよね。これはコンバインで刈った直後に機械乾燥した種を搾油しました。同じ品種でも乾燥の仕方でこれだけ色目に差がでるんですよね。けれど同じ機械乾燥でも、種がこぼれるくらいまで熟したものを収穫すれば油も輝くとは思うんですけれど・・・太陽に透かすと色目の違いが一層はっきりしますよ。」
コンバインで刈り取って機械で乾燥した種を、わずか1日であっても必ず天日に干すのは、「油職人」の五感が「油の違い」を感じ取っているからです。論理的な説明も、実証データも無いけれど、「天日に干すと違いが生まれる」と感じている以上、機械乾燥されたなたねも必ず天日に干すという作業は欠かしません。
「干物もそうだけれども、おてんとうさまの光を当てるか当てないかでは旨みがぜんぜん違いますし、なたね油の場合は天日に干すか干さないかで色合いが違います。だから僕は、農家さんが持ってきたなたねを、必ずもう一度自分で天日に干します。」
コンバインや乾燥機を導入し、より効率的な生産方法を導入する農家が増えるのは、時代の流れで致し方ないことです。しかし美味しい油にするために、搾り手にも出来る工夫があるのだといいます。先代から引き継いだ「なたね油の美味しさや美しさが一番際立つ搾り方」に忠実に、収穫したなたねを唐箕(とうみ)がけし、天日干しした後に俸禄鍋に薪火をくべて焙煎します。釜は、先代の何十年の実績から生まれた世界にたったひと組しかない特注の「ほうろく釜」です。
「面白い話で、重油ガスのバーナーでやってみたんですけれども・・・科学的な根拠はないけれどまきで炊いたお風呂はお湯が滑らかだといいますよね。油もさらさら感っていうんですかね、落ちる時にもどろーっと落ちてくるんじゃなくて、さらーっというような感じだったんですよ。薪で焙煎するだけで油が滑らかになって、本当に違うのでびっくりしたんですよね。だから先代と二人で、手間だけどやっぱり薪だと。僕としても火加減の調整がまきのほうが楽なんですよね。ただ、薪を集めるのが大変なんですけど。」
薪をくべながらじっくりと約一時間。美味しいなたね油をつくるには、一番大切なのが焙煎工程だと確信しているから、どんなに面倒でも少量ずつ薪火で焙煎する工程は変えません。
焙煎が強すぎると油を湯洗いしないといけなくなるし、浅すぎると歩留まりというんですか、搾油の量がぐんと減ります。だから丁度いい具合に焙煎して搾油機にいれるっていうのが、一番大切なんです。焙煎を何度で何分やるのって良く聞かれるんだけれども僕は温度計をいれたこともないし、焙煎している間にこうやって手で何分くらい握っていられるかなあとか、たねをひとつひろってつぶしてみたりしながら火加減を調整しています。
棒でこうやって押しつぶした時に、ぱちぱち~って音がしてつぶれるのは火が入っているんですが、入っていないのはぐじゅぐじゅーって音がする。何度ぐらい・・・といわれたら、大体はわかりますけど重さと時間と種の様子をみながら焙煎しているし、その日の湿度気温や、農家によっても違うんで、毎回ちがうんですよね。」
現在販売される食用植物油の多くが、圧搾後に「湯洗い」という工程が入ります。お湯(水)に何度かとおすと油に混ざる不純物(臭いなども含む)が取り除けるのですが、同時にミネラルなどの本来油に含まれている物質も一緒に取り除かれしまうと云われます。
早く商品化しようとすると、湯洗いは非常に効率的な工程なのだそうですが、低温でじっくりと焙煎し、最低二週間静置させればその必要もなくなります。効率が良くなくても、先代から引き継いだ手間のかかるやり方を変えないのは自然が与えてくれた「そのまんま」を、できる限りまるごと凝縮して届けたいから。商品にも工房にも、本当に美味しいものを生み出すためには、手間暇を惜しまない覚悟が根を張っています。
天日干し。薪火焙煎。湯洗いなし。
昔ながらの黄金色の色合いと独特の風味は、製法から引き継がれます。
品種や刈り取り状況、乾燥の仕方によっても色や味わいの違いが生まれます。前回お届けした商品と色目や香り、味わいが、微妙に違うかもしれません。しかしこれも、すべて脱色せずに手しぼりでお届けしているから。自然のまんまのなたねだからこそ生まれる色あいの違いだとご了承ください。また本当に希に、黒い点のようななたねの絞りかすが濾紙をすり抜けて入ってしまうことがあります。これは180度まで加熱する最後の工程でも焦げたりしない、なたねの殻のちいさな欠片です。品質には影響ありませんので、そのままご使用ください。
生産者が知っている、なたね油の美味しい使い方
このなたね油は、「足していく」のが一番お勧めです。
なたね油のにおいは独特なので揚げものをしようとすると、台所に充満するにおいに驚く方が多くいらっしゃいます。けれども食べてみると、いつもと違う揚げものの味がするともう一度驚かれる方が大半です。口についた油をなめて、「あれ?この油、美味しい」と気がつかれる方もいらっしゃいます。
はじめて使うときは、まず加熱してにおいを飛ばしてください。そしてジャガイモやサツマイモ、カボチャのスライスしたものを、ころもをつけずにさっと素揚げします。野菜を素揚げすると、野菜となたね油自体が持っている甘みが調和して、なんともいえない旨みがあります。コロッケや串カツなどのパン粉をまぶして揚げるものは、2回目以降の油で揚げると美味しいです。使い終わった油は、揚げカスを取り除いておけば、使う都度濾過しなくても汚れが自然に沈殿していきます。また何度も使った揚げ油は、そのまま炒め油にして最後まで使い切ってください。このなたね油は、最後まで使い切ることができる数少ない油のひとつです。
人によって感じ方は違うかもしれませんが、なたね油は確かに独特のにおいがあるものの、食材にはそのにおいがつかないでカラッと仕上がります。そしてこの油の持つ旨みが、野菜の持っている旨みを引き出すから、シンプルで旨い料理に仕上がります。また新しい油は、かけ油としても最高です。ドレッシングの油としてや、野菜の蒸し炒めに仕上げのかけ油として、加熱しないでほんの少し使ってもうま味があります。オリーブオイルと似た使い方ですが、オリーブオイルのような自己主張がありません。動物性の食材、例えばとんかつとか牛とか卵とか、そういうものには、なたね油は重宝します。動物臭さが強い食材は、多めに菜種を混ぜるのがお勧めです。
本仕込 もちごめ飴
2013年11月のある日、小笠原商店・藤田社長からお電話がありました。
「自信を持って渡せるあめに仕上がったよ。これが本当のあめ色だから、楽しみにしておいてください。」
なかなか夏の暑さが収まらず、本当に秋がやってくるのかと気を揉んだ2013年でしたが、10月の末頃、台風の来襲と共に、気温が20℃を下回り、飴の仕込みに最適な季節が一気にやってきました。
千歳飴の仕込みに昼夜追われる中、気持ちのいい秋晴れの爽やかな日に、発売開始の初めての商品にこれ以上はない、美しいもちごめ飴を仕込んで頂きました。
小笠原商店は文政五年(1822年)の創業以来、もち米飴や千歳飴などの商品をはじめとした伝統的なお菓子を作り続けてきた老舗。ひと釜ひと釜手作業で、じっくり煮詰める伝統的な製法をそのままに、ふくふくとした豊かな甘みをもつもち米飴を作り続けています。
その技は一子相伝。その技を引き継いだ7代目の藤田栄一さんもまた、日々研鑽を重ねる職人です。
「かつては水を求めて旅をしたよ」とおっしゃる藤田さん。
もち米と大麦麦芽だけでつくるもちごめ飴には、清涼な水が欠かせません。
原材料の品質も勿論ですが、清冽な水がない土地では飴は作れないのだといいます。
小笠原商店がある佐賀県・鹿島市は、米作りが盛んです。また霊峰・多良岳の伏流水に恵まれ、伝統的に造り酒屋が多い名水に恵まれた土地でもあります。
もち米飴の原材料は、佐賀県産のもち米と大麦麦芽だけと非常にシンプルです。そしてまた、もち米飴の製造工程も米を蒸し上げ、糖化させ、煮詰めるというシンプルさです。しかしだからこそ、作り手の技術が製品の仕上がりを左右します。
もち米飴造りは、1)もち米を蒸す、2)鉄鍋で粥をつくる、3)麦芽を加え、もち米のでんぷん質を糖化する、4)完全に糖化したもち米液、糖液をなんども漉す、5)アクを取りながら気長に煮詰める という工程で行われます。糖液をつくるのに1日、煮詰めるのに1日、合計2日間にわたる根気と忍耐が要求される作業です。
透き通った琥珀色の飴は、完全に糖化した頃合いを見計らい、釜と向き合って丁寧にアクを取り除きながらじっくり煮詰めるからこそ生まれます。しかしひと釜ひと釜、仕上がりが違うのだと藤田さんは云います。
気温の違いや湿度の違い。ひと釜ごとに、また日によって変わる条件が、飴の仕上がりにも影響を及ぼします。同じ材料と同じ道具を使って、同じようにつくっても、「おなじものはできんもんね」と藤田さんは云われます。何度つくっても完璧がないのが、この仕事だとも。もちごめ飴はつくるのではなく、まさしく育てるもの。7代にわたって引き継がれた知恵と、そしてよりよいものをつくりたいと研究を続ける藤田さんの熱意。職人の熱意そして経験と勘によって育てられた昔ながらのもちごめ飴は、日本が世界に誇る食の芸術だといえるでしょう。
京あられ
冷蔵庫で寝かせるもち
あられを焼き上げるまでには、最低1週間。
精米から焼き上げ、味付けまで、一貫してひとりの職人が、手をかけ、心を配って焼き上げます。一度お米を水に浸すと、どんな緊急事態が起ころうとも、商品に仕上げるまでは途中で手を止められない真剣勝負です。流れ作業で大量生産するあられとは違い、職人の技が集結した美味しさの極みです。
京あられづくりは、精米から始まります。精米したもち米をじっくり一晩浸水させて、杵で搗き上げてから最低3日冷蔵庫で寝かせます。搗き上げたもちを薄く削って焼き上げる「あられ」は、もちの水分が落ち着いて、削れる固さになるまで熟成する工程がとても大切です。適度に乾いたお餅は、削っても表面に汗をかかず、かといって乾きすぎてもいません。
「冷蔵庫で最低3日寝かさないと、水分が抜けません。3日から5日の間ですね。
2日ぐらいではどうしてもまだ削ったときに汗をかくので、乾燥させるときにもち自体の水分でくっついてしまいます。しっかりと水分を出し切ってからでないと一枚一枚が綺麗に乾いてくれないんです。」
乾燥装置
自然乾燥中のあられ
削り取ったあられの原型である薄いお餅は、蚕棚のように何段にも重なったベルトコンベアの上で自然乾燥されます。限られた室内に収まるようカムやギアが組み合わさった「乾燥機」は、先代がアイデアを出し開発したオリジナルだといいます。その機械の上を、大量のあられが流れ続ける様子は圧巻です。乾燥するまで、最低でも3日間。乾燥し切ったかどうかは、手で触れた感覚はもちろんですが、あられが落ちたときの「プラスティックの欠片が当たるような音」でも判断します。”チャラチャラ”と”サラサラ”の間の、乾いた、はじけるような軽い音。それが、乾燥し切った合図だそうです。
熟練の職人が持つ微妙な音を聞き分ける耳。
経験の積み重ねでしか得られない感覚が、出来上がりを左右します。
季節によって、温度によって、湿度によって・・・。乾燥し切るまでの時間は変わります。乾燥しすぎる夏場には、頃合いをみて回収し湿度を調整したり、冬場は室内の温度を上げたりと細やかな手入れも必要です。ボイラーや乾燥機で一気に乾燥させれば、より早く、より楽に乾燥出来るのかもしれません。しかしどんなに手間がかかっても「自然乾燥」させるには、理由があります。
乾燥したあられの原型の断面
焼き上がったあられの断面
自然乾燥させたあられの原型をパキッと割ると、断面がきらっとつや光りします。
これはボイラーやガス火では、決して出ないつやです。
断面のつやは、焼きあがったあられの断面でもわかります。
網を熱して強火の遠火で焼き上げたあられの断面もまた光輝いています。
光輝く断面は、杵でつきあげ自然乾燥させて生まれたもち米本来の粘りの証拠であり、他には真似のできない香ばしい歯ごたえや味わい深い美味しさにつながっています。また「お砂糖が入っているのか?」と聞かれることも少なくない甘さも、丁寧な仕事だからこそ引き出すことができたもち米本来の味です。もち米の甘さと日本古来の調味料のみが調和した「記憶に残る味」は、手を抜かずひとつひとつの工程を丁寧に積み重ねるからこそ生まれるものです。
たったひとりの五感と経験を頼りに仕上げられた「京あられ」。
袋を空けると漂う高い香りと、歯に当たると聞こえる高い乾いた音は、「隠れて食べることができない」あられの本当の美味しさを今に伝えています。
有機みそ
みそ・醤油は「みそ蔵」・「醤油蔵」に生息した酵母が、納豆はわらに生息した納豆菌が、空気中に住まう様々な酵母菌類と一緒に大豆や米を自然のままに「醸して」生まれる食品です。
それは、冷蔵庫や冷凍庫、レトルト、缶詰といった食品の保存方法がまだ無かった時代に、先人が知恵をめぐらせた伝統保存食でもあります。しかし日本の「伝統食」と呼ばれる「発酵・醸造食」も、その実体は大きく様変わりしています。
食品需給バランスが不安定となった戦後の混乱期を境に、「供給」に重点を置いた時代の流れによって、近代化された「伝統食」が多く流通するようになりました。より効率よく、より短時間に「量産する」ために、温度管理や攪拌などの機械化・自動化をはじめとして、原材料にも丸大豆の代わりの脱脂大豆、天然蔵付酵母・わら付納豆菌の代わりの人工培養酵母菌、そして発酵を補助するための添加物などがつかわれるようになったのです。その結果、四季の移ろいに任せ長い時間をかけて自然に発酵・醸造していた食品たちは、生産者にとっては「より短時間に・より沢山・より扱いやすく」、消費者にとっては「より安価に・いつでも・簡単に手に入れられる」食品へと変化しました。スローフードムーブメントの影響か、最近では「丸大豆使用」の醤油や「長期熟成」のみそ、無添加の発酵・醸造食品が市場に戻って来ましたが、多くのメーカーは「人工培養酵母菌」を購入しているといわれます。
人間に有用な菌を酵母や種麹などと呼び、それ以外を「細菌」と呼び分けていますが、本来酵母も種麹も自然界の一員であり生態系の一部です。自然のままに栽培された農産物であれば、天然菌で自然に発酵・醸造が進みますが、人為的に手を加えた農産物では同じようには進みません。
みそ蔵・醤油蔵に生息した酵母やわらに生息した納豆菌で発酵・醸造するには、原材料の吟味が不可欠です。だから選ぶのは、自然界に存在する農業資材だけをつかって育てた米、大豆、麦。そして自然に暮らす酵母や麹。
昔ながらの作り方を引き継ぎ、四季の移ろいのままじっくりと熟成させたみそは、だしが無くても十分美味しいみそ汁に仕上がります。厳選したそれぞれの素材が醸し出すみそのうま味とコクに、野菜のうま味を混ぜあわせてはじめて生まれる身体の奥底にまで染みこむ調和のとれた味です。
夏場の暑い時期に蔵から採種した麹菌の胞子から種麹をおこし、自然のままに育った天産物を原材料に、四季の移ろいに委ねじっくりと発酵・醸造したおみそ。
日本の伝統を次世代に繋ぐ、「本物」の味わいです。
一杯のおみそ汁が食卓に並ぶ、一見伝統的な日本の朝の風景に、「伝統」は残っていますか?
蔵付酵母の種麹を米に混ぜ、おこしたのが「米麹」。
米麹と塩、ゆでて潰した大豆のみを厳寒期に木樽へ仕込み、四季の移ろいのままにじっくり1年醸した純国産「Made in JAPAN」の、色あいも優しい米みそです。
麹歩合8歩で仕込んだ、力強い大豆の風味とキレの良さが特徴です。
キリッと締まった中にも、染みこむような米と大豆の甘みが感じられる米みそは、身体を芯からぽかぽかと温めます。空調管理されすぎ、夏場でも芯から冷えることの多い現代において、貴重な常備調味料です。炒め物や煮物、カレーのアクセントにも。
蔵付酵母の種麹を麦に混ぜ、おこしたのが「麦麹」。
稀少な国産有機大麦を使った麦麹を、麹歩合22歩で仕込んだ香り豊かな味わいです。
麦麹と塩、ゆでて潰した大豆のみを厳寒期に木樽へ仕込み、四季の移ろいのままにじっくり1年醸した純国産「Made in JAPAN」の、色の濃い麦みそです。
九州や四国・中国地方で好まれてきた麦みそは、米に比べて甘みが強く味わいが軽め。麹歩合が高いので、発酵する力も強く色目が黒くなりがちですが、さらっとした味わいと甘み、芳ばしい香りは、米みそと混ぜると旨みが一層引き立ちます。
蔵付酵母の種麹を豆に混ぜておこした豆麹で仕込んだ豆みそです。
化学合成された農薬や肥料、除草剤とは無縁の圃場で育った黒大豆は、大自然の生命力がそのままに、滋味深さとなって身体に染みこみます。
清い水と命の通った黒大豆。厳寒期に木樽へ仕込み、四季の移ろいのままにじっくり1年醸した味わいが、料理にコクと深みを与えます。
麹歩合とは・・・
大豆に対して使用している麹の割合です。麹歩合が15歩であれば、乾燥大豆10kgに対して麹を15kg使用しています。塩加減や発酵温度など味を決める要素は他にもありますが、一般的に麹歩合が高い方が甘口です。