知っておきたい!たんぱく質の重要性と落とし穴
たんぱく質をなにから摂る?動物性?植物性?日本人が陥りがちなあることとは?気になることをまとめました
三大栄養素として私たちの健康にとって必須の「たんぱく質」。
筋肉や皮膚、臓器など体を構成する要素であり、
たんぱく質がなければ私たちは健康に生きることができません。
しかし、いざ「たんぱく質とはなにか」と問われると
なんとなく重要な栄養素であることはわかっているけれど……
という方が多いのではないでしょうか。
そもそもたんぱく質ってどういうもの?
体内でどういう役割があるの?
どんな食品にたくさん含まれているの?
どのように摂るのが効果的なの?
摂るときに気をつけるべきことはある?
など、たんぱく質の気になる疑問をまとめました。
三大栄養素のひとつ「たんぱく質」
人間は、炭水化物、脂質、たんぱく質の3大栄養素とビタミン、ミネラルを合わせた5大栄養素をバランスよく摂ることで健康的に生活することができます。
たんぱく質(プロテイン)というと、「運動時に役立つもの」というイメージもありますが、実際は、人体は60%が水分からできており、15~20%はたんぱく質からできています。これは水分以外の重量の約半分がたんぱく質ということ。そう考えると、運動時のみならず、たんぱく質が私たちにとっていかに重要かはおのずとわかりますね。
また最近では、タンパク質(プロテイン)を摂ることで女性の美容にも有用であるということも知られてきており、美容効果を高めるためにプロテインを摂る人も増えてきています。
たんぱく質の構成
たんぱく質は多数のアミノ酸が結合した高分子化合物。20種類のアミノ酸から構成され、このアミノ酸の量、組み合わせなどによってたくさんの形状のたんぱく質が存在し、それぞれ働きも違っています。
- 必須アミノ酸(9種類)
-
バリン、ロイシン、イソロイシン、スレオニン、メチオニン、リジン、フェニルアラニン、トリプトファン、ヒスチジン
※体内で必要量を合成できないため、食事から摂取する必要あり
- 非必須アミノ酸(11種類)
-
グリシン、アラニン、グルタミン酸、グルタミン、セリン、アスパラギン酸、アスパラギン、チロシン、システイン、アルギニン、プロリン
※体内で糖質や脂質から合成できるが、これらも健康のためになくてはならない要素のため、積極的に摂ったほうがよい
たんぱく質の役割
食事でたんぱく質を摂取すると、タンパク質は体内でアミノ酸に分解され、吸収された後、体に必要なたんぱく質として再合成されます。
人の体内には数万種類ものたんぱく質が存在すると言われ、それぞれが異なる働きをしています。私たちの体の筋肉や臓器、皮膚、髪の毛などがたんぱく質から作られているというのは広く知られていますが、そのほかにも体内の酵素やホルモン、免疫物質もタンパク質から作られています。
- 骨・歯・毛・爪・皮膚
- 筋肉・内蔵
- 血管・血液
また、タンパク質は一度摂るとずっと同じ状態で体内に存在するわけではありません。古くなったものは排出し、新しいものを取り入れることで身体を健康に保っています。コラーゲンなど、加齢によって大きく減少するものもあるため、健康的に生きていくためには、たんぱく質を積極的に摂ることが大切です。
たんぱく質を摂らないとどうなる?
たんぱく質が不足すると、単に栄養不足に陥るだけでなく、健康や美容に影響を及ぼすこともあります。特に高齢の方などは、普段から食欲や体力が落ちがちなので、たんぱく質不足の影響は深刻です。
このように、タンパク質は私たちが健康的に毎日を過ごすために重要な栄養素。
では、どのように摂るのがよいのでしょうか?
体を作るたんぱく質、あなたはどう摂る?
1日に何グラム摂ればいい?
日本人の場合、たんぱく質の摂取推奨量は1日あたり、18~64歳までの男性なら65g、18歳以上の女性なら50gとされています。
ただし、65歳以上の高齢者の方で加齢に伴って身体活動量が大きく低下している方などは、健康維持のために摂取推奨量より多くのたんぱく質を摂ることが推奨されています。
そのほかにも、アスリートなど常に筋力トレーニングをしている方は、たんぱく質を摂っても体内ですぐに消費してしまっている状態が続いているため、慢性的にたんぱく質不足に陥りがち。ダイエットで肉や魚を控えている人も同様にたんぱく質不足の方が多いです。
そういう方の場合も推奨量より多くのたんぱく質を摂ることが望ましいので、だれもが一概に1日に〇グラム摂ればいいというわけではありません。
とはいえ、目安は知っておきたいもの。
わかりやすくいうと健康的な成人であれば、1食あたりの摂取量の目安は、たんぱく質を含むメインのおかずが自分の手のひらサイズであることと言われています。
しかし、あくまで目安なので、以下の表も活用しながら、自分の生活、普段のトレーニングの有無、体調、体重、体質などによって自分の必要量を理解してたんぱく質を摂るようにしましょう。
たんぱく質の1日の摂取推奨量
年齢 | 男性 | 女性 |
---|---|---|
1~2歳 | 20g | 20g |
3~5歳 | 25g | 25g |
6~7歳 | 30g | 30g |
8~9歳 | 40g | 40g |
10~11歳 | 45g | 50g |
12~14歳 | 60g | 55g |
15~17歳 | 65g | 55g |
18~64歳 | 65g | 50g |
65最以上 | 60g | 50g |
参考)日本人の食事摂取基準(2020年版)
たんぱく質を何からどう摂る?
1日の必要摂取量がわかれば、1日3食に分けて摂るようにしましょう。朝食を食べないという人もいますが、タンパク質はこまめに補給することが体の栄養にするには効率的なので、できれば3食に分けて摂ることが望ましいです。
たんぱく質は、肉、魚、卵、魚介類、乳類などの動物性の食品のほか、豆・穀類など植物性の食品にも多く含まれています。
- 動物性たんぱく質
-
肉、魚、卵、魚介類、乳類など
- 植物性たんぱく質
-
豆・穀類・野菜・豆腐・代替ミートなど
食品ごとのたんぱく質含有量の一例(100gあたり) | |
---|---|
鶏ささみ | 23.0g |
鶏むね肉(皮なし) | 24.4g |
牛もも肉 | 21.2g |
豚ロース | 19.3g |
いわし丸干し | 32.8g |
いくら | 32.6g |
ゆで卵 | 12.5g |
牛乳 | 3.3g |
大豆水煮缶詰 | 12.9g |
絹ごし豆腐 | 5.3g |
参考)文部科学省 食品成分データベース
食品中の必須アミノ酸の含有比率を評価するための値である「アミノ酸スコア」という指標もあるので、参考に調べてみてはいかがでしょうか。100に近いほど良質のたんぱく質であるとされています。
大切な人とともにいつまでも健康にすごしたいというのはだれもが願うこと。健康のために食生活を変えたい、変えなければいけないと思っている方は多いのではないでしょうか。
では、健康的な生活のために重要な栄養素であるたんぱく質はどのように摂るのがよいのでしょう。
動物性たんぱく質と植物性たんぱく質、どちらがいい?
動物性たんぱく質と植物性たんぱく質、どちらがいいかというのはよく論じられる話ですが、一概にどちらがいいとは言えません。それぞれによさがあり、個人の体質によっても合う合わないがあるからです。
ただ、宗教上や健康上の理由がない場合、現代人はどちらかというと動物性の食事に偏りがち。近年の研究によると、若いころから動物性のものばかりを食べていると心身のバランスを崩しやすい傾向にあるということがわかってきています。
たんぱく質というと肉や魚など動物性の食材から摂るのが効率的というイメージが強いですが、近年では、大豆や穀類、野菜など植物性の食材から摂ると、肉に比べて脂質やコレステロール値が抑えられるなど、健康効果が広く知られるようになってきました。特に豆類は、将来的に食品における主要なたんぱく源となることは間違いありません。
植物性たんぱく質の利点
植物性たんぱく質も積極的に取り入れよう
肉の代わりにプラントベースの食材を生活に取り入れることは健康効果のみならず、畜産業における飼料問題やCO2排出量などの環境問題の解決、SDGsにもつながるとして今、非常に注目されています。
近年ではヴィーガンやベジタリアンの方だけでなく健康的理由や宗教的理由、その他さまざまな事情で肉を食べないという選択をしている方が世界中で増え、多くのメーカーが植物性原料由来の代替ミート(プラントベースミート)の開発にも取り組んでいます。
動物性たんぱく質がよくないという話ではありませんが、植物性たんぱく質も上手に生活に取り入れていくと、自分自身のためにも地球環境のためにもなります。
これからは、植物性のたんぱく質も積極的に取り入れていく時代です。
ただし、植物性たんぱく質というと、やはり大豆がいちばんに頭に浮かびますが、特に日本で暮らしている場合、気を付けなければいけないことがあります。
日本における「自然食」の課題
マクロビオティックの考えのひとつに「一物全体」というものがあります。仏教用語で、生物が生きているということは、一部分ではなく全体、つまりまるごとの状態でさまざまなバランスが取れているという考えです。最近では「ホールフーズ」という言葉もよく耳にしますが、穀物を精白しない、野菜の皮を剥かない、小魚はまるごと食べるなど、食材をまるごと使うことが健康によいとされています。
肉はまるごと食べられませんので、一物全体に従って肉は食べず、玄米食をし、発酵食品を毎日食べ、動物性のものなら小魚を少し食べるだけなど、いわゆる自然食を意識している方が日本でも増えてきており、たしかに健康に良い食生活ではあるのですが、見落としがちな大きな落とし穴があります。
それは、大豆の過剰摂取です。
大豆に頼りすぎるのは危険
大豆は「畑の肉」ともいわれるように、たんぱく質が非常に豊富で健康にいい食べ物として広く知られています。
しかしよく考えてみてください。
日本で大豆と言うと、そのまま食べるだけでなく、豆腐、豆乳、お揚げ、湯葉、きな粉、納豆、醤油、味噌など、さまざまな加工食品があり、しかもどれもが生活に深く根付いているものばかり。
つまり日本人は、普通に生活しているだけでも大豆を過剰に摂取している傾向にあります。
大豆はヘルシーで体にいいというのは間違っていませんが、なんでも同じで食べすぎはよくありません。大豆を食べすぎると、その豊富な食物繊維によって下痢や腹痛が起こったり、大豆イソフラボンの過剰摂取は、女性ホルモンのバランスを崩すおそれがあったりなど、いろんな弊害があると言われています。
また、玄米食や豆類由来の食事ばかりに偏ると、レクチンの過剰摂取のリスクもあります。
レクチンとは?
レクチンは、玄米や豆類に含まれる毒性物質でたんぱく質の一種。植物の中に含まれているだけでなく、レクチンをたっぷり含んだ飼料や餌で育った牛、豚、養殖魚にも移行すると言われています。
レクチンは植物が自分の身を守るために産生する物質で、動物の体内に入ると多糖類などに結合し、細胞間の結合を阻害して炎症を起こしたり、過剰に摂取すると吐き気、嘔吐、下痢、腹痛等の中毒症状が出たり、腸壁を破壊して腸内環境に悪影響を与えたり、肥満や糖尿病、認知症、自己免疫疾患などの原因となることもあるとされています。
近年よく聞かれる「グルテンフリー」のグルテンもじつはレクチンの一種。一流アスリートがグルテンフリー食に切り替えた途端に体調が改善し、パフォーマンスもあがったという話は有名ですが、グルテンフリー食に切り替えても体調が改善せず、レクチンフリー食に切り替えた途端調子がよくなった、という話もあります。
レクチンは充分加熱すること(沸騰状態で5~10分)で毒性がなくなるとされていますが、いまだ完全に解明されてはおらず、不完全な加熱で中毒を起こした例も報告されています。
落とし穴に気をつけてバランスを意識した食生活を
体のためによかれと思ってやっていることが、逆に体を痛めつけるようなことになっては元も子もありません。
日本に生まれ日本食を愛する私たちは、大豆の健康効果をありがたく享受しつつも、大豆偏重を意識して生活する必要があります。
最近では、大豆以外の植物を原料としたプラントベースミートや、大豆を含まないプロテインパウダーなども開発されているので、そういったものもぜひ積極的に活用してみてはいかがでしょうか。
バランスのよい食事をすることは大前提。そのうえでたんぱく質を何から摂るかということもしっかり考えて、健康的な暮らしに役立てましょう。