農産工房「金沢大地」の国産有機小麦粉、国産有機小麦全粒粉
安心安全を食卓に。小麦の風味と美味しさを実感できる国産有機小麦粉や国産有機小麦の全粒粉をお届けします。
環境に配慮しながら安心して食べられるものを
千年後もつくり続けていきたい。
化学肥料で土の力を奪い、土壌や水質を汚染し、
殺虫剤などの農薬で周辺の生態系を壊す。
それは本来あるべき農業の姿なのでしょうか。
環境に負荷を与える農業から、保全する産業へ。
たとえ社会がどのように変化しても自然と人との関わりが健やかであるよう
今ある農地を大切に使い、安心して食べられる糧を育てる。
祖先が拓いた豊かな大地と水・環境を、百年後、千年後に繋げることが
今をいきる私たちの使命なのです。
金沢大地とは
金沢大地の考えとその歩み
農業は千年産業。有機農業で土や水を守りたい
金沢大地 創業者 井村滉氏
農業は多くの可能性を持つ産業です。生命を維持する食の根幹を支えると同時に、田圃の保水機能など環境保全の役割も担っています。地球を守り、人を育む。この二つの大きな使命を同時に果たせる産業です。
いまや「環境」が企業経営の重要課題となり、再生・循環型社会に向けて各業界、企業が歩み始めました。本来なら農業は先導者として道を示す立場のはずです。それなのにみずからの手で自然破壊を進めているのではないでしょうか。
2001年2月、有機JAS認定生産者に
農産工房「金沢大地」「金沢農業」
代表 井村辰二郎氏
金沢大地で使われている原材料の農産物を生産する「金沢農業」と農産物を加工、販売している農産工房「金沢大地」。このふたつの創業者であり現会長でもある井村滉氏を手伝って、息子であり「金沢大地」「金沢農業」の現代表でもある井村辰二郎氏が農業を始めたのは1997年。
それまでも創業者である井村滉氏は有機肥料である堆肥を使い、土づくりに力を注ぎながら米、大豆、大麦の3本柱による土地利用型農業を確立してきましたが、「その道をさらに進めたい」と続けてきた取り組みの先に有機農業がありました。
有機農業(JONA有機認定)は土づくりを大切にし、農薬不使用と有機肥料が基本です。有機肥料はずっと続けてきたこと。あとは農薬不使用です。これは規模の大きな農地だから実現できたといえます。まず除草を機械化できるので除草剤を排除できます。また隣接する慣行栽培の農地とのあいだに農薬等の飛散を防ぐ約4メートルの緩衝地帯が四方に必要ですが、これもある程度の規模でなければ有機栽培用の農地が確保できません。
幸いなことに「金沢農業」の農地は大区画。隣接する農地とのあいだに充分な緩衝地帯を取ることが出来ます。こうして「金沢農業」は2001年2月、日本オーガニック&ナチュラルフーズ協会(JONA)の有機認証を取得しました。
また、2008年、米国農務省(USDA:United States Department of Agriculture)「National Organic Program」のオーガニック認証「NOP認証」と、EUの有機認証「Organic Farming」を取得しました。
安定供給で日本の農業全体の底上げを
それまで有機農業は信念や生き方のスタイル、自然保護運動の一環ととらえられてきました。人里離れた山あいで細々と営むイメージだったのではないでしょうか。しかし「金沢農業」はある程度の規模をもって取り組み、安定供給をめざしています。
有機農産物は一部の人だけのものではありません。そして量が確保できなければ食品メーカーは材料として使えません。たとえば大豆。いくら国産の有機大豆が高品質でも、あまりに少量では生産ラインにのせられない。だからいつまでも輸入品に頼らざるを得ず、やがて日本の農業は衰退していきます。
「金沢農業」は国産有機大豆では日本一、国産有機大豆の10パーセントを生産するまでになりました。とはいっても食用大豆の自給率はわずか3パーセント(農林水産省・ 平成16年度)、まして国産有機は国内生産の0.4パーセント程度(平成17年度)と本当に微々たる量です。だからこそ「金沢農業」では機械化、大規模経営を進めて生産量を増やし、日本の農業全体の底上げをめざします。
堆肥もみずからつくる。安全な原料で安心の有機肥料
安全な原料で安心の有機肥料
有機農業ではまず土づくりが大切です。植えた苗に肥料を与えるのではなく、土を肥やしてその土が植物を育てるという考え方です。だから土に鋤き込む肥料である堆肥の質はとても大切。無添加飼料による鶏糞や自社の米糠、おからなど、きちんとトレースできる安心原料だけを使って、みずからつくっています。
かつて弁当等の残飯をコンポスト化して堆肥にとの依頼がありました。リサイクルへの取り組みとしては評価できますが、安全性の環は断たれてしまいます。食品添加物を含む原料で安全な堆肥ができるでしょうか。添加物入りの原料でも有機肥料といえるでしょうか。田畑はリサイクルのつけを引き受けるゴミ箱ではありません。
田畑と食卓、双方向トレーサビリティを
食の安全性への関心が高まるとともに、つくる人の顔が見える食べ物を求め、生産から流通、加工を経て消費者に届くまでの履歴をあきらかにするトレーサビリティの仕組みが普及してきました。「生産地はどこか、どんな人がつくった農産物なのか知りたい。」食べる立場としては当然気になることです。
生産者として井村代表も同じことを考えました「どんな人が食べているのか知りたい。」しかし、「うちの大豆がどこで何になっているのか」と父である井村会長に尋ねても、「どこかで豆腐か味噌になってるだろう」と言われるだけでした。そこでせっかく有機大豆に変えたのだからと、まず「金沢大地」の主要作物である大豆の流通経路を見直しました。取引は直接、使う人を確かめて手渡したい。と同時に豆腐や味噌などみずからも加工品の製造を始めました。
今年の大豆を豆腐にするとどうか、どんな品種がいいのか、農産物を使う立場で確かめる実験工房といえるかもしれません。もちろん大豆生産農家なのだから、原料はたっぷり使います。消泡剤を使わず天然ニガリで固めるなど、手間のかかる方法ですが、これも大豆をおいしく食べてほしいからです。2002年、「金沢農業」から販売・加工部門を分離して農産工房「金沢大地」を設立しました。
穀物農家の使命として国産有機で小麦をつくる
日本の食糧自給率はカロリーベースで約40パーセント(2002年)です。主食は米といいながら、パンや麺類、ケーキやクッキーなど多くの小麦製品を食べています。北陸は大麦の産地であり、「金沢農業」ではこれまでも麦茶用の大麦は作っていましたが、麦茶の大麦は穀物とはいえ嗜好品。
たしかに有機農産物への入口として麦茶は大切ですが、「やはり小麦を作ろう」とパンが焼ける有機小麦の栽培を始めました。ホームベーカリーを楽しむ方々に、風味があり 安心して使える小麦粉をお届けしたいと思います。国産で有機小麦をつくるのは意義のあることです。製粉して小麦粉にするだけではなく、醤油の原料にもなります。これまで国産有機の大豆を使って仕込んでいた全国の醤油蔵に喜んで迎えられました。
金沢大地の国産有機小麦粉
国産有機小麦粉
小麦はもはや第2の主食、穀物農家の使命として有機小麦をつくる
金沢大地の井村代表が、みずからの食卓をよくよく眺めてみたら、主食である米と同じくらい小麦粉製品を食べていることに気づきました。井村家ではパンや麺類、子供たちが大好きなケーキなど、たくさんの小麦を消費していました。これは全国どこの家庭でも同じことでしょう。
「カロリ-自給率を上げるためには米だけではなく、これからは小麦が大切、小麦をつくらなくてはいけない。」小麦はもはや日本の第2の主食。それなのに国内消費の約87パーセントが輸入小麦(平成16年度)なのです。「安心して食べられる有機栽培の小麦をつくりたい。」と有機大麦づくりで培った技術で有機小麦栽培をはじめたのが1999年。収穫までは順調でしたが、問題は最後の製粉です。
有機JAS認定の製粉所が近くになく、また大型製粉所では金沢大地のような少ロットに対応できません。ようやく探しあてたのは南部小麦の歴史がある岩手県の製粉所でした。 さまざまな生産者のブレンド粉ではなく、もちろん多くの市販小麦粉のようなグルテン・ミックス粉でもありません。金沢大地の小麦粉は、金沢農業という単一生産農家の有機小麦だけを挽き、そのまま詰めた「国産有機小麦粉」です。
有機小麦づくりは土づくりから。ふかふかの土が育てる充実した有機小麦
先代から25年以上にわたり堆肥を鋤き込んできた土は充実した品質の有機小麦を育てます。有機大豆の後作として11月に播いた種は、河北潟からの寒風に負けず芽吹き、雪の下でもしっかりと根を伸ばします。春には穂を出し、開花。いよいよ6月、麦秋といわれる季節、青々とした麦畑が黄金色に変わったら、収穫の時です。刈り取った小麦は乾燥して冷温貯蔵庫に保管し、必要なだけ少量ずつ製粉。つねに新鮮な小麦粉をお届けしています。
また有機農業だからといって手作業だけに頼るのではなく、麦踏みや除草、刈り取りは機械化し、安定供給をめざしています。
パンやロールケーキ、うどんなど、プロが選んだ品質
品質が不安定で使いにくいといわれてきた国産小麦ですが、金沢大地の「国産有機小麦粉」はそんな常識を軽々と超える力強い魅力があります。
小麦粉そのものが主張するロールケーキやパン、手打ちうどんなど、有機JAS認定の安全性だけではなく、小麦そのもののおいしさが認められた証だといえるでしょう。
金沢農業と金沢農業の一年間
金沢農業を紹介します
金沢農業の概要
石川県金沢市の郊外に広がる河北潟の干拓地は、美しい自然環境が残る広大な農地です。金沢大地の加工品の原材料を育てる生産者である金沢農業は、この自然と調和しながら、25年以上にわたり堆肥を中心とした土作りを進め、約150ha(2010年9月現在)の広大な土地で有機米・有機小麦・有機大麦・有機大豆などを栽培しています。
また、自らが育てた安全性の高い農産物を原料に、納得のいく方法で豆腐や味噌、醤油などの農産加工を進め、伝統的で風土に合った食文化の伝承に取り組んでいます。
人や環境にやさしく、また、永続性のある自立した1000年産業を目指し、有機JAS法施行と同時に有機JAS認定も取得するなど、先進的な有機農業を行なっています。
金沢農業の一年
挽きたて小麦粉をご自宅へ
家庭用電動石臼製粉機「キッチンミル」
わが家で手軽に穀物を挽けたら。
挽きたて小麦粉でホームベーカリーを楽しめたら。
金沢大地が選んだドイツKoMo社の電動石臼「キッチンミル」なら簡単です。
スイッチを押して玄麦を入れるだけで、挽きたての全粒粉ができます。挽きたては、なんといっても香りがちがいます。手作りをするなら、まずは材料から。金沢大地の有機玄麦とキッチンミルで、安心ですこやかな挽きたて全粒粉生活をはじめてみませんか?
「キッチンミル」のおすすめポイント
ポイント1.石臼部は何年使ってもほとんど摩耗することはありません。
ダイヤモンドに次いで硬いコランダムと、セラミックを焼き固めた石臼を使用しています。日本の伝統的な石臼とは異なり、石と石が直接触れない構造のため、石臼部はほとんど磨耗せず、目立ての必要がありません。石が紛れ込んでも太刀打ちできるほど強靭です。そのため、お手入れがとても簡単で、末永くお使いいただけます。
ポイント2.1年間の保証期間内は無償修理
金沢大地はドイツKoMo社の正規販売パートナーです。そのため、1年間の保証期間内は無償で修理することが可能です。また、保証期間を過ぎた場合であっても、有償となりますが、部品を取り寄せて修理いたします。
「キッチンミル」の挽き立て小麦粉
挽きたて小麦粉には豊かな香りがあります。 挽きたて豆のコーヒーがおいしいように、穀物も挽きたては香りがまったく違います。パンやケーキにして焼けば、豊かで力強い風味となって立ちのぼります。小麦粉は製粉後、時間とともに酸化が進みます。その点、「キッチンミル」で、その都度必要なだけ玄麦を挽けば、新鮮な小麦を味わえます。
穀物の栄養をまるごと
表皮(ふすま)や胚芽を取り除かない全粒粉。 完全粉とも呼ばれるように、全粒粉はふすま部分の食物繊維や胚芽のビタミンやミネラルなど小麦まるごとの栄養素を含んでいます。 「キッチンミル」なら玄麦を挽けば全粒粉。 ふすまと末粉を取り除く場合は、篩(ふるい)を使って分離する事ができます。 また、市販の小麦粉はほとんどがブレンド粉ですから、 キッチンミルなら品種ごとの特徴を楽しむことができます。
石臼で必要なだけ挽くから新鮮!香りも豊かです
ドイツ・コモ社の「キッチンミル」はナチュラルなブナ材のシンプルなデザイン。
伝統的な釜焼の石を業務用モーターで回転させるパワフルな構造です。
スイッチを押して玄麦を入れるだけで、1分間に約100gの全粒粉ができます。
小麦の他に、大麦、ライ麦、蕎麦、雑穀、玄米などを挽くことができます。
また、石臼挽きは、一般的なロール挽き(鉄製)と比べて、製粉時に小麦に触れる部分の温度が低く、小麦の風味が損なわれにくいと言われています
よくあるお問い合わせ
- <作り方>
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- ライ麦粒とシロガネ玄麦をキッチンミルで挽く
- 1.に残りの材料を加え、全ての材料がなじむまで捏ねまとめる
- まとめた生地にラップをし、室温で30分間休ませる
- 5mm程度の厚さに伸ばし、型抜きする
- あらかじめ150℃に予熱しておいたオーブンで、30分焼き完成
- <材料>(直径約25cm4枚分)
洋ナシとブルーチーズのガレット
- <作り方>
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- むき実そばをキッチンミルで挽き、そば粉を作る
- そば粉に、塩、卵を入れ、ボロボロになるまで混ぜる
- 2. に豆乳を少しずつ加えて練りながら混ぜていく
- なめらかに混ざったらラップを掛けて冷蔵庫で1時間寝かせる
- 生地を寝かせている間に、トースターで1分間ローストしたくるみをざく切りにし、洋ナシを5mm幅くらいにスライスする
- フライパンを熱しバターをひく
- フライパンを濡れぶきんにあて、温度を冷まし安定させる。フライパンをコンロに戻し、お玉一杯分の生地を流し入れ、フライパンに広げる
- 中火で30秒ほど焼いて、表面が固まりかけたら洋ナシを並べ、ブルーチーズを散らし、四隅を内側に折りたたむ
- 盛りつけ、くるみを散らし完成
- <材料>(4人分)
全粒粉の豆乳シチュー
- <作り方>
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- 準備 薄力粉用シロガネコムギ玄麦をミルで挽く
- 玉ねぎをみじん切りにし、オリーブオイルを熱した鍋にいれ、弱火でじっくり茶色く色づくまで炒める
- にんじんは一口大に乱切り、蓮根は8mm程度のいちょう切りにカットし、1.の鍋にいれ、炒める。油が回ったらコリアンダーパウダーをいれ、さらに炒める
- 2.の鍋に水とローリエをいれ、にんじんと蓮根が柔らかくなるまで煮る
- じゃがいもと椎茸を8mm厚にスライス、ほうれん草を4cm長にカット。3.の根菜がやっと串が刺さる程度に煮えたら、カットしたじゃがいも、椎茸、ほうれん草のくき部分をいれ、さらに酒かす、米飴を入れ、野菜がすべて柔らかくなるまで煮る
- 5.を熱したフライパンにいれ、弱火にかける。絶えずへらでかき混ぜる。とろみがついてきたら、4.の煮汁をひとすくいいれ、混ぜてから鍋に戻しいれ、さらによく混ぜる
- 塩、こしょうで味を調える。ほうれん草の葉の部分をいれ、一呼吸煮てできあがり
- <材料>(直径約8センチ10枚分 )
シロガネコムギのりんごマフィン
- <作り方>
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- りんごの皮を剥いて一口大に切り、きび砂糖と水とともに鍋に入れて中火にかける。りんごがやわらかくなり水気がなくなるまで煮てから、冷ましておく
- シロガネ玄麦をキッチンミルで挽き、全粒粉を作る
- 2. で作った全粒粉に薄力粉、アーモンドプードル、シナモンをふるってボールに入れる
- メープルシロップ、豆乳、オリーブ油を加え、粉気がなくなるまで混ぜる
- 1. のりんごを加えてさっくりと混ぜる
- マフィン型に等分に生地を入れ、180度に余熱したオーブンで22分焼いて完成
- <材料>(直径約8センチ10枚分)
全粒粉のオートミールクッキー
- <作り方>
-
- シロガネ玄麦をキッチンミルで挽き、全粒粉を作る。
- シロガネ全粒粉に、オートミール、てんさい糖、レーズン、塩、ベーキングパウダー、なたね油をボウルに入れて混ぜる
- 2. に豆乳を加え、全体に行きわたるように混ぜる
- ひとかたまりになった生地を、ゴルフボール大10個に分ける
- 天板にオーブンシートを敷き、3. を厚さ1センチほどに押しつぶしながら並べる
- 160℃のオーブンで20分焼いて完成
- <ひとこと>
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レーズンたっぷりのオーツ麦のクッキーです。外側は全粒粉とオートミールでザックザク。中はレーズンでしっとり。二つの食感が楽しいクッキーです。
動物性の材料を一切使わずに仕上げました。てんさい糖の代わりにメープルシュガーを使用するのもお勧めです。
今すぐ使える薫り高い石臼挽きたて小麦粉のご紹介
挽きたて小麦を農場から食卓へ
金沢大地の「石臼挽き小麦粉シリーズ」は、ドイツ製の石臼を使用して自社で製粉しています。鉄製のロール挽きに比べて、石臼は低温で製粉するため、小麦本来の味や風味を最大限に引き出すことができます。金沢大地では挽きたての小麦粉を新鮮なままに真空包装してお届けします。挽きたての珈琲豆の香りが豊かであるように、小麦も挽きたての香りは格別です。農場からお届けする安心・新鮮小麦粉でお楽しみください。
金沢大地取材レポート
2011年、まだ肌寒さの残る4月上旬、日本三大霊山のひとつ白山を越えて石川県は金沢へ、国産の有機穀物でおなじみの「金沢大地」を訪れました。代表の井村辰次郎氏のお話から、現在に至るまでの歩み、そしてこれからの展望をレポートいたします。
- ■はじまりの豆腐作り
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井村氏が先代から農業を継いだ際、それまでの方法をすべて有機に変えるとともに、新たに始めたのが有機大豆を使った豆腐作りでした。「有機穀物の生産者さんがなぜ豆腐作りを?」と疑問に思うところですが、井村氏は有機での穀物栽培を続けていくために加工品の必要性を感じていました。なぜなら、同じ有機栽培でも米や青果であれば、○○さんのお米、野菜、といったふうに、食べる人に生産者の顔が見えやすいのですが、小麦や大豆などは加工品の原料として使われることがほとんどで、食べる人に生産者の顔が見えにくいのです。
食べる人にとって生産者の顔が見えることが大切なのはもちろんですが、生産者にとっても食べる人の顔が見えるということは大切です。それは生産者のモチベーションになります。どういう気持ちで、誰に食べさせるために作物を育てるのかということは、本当に大切なのです。それが疎かになると、作るものや食べる人への愛が途絶え、魂が途絶え、無責任な状態になってしまう、と井村氏はいいます。双方向のトレーサビリティーが不可欠なのです。
有機大豆や有機小麦の生産者として日本一になれたとしても、食べる人が「これは井村さんの大豆だ」といって喜んで食べてくれる関係性がないとだめだと、そのためには加工品を作ることが必要だと、そうしてはじまった豆腐作り。原料はもちろん有機大豆で、消泡剤は使わず、石川県の能登半島にある揚げ浜塩田というところのニガリを使ったこだわりの豆腐でした。
しかし、はじめはまったくの素人状態、豆腐が固まらないなど苦労の連続でした。当然ながら農業を休むわけにもいかないので、早いときには朝の3時に起きて豆腐を作り、7時頃から畑に出るという大変な生活が続きました。それでも、少量ながら豆腐ができるようになり、「井村さんのところの豆腐はおいしい」という声が聞けたときには、苦労が報われるほど嬉しかったそうです。
現在たくさんの方にご愛用いただいている金沢大地の加工品たちは、そんな情熱の豆腐作りからはじまりました。
- ■有機JAS法について
井村氏が有機栽培をはじめた頃、日本にはまだ有機の基準がなく、ほとんど無秩序な状態でした。そこで、オーガニックの発祥ともいえるヨーロッパの基準について調べることになります。今とは違い情報が限られていたため、辞書を片手にインターネットで片端から文献にあたっていくという根気のいる作業でしたが、「若かったですし、エネルギーがありましたから」と井村氏は当時を振り返ります。
調べを進めた結果、客観的な基準があることと、第三者が認証していること、このふたつが重要だという考えに至り、IFOME基準に基づいたJONAの認証を取得します。その翌年に日本でもJAS法が制定されたのですが、もともとIFOMEの基準が高かったため、JAS法の施行とともにスムースに有機JAS認証を取得することができたそうです。世間が動き出すより前に、早くから有機認証の必要性を感じ、即行動に移す。その信念ある姿勢が、たくさんの方に愛される、今の金沢大地を作っているのだと感じます
- ■家庭内自給率向上作戦
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日本の食糧自給率が問題となっているのはご存じの通りですが、ある日井村氏は、家庭内自給率を出してみようと思い立ちました。米も味噌も豆腐も自家製の生産者なのだから、かなりの率になるかと思いきや、60%を切るぐらいにとどまったそうです(それでも高い方ですが・・・)。
理由は簡単、井村氏と息子さんは朝もご飯派ですが、実は奥さんと娘さんはパンが大好きで、朝もパン派。パンにとどまらず、パスタやピザやクッキー、昔ながらのそうめんやおやきですら原料は小麦・・・日本の食卓には小麦製品があふれているのです。そこで井村氏は、小麦というのは穀物生産者にとって絶対に必要な時代だと感じ、有機国産小麦の栽培を決めました。金沢大地の有機国産小麦のきっかけのひとつは、家庭内自給率向上のためだったのです。ところが、いざパンの原料に使える日本の小麦を調べはじめると、ほとんど良いものがなく、いろいろな所で相談してみてもそもそも無理だという答え。それでもあきらめず、まずは外国の小麦から試してみようと、日本で一般的だったオーストラリアや北米の小麦を栽培してみたのですが、なかなか冬を越すことができず、やっと冬を越したものもタンパクの割合が低く、製品としては成り立たないという結果に終わりました。
そこで万事休すかと思われたのですが、その頃ようやく日本品種の小麦が出はじめ、農林61号という種類を使って国産小麦の栽培を実現することができたそうです。
- ■「井村さんの有機小麦」が世に出るまで
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やっと収穫できた国産有機小麦だったのですが、大きな問題がありました。収穫した小麦の製粉を引き受けてくれるところがないのです。
製粉業界というのは早くに統合がはじまり、昔は小さな製粉会社がたくさんあったものの、今は大規模な製粉会社しか存在せず、地方の会社であっても、製粉には1回120トン程度の原料が必要です。小麦は年に4回の製粉を行うので、全部で480トンもの原料が必要となります。これは農協クラスの量。井村氏が収穫した小麦は7トンほどで、大規模な製粉では、途中でどこに行ったか分からなくなる程度の量だったそうです。
そのときは奇跡的に小規模の製粉を引き受けてくれる会社が見つかったのですが、今度は、価格という壁に突き当たりました。最低限のコストで出した価格ですら、買ってもらえる価格にはほど遠く・・・最終的には、小麦と大豆をセットで買い取ってくれるお醤油屋さんが現れ、無事行き先が見つかりました。しかし井村氏としては、カロリーベースの自給率に貢献するため、どうしてもパン作りに使える国産有機小麦を世に出したいという想いがありました。そこで今度は、一般に流通している有機小麦の販売価格を基準にして、コスト度外視で価格を設定しました。たとえ損益が出たとしても、まずは市場を作るという決意、食べて評価してもらうことが先決、という想いだったそうです。
国産有機小麦の販売を通じて、有機穀物の市場を作るためには、ある程度の規模が必要だと痛感した井村氏は、規模拡大のため耕作放棄地の開墾にも乗り出します。周囲の人々に驚かれるほどのスピードで進めていき、特に最初の10年間は、年に10ヘクタールほども開拓を進めていったそうです。耕作放棄地を開墾するという取り組みは今も続いており、金沢大地の可能性はどんどん広がっています。
- ■有機穀物が広がらないワケ
国産有機小麦の生産が軌道に乗りはじめ、販売先が広がるにつけ、また違った問題が浮上してきました。それは、供給の不安定さです。
小麦というのは収量が非常に不安定で、豊作だと思っていた年でも、収穫の直前に大雨が降ってだめになるということもあります。慣行栽培ですらそうであり、有機栽培だとなおさら。井村氏も、日本はお米の国だとつくづく痛感したそうです。国産の有機穀物は他で代用がきくというものではないため、不作の年には取り合いになることも少なくないそうです。小麦をはじめ、国産の有機穀物というバリューの一方には、そういったプレッシャーも存在しています。
また、日本の現状では、有機小麦単体で生計を立てることは非常に難しく、よほど好きでやるか、趣味でやるかといった世界だそうです。井村氏の場合は、小麦以外の生産物や加工品なども扱い、生活提案として、小麦などの国産有機穀物を打ち出すことでその点をクリアしています。国産有機小麦を求める人というのは、「地ぱん」でおなじみの銀嶺食品 大橋雄二社長のように、夢をもって仕事に取り組んでいる人たちが多く、そういった人たちの話を聞くのがやはり嬉しく、モチベーションにつながるそうです。愛情のこもった作物たちだからこそ、夢の一部になれるのだろうなと思います。
- ■有機のこれから
有機、オーガニックといった言葉は、昔に比べるとずいぶん知名度が上がってきたとはいえ、その需要はまだ一部の層にとどまり、多くの人が親しみを持って購入するといった段階には至っていません。生産者や販売者側の努力はもちろんですが、前述した供給の不安定さのように、今後は購入する側の理解も仰ぎ、双方が協力することが必要であるように思います。
井村氏の取り組みのひとつとして、小麦を原麦で提供し、自宅でひいてもらえば、もっと低価格での販売が実現するかもしれない、という考えがありました。ヨーロッパでは、家庭で小麦をひくというのは珍しくないようで、早速家庭用の石臼を輸入できないか調べはじめたところ、それがきっかけで、ヨーロッパのオーガニックに関わる人たちとのコンタクトができたそうです。ヨーロッパにおけるオーガニックの浸透度は、日本より随分進んでおり、オーガニックの生産者というだけでフィロソフィーが築けてしまいます。そういった気づきが、井村氏の次なるアクションにつながっていっています。
- ■「穀屋(たなつや)」を案内してもらいました
「穀屋」と書いて「たなつや」。金沢大地の商品をはじめとした、有機栽培の穀物専門店です。量り売りや挽き売りもしている、懐かしく新しい穀物屋さん。穀物は古くは「たなつもの」と呼ばれ、人々の生命の源となり、神事などにも使われてきました。万の穀物が暮らしの中心となるように・・・「たなつや」という店名には、そんな願いが込められています。
「たなつや」は、「近江町市場」という鮮魚や青果など180ほどのお店が集まる賑やかな商店街の中にあります。ここは、金沢の暮らしの中心であり、「金沢市民の台所」ともいわれています。そんな素敵なお店に案内してもらいました!
- 「たなつや」店舗情報
- 〒920-0905 石川県金沢市上近江町50 近江町市場内
営業時間 AM9:00~PM6:00(年始以外無休)
電話番号 076-255-1211