生命あふれる田んぼのお米

生命あふれる田んぼのお米

農薬・化学肥料不使用。雑草と競い合って生き抜いた、とにかく元気なお米です!


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■小野寺さんより、皆さまへの感謝と決意に満ちたメッセージが届きました。

【新米あいさつ】

本年度の新米をご購入いただきまして、誠にありがとうございます。社員ならびに生産者一同、心より、御礼申し上げます。
被災地へのご支援、震災被害へのご理解、放射能に対する冷静なご判断、私たちへの変わらぬご厚誼…。そのいずれのお気持ちで(あるいは全てのお気持ちで)、この新米をお手に取って頂けたのでしょうか。そのことを思うと何とも言えない感情がこみ上げてきて、喉がぐっと苦しくなり、まぶたが熱くなります。
今年の新米を食べて下さる方は、間違いなく、私たちにとって特別な、とても大切なお客様です。そんな皆様にどのようなご挨拶を差し上げるべきか、うまく伝えられる自信がなく、頭を抱える次第です。
そんな思いとは裏腹に、田んぼでは病気一つない黄金色した美しい稲穂が、重そうに首を垂れて、風に吹かれています。その様子は、震災、放射能、台風被害と嵐のような世情の中で必死に舵をとる私たちに、「ただのー現象さ」と突き放しているような美しさにも見え、あるいは「私たちを食べてしっかり頑張りなさい」と励ましているような温かさにも見えます。

毎年米を作る中で、同じ年はーつとしてありません。しかし、今年が特別な年であったことは、まぎれもない事実でありました。 
大震災の折には、皆々様からたくさんの激励やお見舞いやご支援を賜りました。皆様の心に触れ、力強い絆を実感し、あの最中、私たちはまさしく「生きる力」を皆様からいただいたのでした。社員は、地震で家が倒壊した者も津波で家が浸水した者も皆、震災当初から出社し、業務の復旧に全力を注ぎました。まるで賽の河原のように、余震で復旧作業がふりだしに戻ることもありましたが、皆、折れる心を支えあい、よく家庭を守り家族を守りながら、常に己の職務を全うしてくれました。
放射能対策については嫁のひかるが理系の才をいかんなく発揮し、震災当初から様々な文献を調べ上げ毎晩のように討論し、震災後たったひと月で、農産物の中長期的な放射能汚染経路の予測と作付方針の決定、放射性セシウムに対応した耕種的対策と肥料設計およびモニタリング計画、天然除染資材の手配、農家や企業向けの勉強会資料まで仕上げてくれました。長男の皇貴は小野寺家を支えながらも組織全体の円滑な運営に専念し、社員のガソリンの確保に奔走しつつ、迅速な復旧のためのフォローを一手に引き受けてくれました。そして最後に、作付方針が決まりつつあるものの、苛烈な震災被害のさなかで労働負担も金銭負担もある放射能対策に生産者がついてきてくれるだろうかと不安を感じていたところ、生産者から「何か対策があるなら講じたい」「勉強会をしてほしい」という声があった時に、「よし、このチームならきっと乗り越えられる」と確信した次第です。
私は4月17日から勉強会を開始し、雁音の全ての生産者に、関口一番「自分の田んぼが汚染されたと考えてくれ」と脅かしました。その頃はすでに、有機JASの認証団体や不耕起の会など様々な団体と綿密な情報交換を行っており、国の放射能の発表以外にも自分たちの地域が十分安全であることは確認できていました。しかし、あらゆるリスクを可能な限り排除し、「食の安全性j を最優先するためには、消費者以上にシビアな認識と作り手としての厳しくストイックな姿勢が何より重要でありました。我々は、鬼が乗り移ったかのような厳しい姿勢で、今年の米作りを開始しました。
その一方で、宮城県内外のほとんどの農家は、いつもどおりの米作りにいそしんでいました。震災による苛烈な生死のやりとり、食料の不足と生活の窮乏、そしてあらゆる産業の混乱の中で、農業だけが唯一、輝くような健全性を保っていました。 だからこそ、どの農家も「米が作れるだけありがたい」と農業にせっせと励み、そうすることで震災のストレスを消化しながら、かつての日常を少しでも取り戻そうとしていました《放射能さえなければ、それでよかったはずでした。そんな風に、震災地では、放射能に対する認識に大きな齟齬が生じていました。

目下の復旧と放射能対策、そして春の農作業に追われた3月と4月が過ぎ、北風が南風に変わる5月から夏にかけては、「原発で再び大きな爆発が起きれば、今年の米はもう無理かもしれない」と考えることもしばしばでした。私たちがどれだけ対策を講じ最善を尽くしても、それを上回るのが天命というものです。私たちは自分たちのプライドに懸けて、安全性に不安のあるものを皆さんに提供する訳にいかないのです。万が一、そのようなことがあった場合のために、北海道など他県の農地価格を調べたりと準備もしておりました。しかし、結果として難を逃れ、今このように、私たちは新米の出荷を迎えることができました。それは決して、単なる行き当たりばったりの幸運ではなく、原発で作業された方々を始め、たくさんの人々の粘り強い不断の努力の結果であったと思います。
しかし一方で、世間では様々な農産物に放射能が確認され、「対策できなかった現状」と「対策の不備」が一緒くたになって日本を襲いました。汚染を常に見極めながら粛々と対策を講じてきた私たちも、宮城県でひとくくりにされて和牛の出荷が止められました。私たちは、あまりにも予想通りの展開に呆れかえると同時に、専門家たち(研究者、行政、官僚、普及所、農協、マスコミ、その他企業団体等)がここまで無力なのかと呆然としました。農家が、消費者が、国が、地方自治体が、誰もが正しくリスクを負わず、誰かを当てにして、誰かのせいにして相手を誹誘中傷する世論の氾濫の中で、私たちはただただ唖然としました。粛々と自分のなすべきことをなし、自分たちだけが「生き残る」ことに果たして何の意味があったのか、とも考えました。それは、2万人という犠牲者の前で自分たち家族が助かったことに「良かった」と言えない、自分たちばかり助かって申し訳ないという気持ちにも似た、何とも言えない無力感でもありました。

雨不足の夏が過ぎると、日本は台風被害に襲われました。猛烈な台風は近畿・東海を始め全国各地に甚大な被害をもたらし、「日本に災害の起きない場所などない」ことを、日本中に知らしめました。原爆被爆地である広島や長崎を始め、阪神淡路大震災のあった関西、猛烈な台風被害に遭った東海、新潟中越地震のあった北陸、東日本大震災で放射能や計画停電と共に被災した関東、そして日本全国からの義援金とたくさんのボランティアの方々。国内に、災害に共感できない地域などないのではないでしょうか。様々な災害をともに分かち合い、かつての被災者が新たな被災者を助け支え合う。それが、災害大国日本の姿なのかもしれません。
そんな災害の中で、我々が最も痛感したことは、「まず自分の身は自分で守るしかない」ということでした。マニュアルもシステムも、それを上回る災害の前には極めて無意味であり、そのような状況の中で自分を助けてくれたのは、まさに「自分自身の生き方」そのものでした。震災時、これまで培ってきた循環型農業の理念や技術や人間関係は、大いに私たちを助けてくれました。有機農業の技術と科学分析力は放射能対策に大いに役立ち、家畜の飼料の自給化と耕畜の連携は家畜の命を守りました(深刻な飼料不足で宮城県の各地で大量の家畜が殺処分されました)。様々な農業体験イベントで活躍してきた「もみ殻かまど」によって停電時でも美味しいご飯を毎日炊くことができ、畑の野菜や自分の家の牛肉で食に困ることはありませんでした。消費者の皆様の温かいご支援でいち早い復旧が出来、生産者の信頼関係のもと、苦難の中でも盤石な米作りが出来ました。これまで大切に積み上げてきた一つ一つが大きな力となって、まるで奇跡のように自分たちを救いあげてくれたことに、大変な感謝と感動を覚えずにはいられません。今年のお米は、人と人との絆、そして自然と人との絆が「結実」したような、そんな気がいたします。

これまで私は常々、都会で大きな災害が起こった時に、行き場を失った皆さんの受け皿となれるような農業がしたいと考えてやってまいりました。今回、思いもよらず、私たち自身が千年に一度の大災害の被害者となってしまったわけですが、その経験は、今後起こるであろう災害にも必ず役立てるだろうと思っています。そして、皆さんがお困りの際には真っ先に思い出して頼って頂けるような、そんな存在になりたいと考えています。 震災から7カ月、ようやく初めての米の収穫と出荷を迎え、被災地の農家は、まさにやっと復興の一歩を踏み出しました。小野寺家でも、全壊したライスセンターがようやく全機復旧し、稲刈りが始まっています。今年のお米は、とても実りの良い、しっかりと充実したよいお米となっています。「不検出だから食べて下さい」などと不名誉なことは言いません。私たちの気持ちをしっかりと味わっていただけるよう、最善を尽くしたお米です。ご家族でお腹いっぱい召し上がってください。私たちも、皆さんのお気持ちに心から感謝し、今、自分が支えられているという力強い実感を今度は皆様にお返しできるよう、スタッフ一同、一丸となって努力してまいります。 今後とも、末永くお付き合いくださいますよう心よりお願い申し上げます。

 

平成23年10月

雁音農産開発有限会社
代表取締役 小野寺實彦



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