創森社刊 炭の力 2001年3月号に掲載されました

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創森社刊 炭の力 2001年3月号に弊社記事が掲載されました


ネット通販から実店舗をもつ 炭と木酢液の地道な販売で夢を叶えた!
愛と叡智の紀州備長炭研究会 「京都太秦しぜんむら」

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炭の力2001年3月号

創森社刊 炭の力 2001年3月号掲載

中川信男さん(30)は、子供の病気をきっかけに炭と木酢液に出合い、「愛」と「叡智」の二人の子供の名前をつけた通 販サイトを開いた。そして、ついに脱サラして店をもつことができた。ネット販売に賭けてきた情熱、販売のきめ細かな対応、月に数百件も発送するまでになった成功の秘訣を探る。

ネット通販から実店舗をもつ炭と木酢液の地道な販売で夢を叶えた!
愛と叡智の紀州備長炭研究会 「京都太秦しぜんむら」


太秦駅のホームに店がある

ホームページを見たとき、「この人に会いたい」と思った。
「愛と叡智の紀州備長炭研究会」には、子供を抱いたウェブマスターの写真がトップページに出ている。炭に関してこれだけの情報をきっちりと発信しているのは、どんな人なのだろう。店をオープンしたそうで、地図も掲載されている。そうだ、この人に会いに行こう。

そして、向かった先は、京都の四条大宮から出ている京福電鉄嵐山線太秦駅。ホームに電車がゆっくりと到着する。あった!全国でここだけという駅のホームにある店舗兼住宅である。

今回は、連絡なしに突然訪問した。店をオープンしたばかりなので、とりあえず話をきいてから考えようと思ったのだ。しかし、店主中川信男さんの「いらっしゃい」の声を聞いたとたんに記事にしようと決めた。

開店早々で看板もまだ掲げていない。店内は発注した陳列棚も揃わず、ガランとしていたが、やがては客で賑わってくる光景が浮かぶような気がした。長年の知己のように親しみを込めて、中川さんがこれまでのいきさつを話し始める。

副業に将来の夢を託す

「私、結婚して突然日本を出て東南アジアを二年八ヵ月放浪しました。興味があった東洋医学やタイ式マッサージを学びながらの旅でしたが、インドで長女の愛が産まれ、帰国しました。一年間タクシーの運転手のかたわら、整体や健康相談もしていたのですが、たまたま健康食品の会社から漢方薬局の責任者として声をかけられました」

着任当時は月に100万円ほどの売上げだったのを中川さんが担当した1年半で月300万円と3倍に月商を増やした。自然療法に関して詳しい知識をもち、懇切丁寧に対応したのが好成績につながったのである。
長女がアトピー性皮膚炎であったため、その対策を探しているうちに、炭のよさを知った。フリーマーケットでは、趣味と実益を兼ねて炭の販売もしていた。

だが、偶然の出会いは必然だったのか。勤務先に出入りしている医者から、和歌山県の炭やき師、玉井元次さんを紹介してもらった。玉井さんとのやりとりは今も忘れられない。
「炭をやくことにかけては自信がある。だけど、売ってもらう人がいないと、こんな商売はなりたたへんなあ」と玉井さんがポツリ。
「ほな、私が売りますわ」。そこで、勤務先にも許可を得て、1999年11月インターネットでの販売を開始したのである。

やるならば徹底的にやろう。そう心に決めて、パソコンも3ヵ月間で必死にホームページの作り方を覚えた。

キーボードくらいはなんとか打てたのですが、遊びでパソコンにさわるのと、私みたいに、生きるためにパソコンを覚えるのでは気迫が違いますよね。会社から夜遅く帰宅した後、注文のメールが入っているかを確認し、発送するという日々でした。

ホームページを開いたきっかけは、母が体調を崩し仕事をやめざるをえなくなったので、なんとか楽にしてあげたいと思ったからです。私の給料も手取り15万円以下だったので、せめて母の給料分と自分の手間賃をあわせ、10万円もあればと期待していました」

それで、最初の注文は?ときくと、忘れもしない12月16日ですと言って、注文書を見せてくれた。「1ヵ月たち、ようやく注文が入ったときは興奮しました(笑)。1万円でした。その次の注文はまた間があいて、1月23日、風呂用備長炭など計6200円でした」

よくホームページを開設しても、思ったほどには売れないという話を聞く。インターネット通販で売れる秘訣は、送料をかけてもほしいと思わせるだけの商品を扱うことである。どこにも売っていないか、またはどこよりも安い商品であるか。炭は健康志向にのってブームになっているとはいえ、納得して購入してもらうには、説明が必要な商品である。

中川さんは自然療法的な面から身体によいものはないかと探していたら炭と木酢液に行き着いた。いわば、これまでの炭の販売者とは炭と出合ったプロセスが違うので、よかったのではないかと分析する。 燃料としての炭よりも、健康な生活を送るために、炭をいかにしてとりこんでいくか、その情報量ではどこにも負けないページをめざした。そして、「炭や木酢液は魔法の特効薬ではない。それだけでは治らないので、食べもの、生活習慣から見直していきましょうよ」という姿勢を打ち出し、「炭や木酢液をパーツ(部分)として取り込む」というアプローチで、様々な工夫を提案したのである。

また、実際に使ってみた人の体験談に謝礼を出し、ホームページにも掲載することにした。たとえば木酢液では、トイレ掃除に用いて効果があったこと、天井裏にまいてネズミがこなくなったこと、入浴剤として用いて皮膚病などがどう改善したかなどと逐一報告が寄せられた。 薬事法という厚い壁がある中、炭と木酢液のアピールを精一杯している。

小さな、小さな積み重ねがやがて実を結び始めた。「こんなものがある」「当社製品を扱ってほしい」と取扱商品が増えるにつれて、注文も増えていった。 中川さんからは、「出会いに感謝しています」の言葉が何度も発せられたが、ホームページに来訪し、注文をリピートしてくれる客に対しても、出会ったことがないのにと感謝の気持ちでいっぱいだそうだ。かくて、初めの月に売上げが1万円だったサイトが、一年経過後月に250万円前後を売り上げるサイトになった。そして、ついに会社を退職し、2000年11月、店をもつことができたのである。

店に関しても、嵯峨野の物件にあわや決めようとしていたときに不動産会社より電話があり、店を見に来て一目惚れしたそうだ。しかも「幸運」としか言いようがないほど家賃も手ごろ。一階の手前が店舗、奥が自宅、そして二階が倉庫になっている。この店がゆきえ夫人とともに築くこれからの砦になる。

ネット通販成功のノウハウ

「これぐらいの取扱量になれば、生産者に値切るということが出てきますよね。でも、私は一切言い値で購入し値切らないのがポリシーです。こうして商売させていただくからには、生産者や製造元を大事にしたい。よい製品を回してもらうには、値切らないことです。だからこそ良い会社とのご縁が広がっていくのだと思っています。  今、本当によいものを扱っているのだという自負があります。私の場合は、炭に付加価値をつけて販売するというよりも、ひと手間もふた手間もかけたものを継続的に安く販売して炭のよさを広く知らしめていきたいのです。これからは、窯元を買い上げて、卸も小売もやってみたい」と夢が広がる。 価格が安いため、業者からの注文もあり、卸的な役割も果たしているという。また、他社製品でもOEMの形で自社ブランドを作ってもらうという商談も可能になってきた。

ホームページを通じて、木酢液がよく売れていて、体験談も多く寄せられている。逆に、炭は意外にリピートが少ないそうだ。

好評なのが玄米を炭化させて微粉末にした遠赤外線焙煎玄米微粉末「ブラックジンガー」。これにお湯を注ぐと、コーヒーのような味わいになる。 さらに、竹炭関連製品となるベッドシーツ。一万円以上の製品が多い中、三六〇〇円という破格の価格が受けて、注文が多い。
こうした製品を使用した人たちがレポートをしてくれるので、それを見た人たちが共感して購入するようである。 さらには、炭の製品ではないが、木酢液と相性のよいアレッポの石鹸や粘土の化粧品、ホホバオイルなど、話題になっているわりには入手しにくい製品を取り扱っている。使用者の相談にもホームページを通じて丁寧に対応しているので、その姿勢に好感がもたれ、口コミで固定客が広がっている。

肌の具合や健康に関心をもつ人たちがいかに多いことか。こうした製品については、一度注文すればリピートにつながりやすいので、その際に炭や木酢液もあわせて注文するケースが多くなっている。

中川さんがホームページでヒットさせた販売に炭の量り売りがある。始めた当初は、他に見かけなかったが、この量り売りもホームページに掲載した内容もあちこちで模倣された。 「ホームページに関しては早い者勝ち」と意に介さないが、同じ炭であっても他をけなし自社製品だけがよいとする姿勢のページには疑問を感じている。「一定のパイを奪い合ってもしかたがない。みなで炭全体の消費をあげるようにもりたてていけばよいのに」と残念そうだ。

ホームページには「迅速なご注文返信をいたします!」「最速の発送体制で望みます!」「必ずご納得いただけるクレーム対応を致します!」など、ショップとして八つの約束をし、環境問題に配慮して梱包を簡単にしている手順を写真入りで示している。 さらに、定期的にメールマガジンを発行して炭に関して、あるいはお買い得情報などを発信している。送料も全国一律で遠方の人も注文しやすい配慮をしている。木酢液についても品質維持のために他に先駆けて遮光瓶を用いることにした。こうした数々のきめ細かな営業努力が、一年で店をもつまでに成功させたのだろう。

国宝弥勒菩薩像のある広隆寺、近くには太秦映画村など観光客が多い太秦だが、店を開いた当初は道を聞く人が多く、売上げには結びついていないという。だが、店舗と駅のホームが地続きで、しかも注目の炭を扱っている店となれば、話題性は十分だ。 インターネットで注文する人たちにとっても、実店舗があるということは信頼感につながる。

「炭との出合い、そして、インターネットがあったからこそ、貧しいサラリーマンだった私でも店をもつことができた。私は特に若い人たちに、夢と希望を捨てないでと言いたい。自分でよいと信じたものを扱えば売れる。それがたまたま私の場合、炭と木酢液だったのです」

インターネットでは炭製品の販売割合が大半を占めているが、「健康・自然・エコロジー」をテーマに実店舗では炭以外の商品も併用して扱っていきたいという。



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