TomatoBatakeの木の食器 ひとつひとつ手作りの秘密
安全なのはもちろんのこと、使う人が使いやすように考えて作られています
無事に再販できるまでに至りました
まずはTOMATO畑ができた経緯から
TOMATO畑 創業者である田中栄二氏が中国に渡ったのは、日本の木材では当時、普及価格で安全な食器を作る野生木材の入手が難しいと判断したからに過ぎません。
日本では、植林や農業などにより、山林にも農薬や化学肥料がまかれています。実際、樹木はその農薬などを吸い込んでいますので、国産の木材を仕入れ、検査に出しても薬剤が検出されることがあります。さらに、樹木独特のシミなどがあると、売り場で個体差として売れ残る事が多いので一般的には二酸化硫黄等による漂白処理が施される事もあります。
たとえ微量とは言え、発がん性物質である農薬や漂白剤などの薬剤が少しずつ溶出するような食器は使うものではないと考えており、薬剤まみれの製品を作り続けていてはいけないと感じていました。
そのころ、中国の原生林に計画伐採が進められているのを知り、日本での工房を閉め、中国語もできないまま中国へ渡りました。人の手がほとんど入らない原生林を使用しますが、その場所へ行くためには、電車も通っておらず舗装もされていない道を数日かけて車で行くしかありません。
もちろん、原生林だからと勝手に伐採していいはずはなく、中国の林業局管理の元、計画伐採されている推定300年以上の野生林から伐採された木のみを使用できるようになりました。
中国での食器づくりが始まります。
中国・福建省の奥地を製作の拠点にしていますが、まだまだ貧困層が多い地域。
田中氏はこの現地の若者たちを弟子として職人育成を始めました。もちろん、給料を支払いますが、田中氏の理念にあるのは、「桐箱に入った高級な伝統工芸品を作ることではなく、一般家庭でも毎日の食卓に使え、家族分を揃えられる金額の食器」であること。
安い金額設定は買う側にとってはありがたいことなのですが、事業となると、それが正しいとは言い難いこともあります。時には私財を投げ打って給料を支払うこともあり、日本に残っているご家族も決して裕福な生活をしていたわけではなかったようです。
そんな状況の中でも、親身に木製食器製造を指導していき、中国語も上達し、弟子の子どもの名付け親になったりと、まさしく「親方」と呼ばれるほど親しまれるようになった田中氏。そのころには息子の秀樹さんが日本でtomato畑製品の営業をして販路を拡大し、順風満帆に売り上げが伸びてきた矢先に、中国で災害が起こりました。立て直しに入ります
通常TOMATO畑製品は春夏秋冬、1年以上かけて天然乾燥します。その乾燥途中であった木材などが2015年に中国で起こった水害によっ大半が流されてしまいました。
日本では一部しか報道をされていないので、ご存じの方は少ないかと思います。
原料を失ってしまったこと、さらに元々、あまり利益を取っていた訳ではないので、当面の職人たちの給料の支払いなども考えると、「また一からがんばろう!」と簡単に立て直しを計れる状況にはありませんでした。
とは言え、これまで育ててきた職人たちを見捨てることはできず、また職人たちもこのような状況の中、育ててくれた親方の元を離れようとする人もいなかったようです。長年築きあげてきた人と人との信頼関係はそう簡単に流されるものではなかったのす。
二代目 田中秀樹氏
※ここだけの真実の裏話※
実は「tomato畑 完全復活」のお知らせを聞いたのはつい先日。
tomato畑の木製食器は、プレマでも人気の陶器食器「森修焼」との2本柱でした。ご存知の方もいらっしゃるかと思いますが、そのtomato畑が2016年ごろから、お買い物かごで”販売終了”の文字が目立つように。弊社も何度も追加発注の連絡をとりましたが「すみません。供給できません。」の一点張り。もうあきらめて、tomato畑製品を廃盤に・・という判断をせざるを得ない状況になっていました。
そんな中、二代目の田中秀樹氏がつい先日(2017年6月ごろ)、突然「プレマさん。京都本社へ訪問させていただいてもよろしいですか?」と一報が。
代表中川も、私・山崎も「ぜひ!」と大歓迎でお迎えしたところ、熱い胸の内を、お話ししてくださいました。
それは、約2年前に起こった中国での水害。日本では報道もされず、情報も錯綜している状態でしたので、何かしらの事情があるのだろうとは思っていました。製品の供給をやむなく止めなければならない状況は「仕方がない」「イヤ、何とかしてほしい」という思いがごちゃ混ぜのまま、プレマでは無念の販売終了に。
でも、販売終了後も現地と日本を行き来して何とか再製造するまでに至ったそうですが、当時の事や、思う通りに進まない事態でも「tomato畑の製品を待ってくださっている方から、たくさんの激励をいただいたんですよ。だから、早く新作をもっていかないと!と、こうしてご訪問させていただきました。私の母の為にも」と。
お話を聞いて、目頭が熱くなったのを覚えています。(スタッフ:山崎)
YOKOHAMA WOOD by Tomato Batake(横浜ウッド by トマト畑/Tomato畑)へ
元々、TOMATO畑は箱根細工技能師が立ち上げた会社です。その技術は200年以上の歴史を持つ箱根細工、300年以上の歴史を持つ小田原漆器の伝統技術です。そしてその技術の根底にある、素晴らしい循環型産業の在り方、更にはより安全性を確保する最新の技術を使い革新をもって取り入れてきました。
中国での災害で、事業の継続が難しくなってきた今こそ、原点である国内の技工師による木製食器の製造をもう一度考え直してみようと考え改めてみました。
飛騨欅(ひだけやき)の木。 産業廃棄されてしまう切り株を使用しています。
日本の放置山林の安全な木を使用したシリーズとしてブランド名を『YOKOHAMA WOOD by Tomato Batake』としていますが、横浜の木限定というわけではなく、日本の安心できる木を探して使います。その第一弾は飛騨欅(ヒダケヤキ)。
やはり国産の安全な木自体が少ないので、メインは中国産になりますが、こうして国産の原木を探し、技工師たちの協力を得て、製品化が実現できた頃頃には、中国産の原料も少しずつ確保できるようになり、tomato畑製品も再販できるようになりました。
まだまだ原料調達がままならず、既存商品も在庫限りでなくなってしまうものもありますが、tomato畑製品を愛してくださった皆様にまたお届けできると思うと、嬉しい限りです。
安全である証明
商品の特徴 ここをじっくり見てほしい。
かえで箸
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この形状こそ、つかみやすい最大のポイント!
持つ部分は丸みを帯びた四角形状。尖端は角のある四角形状です。こうすることで、持つ部分は優しく触れますが、食材は持ち運びやすくなります。さらに、尖端は細かなギザギザが入っていますので、麺類などもすべることなく食べやすい仕様になっています。
ギザギザを入れても漆塗装をする際に埋まってしまうのでは?と思われがちですが、そのギザギザを残しつつ漆を塗り上げるのが、熟練の職人たちの技量です。既にご愛用頂いている皆様も改めてご覧になってみてください。この細かい仕様こそが使いやすさを大きく向上させる秘訣です。
ディナースプーン
すくう部分の傾斜&薄さが平均的な大人の口の大きさに対して最も使いやすいという事まで長年の研究で割り出しています。食卓の使用頻度としては相当の頻度が想定されますので、本当に細かい点なのですが、究極の使用感を実現したと思っています。
尖端は向けて細く薄くした形状は上から見ても先端の円形が少しだけ尖っている形状になります。この差で、口に入れる&出す動作においてはかなりの体感差が出るのを感じて頂けるはずです。
首部分をより内側にシェイプしてみました。
この点は使用感に直接影響しない部分なのですが、より凛とした美しさを際立たせるために変更しています。もちろん、楓の木の粘性を考慮した上でのシェイプですので、折れやすい等の変化が起きないように少しだけ変更しています。それでもかなり印象が変わりますね。
おたま
シンプルで美しい不変のデザインこそ、私たち工房の発祥技術である箱根細工の技術を使って再現したくて、だからこそ例えば和食器とは真逆の北欧風にも合う→むしろ何にでも楽しめて、コーディネートは無限大!
というシンプルで美しい木の食器の1つの楽しみ方を見て頂けたらという意図です。
まずお伝えしたい事は、大きな板材=太い木が必要になる訳です。この矢印のように削り出す訳です。つまり…この四角サイズの木材が必要なんです。
では、300年以上経過した原生林の破棄材、間伐材、環境保護目的の調査木材で太い木がどれだけ入手できるか…ここが1番の未知数なんです。「入った時に作る!」これ以外にありません。現在はただでさえ木材入手が減少していますが、このおたまは一昨年頭に入手した大木を使っています。煮沸後1年以上乾燥させて、やっと…製品化です。
しゃもじとへら
まず素材である木が栗の木であるという事が大きなポイントになります。
栗の木というと・・・昔は電信柱、線路の枕木、水車の素材、家の土台等々に使用されてきた素材なんです。どのように感じましたか?どの用途も耐水性を含め耐久性が高くないと意味をなさない用途ですよね。 ではなぜ栗の木は耐久性が高い素材と言えるのでしょうか?それは繊維の密度が高いからなんです。
製作現場において、この繊維質の密度の高さを体感する事ができます。
製品の形状に細かく
研磨しているシーンです。
この研磨の工程で、例えばお椀等に使用しているナツメの木と比較すると…研磨成形の工程に平均して約8倍の時間がかかります。それだけ密度が高いんです。そして密度が高いだけでは、硬くて割れやすい&折れやすい素材になってしまう可能性もあるのですが、栗の木は繊維に粘りがあるため、よく撓る(しなる)んですね。この点も重要で折れにくい=調理器具に非常に適した木と言えます。もちろん密度が高い分だけ耐水性も耐久性も優れます。
「これだけ優れた素材なら…なんで他の製品も栗の木にしないの?」
これが自然の面白さなんです。万能の素材って原則無いんです。栗の木は確かに食器や調理器具に適した素晴らしい素材です。でも野生の栗の木…あまり太い木が入手できないんです。手に入ったらラッキーです。しかも木が細いから大型の器や、おたまを栗の木で作るのが難しい訳です。
耐久性や耐水性で栗の木は非常に優れていますが、体積の大きな器や弁当箱やおたまのような製品は、太く育ちやすいナツメの木とかで作ってきたという訳ですね。継ぎ接ぎをしないという厳格な製作ルールもあり、天然の木の特徴を活かした製品作りをしています。
また栗素材はタンニンといって渋を自生しやすいんです。これは木が自ら抗菌作用を発揮し続けているのですが、ホルムアルデヒド等の化学処理をしていないためにより顕著に渋の自生を見て頂けます。その作用が主要因で色に変化が現れます。
右が約4年経過した状態
中央が約1年経過した状態
左が作りたての状態
自然の木が発揮するエイジング効果が本当に美しいので、その点も是非楽しんで頂きたいポイントです。
トマト畑食器は化学薬品を使用した処理等も一切しません。結果として、製品になった後も木が自らの力で抗菌作用をだすべくタンニン(渋)を自生するんです。そのタンニンが主な成分として色を濃くしていく訳です。
例えばしゃもじを炊きたてのご飯に入れっぱなし等にしておくと、ご飯が茶色くなる事があります。これがタンニンです。もちろん毒性は無いですし、何より木自体が抗菌作用を発揮している証なんですね。
トマト畑製の全ての製品が、もれなく化学薬品処理をしませんので、この自然の抗菌作用を発揮します。もちろんご家庭でもです。本当に感動しますよね。木自体が自然の力で清潔に保つんです。この自然の作用を殺さずに作る製法こそが安全な製法(400年以上続く煮沸処理による製法)なんです。
ナツメ食育セット
「応量器」というものをご存じでしょうか?
応量器は曹洞宗の禅僧が托鉢の際に持ち歩く道具で、一品一品の量に応じて使うことから「応量器」という名がつきました。その応量器をモチーフにして、いただきますからごちそうさままで、食事を食べることから後片付けまでを習慣づけるように子どもたちが学ぶための食器セットです。
「いただきます」は、料理を作ってくれたお父さんお母さん方だけでなく「(命を)いただきます。」という意味を含んでいます。この食器3つが1つにまとまるのは、命を頂いて体と1つになるという意味です。だから片付けることが重要というのは、日本の美しい文化を教えるためにも必要なことですね。もちろん、大人膳の器セットとして、ご使用いただいたお声も多かったです。
ナツメこども椀
丸くて可愛いですよね?しかし可愛いだけではないんです。この曲線、お子様の手の大きさに関わらず、より手にピタッとなじむ=持ちやすい曲線に仕上がったんです。
どういう事かというと、前作の下腹部にかけて大きく膨らむ形状の方がよりこぼしにくい(倒れにくい)形状になり、安定感が増します。しかし新作の方は側面曲線がなめらかですよね?つまり側面のどこに手を付けてもピタッと持ちやすくなる訳です。
さらに重要なのは、側面をゆるやかに丸くした結果、倒れにくい構造が改悪されてしまったかどうかです。下腹部より下に比重が高くなるように、高台(足部)付近に比重を高く集中させる事により、ちゃんと起き上がります!毎日愛用してくれるお子様、さらにはそれを使って子育てしてくれるお父さん、お母さん、皆様の使用感を想定して何度も試行錯誤しつつ、その時、それ以上はないという素材と技術で開発しています。