知っておきたいシックハウスの常識

深刻な現代病、シックハウスの基礎知識

シックハウスを取り巻く現状

シックハウスに関心はありますか (弊社独自アンケートに基づく集計結果)

シックハウス・シックオフィス・シックスクールについての関心度は?

アンケート結果

比較的新しい建物の不快な臭いが気になることがたまにある (53票/33.8%)
  • 新居への引越やマンション購入の機会にはシックハウスは十分考慮したい。
  • できたばかりのホテルに1泊しただけで軽い頭痛がした。
  • 今はそんなに気になりませんが、子供がいたら かなり気にして考えると思います。
  • どのくらい危険なものかもっと情報を広めてほしい。
  • 化学物質的な特異なにおいは「不快」としか感じませんね。
  • かなり怖いですね。
  • 住環境において大変興味があります。環境汚染についても興味があります。
  • どこか他人事のような状況です。
  • あまり気にはならなかったが、症状を聞くと不安になる。
家族が日中過ごしている場所の空気環境をかなり心配している (38票/24.2%)
  • マンションの24時間換気口から部屋の中へ砂埃や湿気が入ってくるのが不快です。
  • 換気をよくします。
  • 娘が気管支系のアレルギーです。やはり新築マンションが関係してるのか心配です。
  • 有害物質が呼吸で体に入ることが怖いです。
  • 家具に使われている薬剤も気になります。
  • 学校の教室にも入れない子がいるという記事をテレビで見て人事ではないと実感。アポロシリーズやプロッシュを設置し、シックハウス過敏症にならないよう心掛けてます。
  • 気にはなるが、、、、 なかなか。
  • 化学物質過敏しょうの人が気持ちよく暮らせる社会にしなければ。
化学物質的な不快感があって、立ち寄りたくない建物がある (35票/22.3%)
  • 以前アルバイトである建物にいったら、全身真っ赤になったことがありました。
  • 大手の家具販売チェーン店に行く頭痛がします。ホルマリンのせいでしょうか。
  • ひどいホルマリン臭の職場で働かなければならなかった時、不眠症になりました。
  • 新築でなく、古い中古物件を探しました。
  • だれでも安全な建物になるように規制をして欲しい。
  • 新築の大学の研究室でシックハウス症状が続出し、効果的な対策法がほしいです。
  • 100円均一のお店には長居ができません。何も感じない人が羨ましい。
  • 衣食住はやはり天然物が最高です。建築業者さんと施主さんの意識次第ですね。
  • こんなにも有害化学物質が日常に溢れていることが、おかしいのです。
  • 神経症かと思われるほど、シックハウスには私敏感です。
  • 賃貸物件で健康住宅や一坪畑付きが選択肢として選べる社会になればいいですね。
  • 気になり出すとますます不快で苦しくなってきます。
新築・改築予定だが、シックハウスが心配 (1票/0.6%)
  • 主人の両親と二世帯住宅を新築予定です。私は肌が弱いので心配です。
新築・改築後、厳しい住環境を強いられている (0票/0.0%)
効果的なシックハウス対策のおかげで快適環境が実現した (8票/5.1%)
  • シックハウス対策と謳っていてもインチキ商売が多くて腹立たしい。
  • 築浅のアパートに住んで、臭いに絶えられず引っ越したことがあります。怖いです。
あまり気にならない、自分事に思えない (8票/5.1%)
まったく感心なし (10票/6.4%)

知っておきたいシックハウスの常識

改正建築基準法が施行された2003年7月、建築技術者のための実務誌にオーブス岸清美社長ご執筆記事が掲載されました。
課題は山積みであるがゆえに、「シックハウス症候群の原因解明は専門外と言い切らず、空気質改善のための施策と一緒に取り組むべき」とする岸社長の提案は、現場での施工を委ねられる施工業者にいったいどのように受け止められたことでしょうか。

以下の内容は、『電気と工事』の掲載記事の内容を、一般向けにまとめさせていただいたものです。
社会が簡単便利を追求し続けた結果の報いとして、私たちが避けて通れなくなったシックハウスの問題。決して人ごとではなく、身近で深刻なテーマであるという認識を、より深めていただく機会になれば幸いです。

シックハウスとは
シックハウス症候群

私たちがどのような栄養素を摂取するよりも絶対的に必要なものは、呼吸(皮膚呼吸を含む)によって取り込む空気であることを認識する必要性があります。人は呼吸をやめると、数分で死を迎えます。必要不可欠な空気が汚染されるということは、生態システムに悪影響が現れることです。

新築・改築後の建物に住み始めた人々が、突然、さまざまな体調不良を感じて発病することから、「シックハウス症候群」と呼ばれている病があります。症状は人により異なり、全身に多種多様な現れ方をします。

短期的な症状もあれば、長期的に持病となってしまうのもあります。また、今日まで原因不明とされてきた病の中で、新築・改築後の建物に住むようになってから発症したという人が多く報告され、建物が原因であることがわかったものもあります。それらは大抵、初期のうちは建物が原因と気づかない程度の症状であることが多いのです。

一方、「化学物質過敏症」という呼び名で診断される病があります。短期的に大量の化学物質の存在する空間で急性中毒症状が現れ、その後に発病するものです。毒性の高い“ハチ刺され”と同じように、同種の化学物質と接触して刺激を感じる度に症状が再発し、場合によっては症状が治まらなくなることもあります。
ある建物内にいるときだけに症状が現れる場合は、その建物が化学物質に汚染されている空間として「シックハウス」と呼ばれますが、他の条件下で同様の刺激を受けることで症状が再発すれば、それは「化学物質過敏症」ということになります。事実、研究者の報告によると、化学物質過敏症患者の約60%はシックハウスが原因とされています。

「シックハウス症候群」の怖さは、日常生活の中で、危険だとは感じられない微量な化学物質に継続的にさらされることで発症し、気づかぬうちに症状がどんどん悪化していくことにあります。
ただでさえストレス社会に生きる私たちです。多忙が原因の体調不良と考えているうちに、症状が悪化してしまったとの報告も良く聞かれています。

シックハウスの発生原因

では、シックハウスの原因の代表とされ、改正基準法で唯一規制対象となったホルムアルデヒドとはどのような物質なのでしょうか。
有機化合物であるホルムアルデヒドは、人の粘膜に対して非常に刺激性があり、発ガン性のある物質とされています。とはいっても、微量ながらも人の皮膚呼吸や植物の光合成からも放出されている物質です。つまり、ホルムアルデヒドが有害とされるのは、ある空間に一定量以上が含まれることで私たちの健康的な暮らしに悪影響を及ぼしている状況下での話です。たとえわずかであっても住環境に存在することは許されないといった物質では決してありません。
このことを押さえたうえで、シックハウスの二大発生原因を考えてみましょう。

第一の発生原因は、化学物質の多用です。
古来の建材には使われていなかった人工合成化学物質が、新建材に多く使用されています。
木材保存剤・可塑剤・架橋剤・防虫防蟻剤など、製品の統一化と多量生産工程において、耐久性・施工性・意匠性を要求されることにより、その品質の安定性確保から使用され続けてきたものです。現在、これらの化学合成剤はすべて、量生産には不可欠なものになっています。
気温や気圧の変化によって建材が膨潤~乾燥を繰り返すと、これらの化学物質が放散されます。また、紫外線や電位差などの外的ストレスによる建材類の劣化(酸化)現象からもVOC類が放散されます。

第二の発生原因は、各建物の気密性が高まったことです。
省エネルギー対策やライフスタイルの変化により、冷暖房効率の向上を考えて、建物が高気密化されてきました。
昔のように土壁を補修しながら建物を使い、夏は暑くて冬は寒いという生活に戻れば問題は解決します。しかし、利便性を求めて繁栄してきた現代社会においては、住環境をとるか利便性をとるかは難しい選択だという人々も多いことでしょう。化学物質の利便性が私たちを豊かにしてくれたこともまたひとつの事実です。

発生後の対策として推奨されていること

化学合成された人工物は、生体には異物ととらえられます。それらが、粘膜細胞に付着し、血液やリンパ液中を運搬されることで、人の生体システムを狂わせることになっています。
大量の化学合成物による脅威に対し、一般的に推奨されている対策には以下のものがあります。

1.室内空気の質を改善する。
  • 換気を効率よく行ない、汚染物質を排出させる。
  • 汚染物質の吸着効果のあるものを室内に設置する。
  • 空気清浄機を設置し、室内空気質を改善させる。
発生源である建材を処理することでVOC放出を抑制する。
  • 汚染物質の吸着効果のある物質を建材表面に吸着させ放散を抑制する。
  • 建材から放出される有害物質を分解し、無害化させ放散させる。

しかしながらオーブス社は、最も効果が期待できるVOC対策として考慮すべき点を次のように指摘しました。

  • 強制換気では不十分、かつ無駄な電気を使い、省エネルギーに貢献しない
  • 吸着には量的に限界がある
  • 表面をふさいではいけない
    (内部崩壊が進み、表面塗膜が崩れ出すとVOCが大量発生!)
  • 二次汚染が考えられる(二次的にVOC類を放散する)対策剤は不可
  • 建材の素性そのものは変えない
  • すべての建材類に有効である
  • シックハウス症候群の原因解明と、空気質改善のための施策は一緒に取り組むべき
  • 生態系への影響も考えるべき

以上を踏まえて、オーブス社が提案するVOC対策剤として研究・開発して世に送り出したものが、発生源である建材の内部に直接働きかけるエイブル工法なのです。

シックハウスを規制する法律と施工業者の立場

シックハウスを規制する改正基準法の落とし穴

2003年7月に施行された改正建築基準法の、シックハウスに関連するポイントは以下の通りです。

  • ホルムアルデヒドを放散する建材の内装仕上げに使用する面積を制限する。
  • すべての建築物に原則として、機械換気設備の設置を義務づける。
  • 天井裏なども、下地をホルムアルデヒドの硼酸が少ない建材を使用するか、機械換気設備にて換気をする。
  • クロルピリホスを添加した建材の使用を禁止する。

これまでまったくの無法状態だったことを思えば、法改正により社会全体のシックハウス対策が前進したと思われる方もあるかもしれません。
しかしながら、私たちはこの新たな規制を、『ザル状態』と受け止めています。この改正によって守られるのは、消費者の安全で快適な暮らしではなく、建物の建築に対しての責任を負うべき国や施工者の立場なのです。

シックハウス対策をうたっただけの『ザル規制』

私たちが、改正基準法を『ザル規制』と呼ぶ理由をいくつか挙げてみましょう。

1. 規制対象がホルムアルデヒドのみである

国民の健康を管理する厚生労働省が、13種類の揮発性化学物質に対して室内濃度の指針値を定めたにも関わらず、国土交通省が規制するシックハウス対策にはホルムアルデヒドしか挙げられていません。
事実、規制後に建てられた建築物であるにも関わらず、シックハウスやシックスクール、シックオフィスが未だ私たちの健康を脅かしているのは何故でしょう。それは、この規制によって使えなくなった原料を、ホルムアルデヒドを含まない原料に移行するだけで対応を済ませた建材メーカーや、同じく規制対象外の建材に変更して「シックハウス対策済み!」とする施工業者が続出しているからなのです。

2. 建築工法上の制限をしているだけであって、最終的な建物の安全性に触れていない

では唯一の規制対象であるホルムアルデヒドは、確実に排除されているのでしょうか。実際は、「NO!」です。厚生労働省は、安全なホルムアルデヒドの室内濃度を、0.08ppm以下としていますが、この指針はガイドラインに過ぎません。
この指針値をベースにはじき出された数字が、改正建築基準法によって規制されている「建材面積の制限値」なのでしょうが、これとて所詮、計算上の制限にすぎません。施工後にホルムアルデヒドの濃度を測定して、その結果が指針値以下でなければ罰せられるなどという法律ではないのです。

改正建築基準法に基づいた施工であるという説明を、『シックハウス対策は万全だ』と聞き違えてはいけません。
その説明は、『我々は法を守って施工したので役目は果たした』という、保身のための宣言に過ぎません。 食品や衣類を選ぶときのように、あなた自身の判断で家(あるいは施工業者)を選ぶ必要があります。後で誰を訴えたところで取り返しがつかないほどの大きな買い物であるのと同時に、あなたとあなたの大切な家族の健康にダイレクトにつながる極めて重要な選択なのですから。

【参考資料】厚生労働省による化学物質の室内濃度に関する指針値

物質名 指数値 主な発生源 毒性
ホルムアルデヒド 0.1mg/m3(0.08ppm) 接着剤、家具、合板、下地材、防腐剤 粘膜への刺激性、発ガン性
トルエン 0.26mg/m3(0.07ppm) 接着剤、塗料の溶剤、可塑材、家具 皮膚・粘膜への刺激性
キシレン 0.87mg/m3(0.20ppm) 接着剤、塗料の溶剤、可塑材、家具 粘膜への刺激性、神経性への影響
パラジクロロベンゼン 0.24mg/m3(0.04ppm) 防虫剤、芳香剤 発ガン性、肝臓・すい臓への影響
エチルベンゼン 3.8mg/m3(0.88ppm) 接着剤・塗料の溶剤、家具 神経系への影響、発ガン性
スチレン 0.22mg/m3(0.05ppm) 断熱材、畳、各種樹脂・樹脂塗料 粘膜への刺激性、発ガン性
フタル酸ジ-n-ブチル 0.22mg/m3(0.02ppm) 可塑剤、ビニール床シート
(塗料、壁紙、接着剤)
運動失調、麻痺、催奇形性
クロルピリホス 1μg/m3(0.07ppb)
小児1μg/m3(0.007ppb)
防蟻材 下痢、遺伝子毒性
テトラデカン 0.33mg/m3(0.04ppm) 溶剤 皮膚刺激、生殖器への影響
フタル酸ジ-2-エチル
ヘキシル
0.12mg/m3(7.60ppb) 可塑剤(塗料、壁紙、接着剤) 肝臓・生殖器への影響
ダイアジノン 0.29μg/m3(0.02ppb) 防蟻材、農薬 運動失調、麻痺
アセトアルデヒド 48μg/m3(0.03ppm) 接着剤、防腐剤 粘膜への刺激性
フェノブカルブ 33μg/m3(3.8ppb) 殺虫剤、防蟻材 皮膚神経系への影響

※( )内は25℃のときの換算値 /(13物質/2002年2月末現在)

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