Smallest Soup Factoryとの運命の出会い
めくるめくスープの世界を弊社中川が語る
オランダからやってきたSmallest Soup Factoryのスープたち。今までにない出会い、なのに体も心も安心する懐かしさ。弊社スタッフもすっかり夢中になってしまいました。
この味わいを生み出す源にあるものは何なのか、そしてSmallest Soup Factoryと結ばれたご縁について、弊社代表の中川に聞きました。
(インタビュア:経営企画室 河村郁恵)
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はじめに、このスープとの出会いについて教えてください。
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オーガニックスープというもの自体が、そんなにたくさんあるものではないんですよ。オーガニックでかつ保存性のあるスープとなると、ありそうでない。
日本でも病人食のようなものはあるけれども、スープといえるスープで、開けてそのままおいしいってないでしょう。
だからこのスープを見つけた瞬間にハッとしました。しかも試食してみたらおいしい。
そのとき話をしたのが、このスープのレシピを作った、オランダ人のミシェルで、忙しそうにしつつも愉快なお兄さんでした。 -
社長は日頃たくさんの製品を目にすると思うのですが、そのなかでも特別、このスープが目にとまったのはなぜですか。
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それはもう経験と勘ですね。このスープは、まずオランダというのがいいですよね、自由の香りがして(笑)。オランダというのは多民族国家で、合法の範囲が広い国ですが、このスープには実際、多国籍で自由なフィーリングと味があります。
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スープのレシピは、ミシェルさんがいろいろな国を回られてできたものなんですよね。
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彼のスープに対する情熱は一流です。
最初に会社を訪問したときに、嬉々として見せてくれたのが、伊丹十三監督の映画「タンポポ」。 この映画の主題は食に対する情熱です。世界中の映画を知っているわけじゃないけども、たかだか食べ物のことであそこまで映画になっているものってないです。
彼はラーメンが大好きですが、あの世界が好きなんだと思います。食そのものが深い主題になり、しかもマニアのためじゃなくて、大衆的に浸透しているさまが見える。
特に日本人の感覚として、「旨み」というものがあります。その旨みというものに関してミシェルは、すごく研究をする人です。 -
旨みは日本独自のものなのですか。
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他にはないですね。だから今、世界的に日本ブームなんです。そのなかで正しくない日本食っていうのもいっぱいあるけども、本物には叶いません。
多重性のある味というか、旨みという何層にも重なる感覚は、日本人にしかないものすごく深いセンスです。
だからといってこのスープが旨みを追求して作ったのかというとそうではありませんが、ミシェルのベースにはそれがあるわけです。 -
スープという形に意味はあるのでしょうか?
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スープというのは、特にヨーロッパでは、お母さんが愛情込めてコトコト煮込んで作るものです。ラーメンのスープも時間をかけて煮込みますよね。
インドのカレーには煮込むというプロセスがなくて、だいたい30分~1時間でサクッと作るものだけれども、日本人は何時間も何日も煮込んだりします。 -
煮込むというと、魔女のイメージもあります(笑)
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煮込むことで、想念が入り込むということはありますね。ミシェルは、旨みとか煮込むとかいうことに対して、人間の食に対する忘れがたい想念を再現したかったのではないかと思います。
そういうスープですからオーガニックであるというのは当然のことで、オーガニックでない材料は、最初から彼のチョイスにはなかったわけです。
それはプロセスとしてはできるけども、愛情としての調理とは相容れません。私がこの仕事をはじめるときも、一般食品を扱うということはそもそもチョイスのなかにありませんでした。
単なる食品業をやっているわけじゃありません。私はオーガニックという言葉は重要視しませんが、それはオーガニックともいえるし、より人間の本来の食べ物に近い、本来的なものです。 -
オーガニックありきではなく、大切にしたいところを大切にしたらオーガニックしかチョイスがないということですね。
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大量に生産され大量に消費されていくこのまやかしの世の中では、そういった1個1個のプロセスは、科学の実験のように、単にレシピとして分解されがちです。料理というのは有機物を熱反応させて別の物を作るという化学反応の連続だけども、その反応に微妙な差を与えるのが、人間の想いとか勘なんですね。
たとえば、繊維に対してどちらに切っていくかということだけで味は変わります。繊維の向きによって物理的な細胞の破壊度が違うというのもあるし、マクロビオティックでは陰陽という理屈もあります。単に科学で割り切ろうとしても、合理性のあることも非合理なことも含め、実は人間はいろんなことを感覚的にやっているわけで、そういうのが全部集まって料理の味とかになるんです。
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そういう感覚は、日本の伝統に多く残っていると思います。
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日本で家庭の味といえば味噌汁や漬け物などが挙がってきますが、ヨーロッパではそれがスープです。一子相伝のように、お母さんから代々受け継いだものです。それは家で作られることが理想ではあるけれども、忙しい毎日のなかで、オーガニックの素材だけを使って時間をかけて手作りするというのはなかなか難しいですよね。それに代わる家庭の味を形にしたのがこのスープなんです。
もうひとつは、彼自身がベジタリアンなので、このスープは基本ベジタリアンレシピです。もちろんヨーロッパ伝統のスープというのは、しっかり塩のきいたものから、深みのあるものまでいろいろあります。ミシェルはオランダ人ですから、オランダ人の解釈の入った、非常に新しい感じもしますし、かといって日本人から乖離(かいり)したものでもないということですね。
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オランダ発のスープですが、日本の方でも違和感なく楽しめるのでしょうか?
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楽しめるはずです。ぜひ皆さんにお試しいただきたいと思います。大切な人と一緒に、あるいは、大切な人が今身近にいない人は、その人のことを考えながら召し上がってください。
スープというのは世界中にあります。日本には味噌スープがあり、タイにはトムヤムクンがあり、それぞれ伝統のレシピがあります。それをミシェル風にアレンジしたのがSmallest Soup Factory(スモーレストスープファクトリー)のスープです。アジア系のスープも順次作っていければと思っています。 -
ミシェルさんというのはどんな方なのでしょうか?
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今、時代の流れとして、東洋的なものに非常にヨーロッパの人の関心が向いているのですが、ミシェルという人はそのひとつの象徴です。彼は、日本文化や東洋文化というものに関心があり、勉強もしたいと思っています。
視点が東洋に向かった人たちというのはおもしろい力があるんです。それは、人を魅了する力とか、プロダクトをより高次元に高めていく力です。彼の場合は、彼が愛してやまないスープですね。もちろん西洋にも伝統的なレシピがあって、それは尊重され愛されているものであるわけども、そこにはないベースが東洋にはあります。
ダシはこうやって取らなければいけないとか、マクロビオティックに基づけばこうだとか、東洋の食材、例えば昆布を使うとかです。ミシェルの作るスープに限らず、弊社がお取引をしているヨーロッパの会社は、東洋に対して関心があるところばかりです。だから日本人の私たちにもよくしてくれるし、ヨーロッパでオーガニックの仕事をしている人たちは、全員とはいわないけどもその傾向がありますね。時代は確実にその方向に向かっているように感じます。ただ、西洋の人が東洋から様々なことを学びはじめているのに、日本人は何だか変なところで逆の方向に向かってきています。もう一度、西洋の人たちが日本人に対して関心を持っている部分を見いださないといけません。
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そのことに今一度気づくべきタイミングなのでしょうね。
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気づかなくては、本当にもったいないと思います。日本がもともと持っていた精神というのを、西洋の人たちは、食べ物のなかに、日本文化のなかに、日本の生活風土のなかに見いだしています。「もったいない」という言葉は世界の共通になりました。こんなに高く評価してもらっているんです。
今は世界に開かれた状態ですから、このスープにしろ、多様性のある味を日本人が楽しむというのも、生活のなかで必要なことかと思います。彩りがないと思っている人たちにはぜひお試しいただきたいですし、彩りがある人はそれにもっと花を添えてください。