コーヒー愛好家への警告:カフェイン中毒のリスクと予防法
コーヒーカルチャーの影に潜むリスク「カフェイン中毒」。
過度の刺激物摂取やエナジードリンク依存症がもたらす健康被害とは?
依存症や中毒に陥る前に
「カフェイン」と聞くと、まず最初に「コーヒー」が頭に浮かびますが、
ほかにも、チョコレート、栄養ドリンク、玉露茶など
私たちのまわりにはカフェインが含まれている食品や飲料があふれかえっています。
「大量に摂取するとカフェイン中毒になる」
「カフェイン中毒は恐ろしい病気」
なんとなくそういった知識はあっても、
詳しいことはよくわからない、という人が多いのではないでしょうか。
大量に摂取すると恐ろしいことになるとわかっていても、
知らず知らずのうちに蝕まれていることがある「カフェイン中毒」。
カフェインについて正しい知識を持ち、中毒に陥らないよう上手につきあっていきましょう。
カフェインは「悪」ではない

まず前提として、カフェインは毒ではありません。適量を摂っていれば、自律神経の働きを高めたり、眠気覚ましになったり、集中力を高めて勉強や仕事の効率を上げたりなど、嬉しい効果も期待できます。
しかし、今世界ではカフェイン中毒に陥っている人が非常に多く、日本でも2015年から5年間で101人がカフェイン中毒で救急搬送され、そのうち7人が心肺停止し3人が死亡していることが日本中毒学会の調べでわかっています。
では、カフェイン中毒とはどういったものなのでしょうか。
カフェインとは

カフェイン中毒の話の前に、まずカフェインとはなにかを知っておく必要があります。
カフェインは、コーヒー豆やカカオ豆、茶葉などに含まれる食品成分で、有機化合物アルカロイドの一種。ドイツの化学者フリードリープ・フェルディナント・ルンゲが、コーヒーから単離させることに成功しました。
コーヒー豆や茶葉から抽出されたカフェインは、苦味料などの用途のために食品添加物として登録されており、人工的に清涼飲料水などに添加される場合もあります。
カフェインは人などに対して興奮作用をもち、中枢神経を覚醒させて疲労や眠気を軽減します。神経を鎮静させる作用を持つアデノシンに似た構造を持ち、拮抗することで、アデノシンが受容体に結合できなくなり、その働きを阻害するため神経を興奮させます。
ほかにも、解熱鎮痛、覚醒、強心、利尿作用があり、医薬品として使われることも。精神刺激薬(刺激薬・興奮剤ともよばれる)として、総合感冒薬や鎮痛薬、酔い止め薬などに用いられ、効果としては、鎮痛補助や眠気、倦怠感に効果があります。
カフェインが含まれる食品

カフェインは、コーヒーやチョコレートに含まれているというのは広く知られていますね。ほかにも玉露や紅茶、エナジードリンクなどに含まれています。
食品中のカフェイン濃度
食品名 | カフェイン濃度 | 備考 |
---|---|---|
カフェインを多く添加した清涼飲料水 | 32 ~300 mg/100 mL | 製品によって、カフェイン濃度、内容量が異なる。 |
インスタントコーヒー(顆粒製品) | 1杯当たり80 mg | 2g使用した場合 |
コーヒー(浸出液) | 60 mg/100 mL | 浸出法:コーヒー粉末10 g、熱湯150 mL |
紅茶(浸出液) | 30 mg/100 mL | 浸出法:茶5 g、熱湯360 mL、1.5~4分 |
せん茶(浸出液) | 20 mg/100 mL | 浸出法:茶10 g、90℃430 mL、1 分 |
ほうじ茶(浸出液) | 20 mg/100 mL | 浸出法:茶15 g、90℃650 mL、0.5 分 |
ウーロン茶(浸出液) | 20 mg/100 mL | 浸出法:茶15 g、90℃650 mL、0.5 分 |
玄米茶(浸出液) | 10 mg/100 mL | 浸出法:茶15 g、90℃650 mL、0.5 分 |
玉露 | 160 mg/100 mL | 浸出法:茶10 g、60℃60 mL、2.5 分 |
普通のチョコレート | 25~36mg/100g | |
高カカオチョコレート | 68~120mg/100g |
引用)厚生労働省HP
※チョコレートは独立行政法人国民生活センターの「高カカオをうたったチョコレート(結果報告)」を参照
これ以外にも、WHO(世界保健機関)が2001年に公表した「Healthy Eating during Pregnancy and Breastfeeding (BookletFor Mothers)2001」では、 「紅茶、ココア、コーラ飲料は、ほぼ同程度のカフェインを含む」とあります。
世界でのカフェインの位置づけ

近年、各国でカフェインの危険性について研究され、幼い子どもや妊婦などは特に影響を受けやすいとして知られるようになってきました。危険性については個人差も大きいことから、現在は世界で具体的な危険値が定められているわけではありませんが、各国でめやすとして注意喚起や勧告がされています。
WHO(世界保健機関)で2016年に1日300mg 以上の高カフェイン摂取の妊婦の場合、出生時の低体重、流産や死産のリスクが高まる可能性があるとして、それらのリスクを低減するため、1日300mg 以上の高カフェイン摂取の妊婦に対し、妊娠中はカフェインの摂取量を減らすように注意喚起が出されました。
カナダ保健省で健康な一般成人の場合、1日に400 mg以上を摂取しないよう勧告されています。 米国食品医薬品局(FDA)では、健康な大人では、1日当たり400 mg(コーヒーでは4~5カップ程度)までであれば、「カフェインによる健康への危険な悪影響はない」としているものの、妊婦、授乳婦、妊娠予定の方や服薬している方は、カフェイン摂取の影響を受けやすくなる場合があるため、かかりつけ医に相談することが推奨されています。また、米国小児科学会(AAP)は、子供はカフェインを含めた刺激物の摂取を抑制すべきとしています。
日本でも、農林水産省や厚生労働省のHPでカフェインの過剰摂取について注意喚起がなされています。
農林水産省「カフェインの過剰摂取について」(外部リンク)厚生労働省「食品に含まれるカフェインの過剰摂取についてQ&A 」(外部リンク)
内閣府食品安全委員会「食品中のカフェイン」(外部リンク)
カフェイン中毒とは
カフェインはコーヒーから医薬品まで、さまざまなものに含まれていることがわかりました。カフェイン中毒は、これらに含まれるカフェインを一度に大量に摂取してしまうことで急性中毒が起こり、摂取をやめられなくなることです。
短期間に大量にカフェインを摂取したときに発症する症状としては、以下のことがあげられます。
身体症状 | 精神症状 | |
---|---|---|
軽度の場合 | 胃痛・胸痛・吐気・心拍数増加・呼吸が早くなるなど | 緊張・知覚過敏・多弁・不安・焦燥感など |
重度の場合 | 痙攣・頭痛・過呼吸 など | 精神錯乱・妄想・幻覚・パニック発作・衝動性など |



重度の症状に陥ると、最悪の場合、死に至ることも

どれくらい摂取すると中毒症状が起こるかは個人差がありますが、人によっては1g程度の摂取で中毒症状が出はじめます。そして、2g摂取すると多くの人に中毒症状が出てきて、5gの摂取で重篤な副作用が起こり、7gの摂取で致死量に至るとされています。
致死量についてはさらに個人差が大きいため一概には言えませんが。5gの摂取で死に至ることもあると言われています。
具体的な量の話をすると、1日にコーヒーなら80杯、エナジードリンクなら60本、眠気覚ましなら40本飲むと、重篤な症状あるいは死に至るということになります。
普通に考えれば、一度にこんなに大量に摂取することはないように感じますが、実際に急性カフェイン中毒で搬送される人が一定数いるのも事実。
鎮痛剤などの錠剤にカフェインが含まれているという認識がない人が多いという事情が、その大きな原因と考えられますが、急に大量に摂取するだけでなく、致死量に至らないまでも慢性的にカフェインを頻繁に摂取した場合に重篤なカフェイン中毒に陥ることもあるため、普段から摂取量を意識するようにしたほうがよいでしょう。
離脱症状にもをつけて

カフェイン中毒においては、カフェインの過剰摂取による中毒症状とは別で、カフェインを急にやめることによる離脱症状というものも知っておく必要があります。
離脱症状とは、特定の化学物質の反復使用を突然中止することで起きる病的な症状のことで、普段から慢性的にカフェインを摂取している人が、急にカフェインを摂ることをやめたり量を減らしたりするとこの離脱症状が起こります。
症状としてはおもに頭痛を訴えることが多いですが、著しい疲労感や眠気、抑うつ気分、気が散って集中できない、吐き気や嘔吐などを訴える人もいます。
カフェインをやめようと思ったときは、急にピタッとやめるのではなく少しずつ減らすようにしましょう。
やっかいなのは、症状に気づきにくいこと

たとえば、普段からコーヒーを大量に飲む人がいたとしましょう。
コーヒー(に含まれるカフェイン)には利尿作用があるため、コーヒーを大量に飲むことで水分を補っているように感じても、実際にはトイレに頻繁に行くことで体全体としては水分がマイナスの状態になり、脱水症状を引き起こすことがあります。
しかし、カフェインには興奮作用もあるため、脱水によって感じるべき脱力感や疲労感が気にならないことがあります。これを繰り返しているとどうなるかはおのずとわかるでしょう。

また、カフェインを常に体内に入れていると、その状態でバランスが取れてしまいます。当然ながら睡眠時にはカフェインを摂取しないので、朝起きるとちょっとした離脱症状が起こっています。
しかし、頭が重い、気だるいなどの軽度の離脱症状の場合、寝起きだからと気に留めないことも多いでしょう。そして、普段からコーヒーを大量に飲んでいる人は朝からコーヒーを飲みますよね。そこでカフェインを摂取することによって離脱症状から脱却し、不調に気付かないということも多いです。
このように、気付きにくいからこそ、より意識すべきがカフェイン中毒の症状です。思い返してみて思い当たるふしはありませんか?
カフェイン中毒にならないために

カフェインを摂取したときに疲労が軽減された、眠気がなくなった、集中力があがった、という身体感覚を得たことのある人は多いと思いますが、これは実際に疲労が軽減された、眠くなくなったということではなく、いわば元気を前借りしている状態。カフェインが体から抜けると、カフェイン摂取の前よりも疲労感があがり、虚脱感を覚えることもあります。
こうなったときにこの虚脱感から抜けたいがためにさらにカフェインを大量に摂取してしまうことがありますが、いってみればこれがカフェイン中毒の第一歩。健康に悪影響を及ぼしてしまうこともあります。
これを避けるためには、自分にとって適切なカフェインの摂取量を把握すること。最近忙しくてコーヒーばかり飲んでるな、眠気覚ましのドリンクを飲んだら、眠気は覚めたけれどその後の体調がいまいち…など、ご自身の生活とカフェインの摂取量にしっかりと向き合うようにしましょう。
カフェインレスコーヒーなどの代替コーヒーも活用しよう

カフェイン中毒が怖いと思っても、珈琲そのものの味が好きでやめたくない、コーヒーを飲む時間に得られるリラックス感を手放したくない、という人も多いと思います。
そんな方には代替珈琲という選択肢もあります。
代替コーヒー(代用コーヒー)はおいしくないというイメージをお持ちの方もいらっしゃると思いますが、近年では開発が進み、まるで本物のコーヒーを飲んでいるかのようにおいしい代替コーヒーも市場に出てきています。。
離脱症状に気をつけながら、たとえば1日に飲むコーヒーの半量を代替コーヒーに置き換えるなど、ご自身に合う形で試してみてはいかがでしょうか。