「ヒノキの魅力」について
弊社中川の肝入り!姿勢・電磁波対策を考えた 国産ヒノキ使用&総無垢作りの健康デスク
ヒノキの魅力
さっそくですが、数ある木材の中からなぜヒノキなのか・・・・・・その理由を岩本社長が語ってくれました。ヒノキの魅力はさまざまで、木肌の目に入る優しさ、手触り、香り、素材としてのしなやかさなどなど。
ヒノキというのは比較的柔らかな素材で、その分温もり、触れると皮膚にそっと寄り添ってくれるような優しさを持っています。子ども達がヒノキの家具に出会うと、まず頬をくっつけてみるのだそうです。その気持ち、すごく分かります!
ただ、柔らかいということは傷がつきやすいということでもあるのです。堅い木材にすれば丈夫で使い勝手は良いのですが、その分熱伝導率が高くなり、冷たい感じになってしまいます。岩本社長いわく、机のような家具に限らず、建築でも家の設備でも何でも、豊かになればなるほど面倒くさいという気持ちが先に立つのだとか。けれどもそのことで、もっと大切な何かが失われてきたのかもしれません。
柔らかいヒノキの机に、何も敷かずに紙一枚の上をボールペンで強く字を書いたりすれば、当然痕が残ります。本当に机を大切に思うのなら、そこで下敷きを一枚敷けば済む話なのですが、そういう心遣いが面倒だとなると、せっかくのヒノキにウレタン塗装をしてください、といった要望になってしまうのです。それではヒノキの良さが台無しです。
ヒノキの柔らかさや優しさは、単に物理的なことではなく、ものを大切に使うという心を呼び覚ましてくれます。作り手の想いだけでなく、使い手にもその想いを共有してもらうこと、そういった意識の変化は物作り全体におけるこれからの課題でもあるようです。
ヒノキはまた、その存在で空間を明るくしてくれます。実際、お店にはいった瞬間、気持ちまで明るくなるような、そんな印象を受けました。光というのは必ず反射するもので、ヒノキに反射した光はとても柔らかく、目に優しいものになります。一般的な合板では、光はピカピカと眩しく反射します。どちらが作業しやすいかということはいうまでもありません。
さらに・・・・・・ヒノキ特有の香りは固まった体や心をほっと和ませてくれます。ストレスフルな現代にあって、癒しのヒノキはぜひ身近に置きていただきたい存在であります。
国民的人気者
日本人はヒノキ好きな人種なのだそうです。それこそDNAの中に組み込まれているように・・・・・・確かに昔から、日本の住宅の中にはヒノキが存在し続けてきました。
日本人というのはもともと質素を好むところがあるのか、個人の趣向の違いはあるにしろ、多くの人がずっと落ち着いて住みたいと思えるのは、たとえばカントリー調のような豪華な装飾ではなく、何もない空間があって、畳があって、障子があって、その向こうに坪庭があって、というような主張しない造形ではないでしょうか。ヒノキはそこに一緒にすっと溶け込むことができます。しなやかでスリムで凛としている、それがヒノキの存在感を感じさせない存在感なのです。
ヒノキのしなやかさというのは、感覚的なものもありますが、もうひとつ、素材そのものとしてのしなやかさもあります。前述のようにヒノキは柔らかく、点の衝撃には強くありませんが、面の衝撃を受け止めることには優れています。ヒノキは年月とともにその強さを増すという特性もあり、神社仏閣、五重塔などの芯柱はヒノキが選ばれているそうです。
日本の山事情
ヒノキの魅力は語るに尽きませんが、ここで日本の山林について視野を広げてみます。岩本社長が今の仕事を始められたのは、荒れていく日本の山林を何とかしたい、自然に生かされていることに感謝したい、という想いがあったからだそうです。
かつて日本の山林は広葉樹を中心とした木々に彩られ、多種多様な命を育んでいました。しかし戦前から戦中、戦後にかけて、日本の山林に生きていたもともとの木々は雑木として伐採され、建築材としての価値が高いスギやヒノキが無計画に植林されていきました。ところが高度経済成長期の頃になると、建築材に木材以外のものが多く使われるようになり、外国産の安価な木材の流入もあり、たくさん植えられたにも関わらず、国産の木材は使われ辛い状況になってしまいました。
人工林は手入れをしないとどんどん荒廃していきます。荒れた人工林には命が宿りません。密に植林された木々が枝打ちもされないと、日光が地面に届かず、下草すら生えず、虫も動物も生きていくことができません。山の本来の姿は循環するものです。木々や草花でバランスよく構成され、そこに虫や動物たちが暮らし命のつながりを持ちます。鳥が木の実を食べ、その種を別のところに落とし、森林の世代も重ねられていきます。
木もあまり年老いてしまうと機能が弱まり、二酸化炭素を吸収して酸素を排出するという、大切な循環も滞ってしまいます。山が衰えると川も海も荒れていってしまいます。人工林をきちんと手入れして使うことで、命ある山林が生まれ、そこから自然が蘇っていきます。身近にある家具をたどっていくと、そこまでたどりつくことができるのです。
製品の生まれるところへ
お話は店内にとどまらず、少し離れたところにある工場も見せていただけることになりました。町中を抜けさらにのどかな雰囲気ただよう地域へ・・・・・・到着した工場は、工場という無機質な響きより、町工場という表現が似合いそうな、現場感と人の温かみのある風情です。どの方も真剣に作業に向き合っていますが、手を止めて挨拶やお話をしてくれるときには、にこやかに対応してくださいます。そして一面に広がる、ヒノキの爽やかかつ新鮮な香り・・・・・・イライラすることがなくなりそうです。
ヒノキというとなんとなく高級なイメージがありますが、国産のものは人件費など経費が割高ということもありますし、高級とされるヒノキというのは、大きく、どこにも節のないような、非常に貴重なものなのです。けれどもすべてのヒノキがそうではありません。仕入れの方法を工夫し、運搬や加工をできる限り自社で行うなどして、一般的に広く楽しめるヒノキ製品を作っています。
もし安さだけを求めるのなら、外国産の木材を使ったり、生産の拠点を外国に置いたりすれば早いのですが、日本の山林を蘇らせること、そしてこれもとても大切なことなのですが、モノづくりの技術を継承することがあります。
モノづくりの神髄
岩本社長いわく、モノづくりは単なる肉体労働ではなく、頭と覚悟の要る仕事だそうです。それは工場を見て本当に実感できました。
木材は生きた素材です。そのひとつの証拠に、木材は、夏は湿度を吸って伸び、冬は乾燥して縮むという性質を持っています。この伸縮まで計算に入れておかないと、製品が完成しても使い物にならないこともあります。前日切って翌日組み立てようとすると、長さが変わっていることもあるそうです。この性質は、製品が完成したときには、多少なりとも空気中の湿度調整をしてくれるという、使う人にとっては嬉しいものでもあります。
また、ひとつの製品を完成させるためには、パーツを個々に製造して、それを組み立てていくのですが、どうしても誤差というものが生じます。それぞれパーツ毎の誤差は小さなものでも、組み立てると致命的な誤差になることもあるので、これを限りなくゼロに近づけることも求められます。
これらをクリアするために、経験に依るところがあるのはもちろんですが、チェックと修正が何度も何度も繰り返されます。素人が傍で見ている分には、もう大丈夫なんじゃないかというような小さく思えることも、きっちりと正確に修正されていきます。これも単に細かく丁寧というだけではなく、手元の製品から完成後のことまでを考慮に入れて、頭をフル回転させて作業を進めていかなければならないのです。
弊社がご紹介しているデスクを実際に見て触っていただくと分かるのですが、節の模様はあっても表面は平らで何のひっかかりもありません。これは、木の枝や木屑を使って、ひとつひとつ手作業で凹凸が埋められているのです。この処理は、引き出しの中など見えない部分にも行われています。
育ちの良いヒノキ?
木も人間と同じく、育った環境によってその性質が変わっていくそうで、静岡は温暖で、風が強く吹くこともなく、大雪が降ることもなく、そのおかげで、静岡のヒノキというのは、柔らかくまっすぐな素直な性質に育つのだそうです。人間でいうと、お嬢さま、お坊ちゃま育ちといえるかもしれません。
これが、たとえば急斜面に生えている木だったり、ずっと風が当たっているような木だったりすると、起きよう、戻ろう、という力が働いて、変に堅い部分があったり、クセがあったりする木になってしまうそうです。人間ならそれもおもしろいかもしれませんが、家具になる木材としては、苦労知らずで、ぬくぬくと育ったヒノキがちょうどいいというのも、おもしろいですね。