キュアインナー マハールさん工場見学レポート

キュアインナーの「ふんわり心地」の秘密。健康靴下の「(株)マハール」さんへ工場見学に行ってきました

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キュアインナーの特徴のひとつはさわっているだけで幸せになる、ふんわり柔らかな編み立て。
実はこれ、マハールさんが独自で生み出した特殊技術なんです。

繊維の街、泉州・岸和田で「肌に触れているだけで安らげる、呼吸する衣服づくりを」と
日夜励み続けている、「マハール」さんの縫製工場を見学させていただき、
日本を支える「大阪のものづくり」のすごさを体感してきました。
やさしきスーパーマン・木岡さんのエピソードも必読です。

大阪・東岸和田の「マハール」さん

JR東岸和田駅を降りて車で10分程度。住宅地になじんで佇むマハールさん。
本日案内してくださったのは代表取締役の木岡さん。早速お話しを伺います。

オーガニックコットンとマハールさん

――「岸和田は「ものづくりのまち」というイメージがあります。」

「 岸和田は元々手袋や靴下の製造で有名な地でした。泉州はタオルや毛布で有名ですし、このあたりはやはり繊維を使ったものづくりがずっと盛んだった地域ではあります。
1964年の東京五輪で伝説となった「東洋の魔女」こと日紡貝塚のバレーチームもこのあたりで働いていたんですよ。

そんな岸和田ですが、時代が変わるとともにどんどん生産の場が中国にうつり、価格破壊に耐えられずに多くのメーカーが廃業していきました。

機械はほとんど同じものですから、同じようなものを国内で作っていてはとても対抗できない。そこで代替わりを機に、靴下だけでなく体全体をあたためるウォーマーの生産を開始しました。」

――ウォーマーの製造は木岡さんの代にうつられてからなんですね。オーガニックコットンを使われてからはどのくらい経ちますか?

「もう...20年になりますね。『もっと心地よい手触りの綿はないものか』といろいろと素材を探している中で、とある紡績会社の方からたまたま、「海外にはこんなものもあるよ」とオーガニックコットンを見せていただいたんです」

――20年前というと、まだ国内にはありませんでしたよね?

「オーガニックコットンを使用した衣服はかろうじて入ってきていましたが、原料は全く日本に来ていませんでした。一目見て、そのやわらかな手触りにすっかり僕も魅了されて、 「これは絶対にお客様に喜んでいただける」という確信をもってオーガニックコットン糸で製品を作りはじめました。」

――国内でオーガニックコットン糸を使ったのはマハールさんが初めてなんですね!!実際に作る側にたってみて、いかがでしたか?

「最初はかなり苦労しました。薬品を使ってない天然のものだから毛足にねじれがあったりして、編んでいてもすぐに切れてしまったりね。今は「セット」という糸に蒸気をかける方法で落ち着かせていますが、それでも普通の綿より気を使います。」

――なるほど。では気になる販売のほうは...

「当たり前ですが、どんなに良いものであっても、誰もオーガニックコットンなんて知らないんですよ(笑)企業向けの展示会などに出店していましたが、毎年立ち寄ってくれる人は「それ、なに???」という興味で寄ってくださる。最初の方は何年も、販売というよりオーガニックコットンを広めるために展示会へ行ってました。」

――当時のオーガニックコットンの認知度からするとすごい貢献度ですよね!

「やはりいいものなので、沢山の人に広めたいという思いが強かったです。間違いなく広がっていくと思っていました」

――木岡さんや黎明期にオーガニックコットンを見出した人々が「種まく人」として精力的に活動してくれたから、今のオーガニックコットン市場があるんですね。

木岡さんとマハールさん

――お父様が創業されていたとのことですが、継がれる前は何をされてたんですか?

「旅行が好きで、旅行会社につとめていました。元々19歳から2年程イスラエルに住んでいて。」

――イスラエルですか!?

「聖書ってもともとはヘブライ語で書いてあるじゃないですか。あれを元の言葉で読みたくて。現地の言葉を学ぶために、イスラエルの農場で働いて、三食食べさせてもらいながら勉強していました。」

――なんと...いきなり濃いお話でかなり驚いてます。ヘブライ語って全く触れたことがないんですが、やっぱり難しいですか?

「難しかったですね。日本語と違って名詞に性別があるんですよ。だから単純に、単語を倍覚えなきゃいけないんです。同じ意味なのに、男性用の言葉を女性に使うと失礼になっちゃったりして。
今も年に数度はイスラエルに渡っているんですが、「あれ、どっちだっけ?」となるときがあります(笑)」

「マハールもね、ヘブライ語なんです。マハールという単語自体はいくつかの言語にあるんですけど、たとえば~~語では『宮殿』という意味ですよね。タージ・マハルの。ヘブライ語では「明日」という意味です。ちなみにこのマハールの「ハ」は日本人には発音できません」

――そんな紆余曲折を経て、この岸和田に帰ってこられたんですね。

「いえ、ここを継ぐために一旦アメリカの大学に行って経営学を学びました。」

――え!!(笑)じゃあイスラエルに行かれた後はアメリカに渡られたんですか。当時そんなグローバルな生き方をされてた日本人なんて木岡さんくらいじゃないでしょうか

「僕もそう思ってたんですけど(笑)僕が入学した時すでに女性の先輩が一人いたんですよ。確か今は大使館で働いてるのかな?近頃はテレビなんかでもよく特集されてますけど、日本人って本当に世界中の色んな場所にいるんですよね。すごいバイタリティだと思いますよ。」

――確かにそう思います。が、当時の木岡さん以上の方も中々いない気がします...(笑)

以外に知らないコットンのあれこれ

――ところであそこに置いてある茶色のモコモコ...もしかして「綿」ですか?

「あれはブラウンコットンです。コットン自体に色がついている品種です」

――白以外のコットンがあるなんて知りませんでした。動物の毛みたいで可愛い!

「もともと緑色をしているものもあるんですよ。」

「綿ってすごい増えるんです。この1つの花の中に4つの部屋があって、その中にタネが8~10つずつ入ってる。一つのタネがどんどん広がっていくんです」

そのお話を聞くと、まるで木岡さんご自身のようだなと思います。
木岡さんが手に入れた綿花の種から、沢山の動きが同時多発で爆発的に広がって。木岡さんの種まく人としての活動も、まるで綿そのもののようにどんどん大きく広がっていったんだなとしみじみ感じます。

「わた」からつながっていくおもい

「東北コットンプロジェクト」と「きしわたプロジェクト」

「実はこの辺でも綿花を育てているんですよ」

えっ!?コットンって国内で育つものなんですか!?

「育ちますよ。そもそもこのあたりはかつて綿花の一大生産地だったんです。」

知りませんでした。

「江戸~明治の頃、ここで作られていた木綿は「和泉木綿」と呼ばれていました。歴史の情緒あるまちなのに、今は繊維産業の衰退で元気がなくなっている。そんな岸和田の地域文化・産業を絶やしたくないという思いから、岸和田で綿花を栽培しようという「きしわたの会」が発足しました。 「きしわたの会」は市民団体だったんですが、出来上がった綿を商工会議所に「これを使って何か作れないか」と持ってきてくれたんです。そこから岸和田の繊維業者が協力して「夢つむぎ会」という会ができました。~~~~~製品化して、岸和田ブランドの特産品として販売しています。

「この辺の小学校にもお話して、綿花を栽培してアサガオの代わりに綿花を育てませんかと(笑) アサガオは文部省の指導要領に入っているから代わりにはできないけど、ぜひ綿花もやりましょうという話になって、」

素敵ですね!アサガオも嬉しいけど、自分が育てた綿花にフワフワの花が咲いたら感動しちゃいますよね。岸和田の小学生がうらやましいです。私も岸和田に生まれたかった!

「この辺の子だけですけどね(笑) そういった活動の根が広がったことが発端となって、岸和田だけでなく全国の綿花づくりをしている人たちも集まろうよと、2011年には「全国コットンサミット」を開くことになりました。そうやって動きが結実する準備をしているさなかに3月11日の震災が起きて。」

さきの震災で、津波の被害により稲作地帯であった沿岸部の農地は、土に塩が入ってしまったため、お米が育たなくなってしまったと聞きました。 そこで「東北を綿花で応援できるかもしれない」と。 綿花は塩害に強い。それどころか、土から塩を吸い上げてくれる働きがあるんです。綿花を3回も植えると、土はもとに戻って再び稲作ができるようになるかもしれない。 そうやって綿花による農地の再生に期待を込めて、僕たちやまわりの人が発起人となって「東北コットンプロジェクト」が発足しました。」

HPを拝見しました。映画のように壮大なお話で、思わず息をのみました

「どんどん大企業や大きな団体が協賛し、本まで出版されて大きなプロジェクトになっていますが、もともとはとても小さな動きだったんですよね 「さっき「綿は一つの房からものすごく増えていく」という話がありましたが、木岡さんの活動もまさに綿そのもののように広がって、沢山の人の心に種を植えつけているような気がします」

「健康靴下」にかける思い

貴重なお話を沢山ありがとうございました。
縫製所の中も見せていただきましたが、原理はおばあちゃんが編むかぎ編みと同じなんですね。 マハールさんの製品はどれも「手編みのぬくもり」を感じるのですが、その理由がわかった気がします。

しかも、あんなにたくさんの糸を使って、絶対に絡まないというのがすごい!
「大阪のものづくり」の結晶だなと感じました。

「なんでもいいや」って方はなんでもいいんだと思います。それこそ靴下なんて三足千円でも事足りる。
ただ、「こんな素敵なものもありますよ、どうですか」ってお見せしたときに「いいですね」って言ってくださる方がいる。
それだけかもしれないけど、その「いいですね」をすごく大事にしていきたいと思うんです。

「思えばイスラエルの農場で働いていたとき、綿を収穫したことがあるんですよね。その時はこんな事やってるなんて勿論夢にも思ってなくて、ただただ摘んでいたんですけど、なんだか「つながっている」なあと、気づいたときはうれしくなりました。」


木岡さんのルーツであるイスラエルと綿の思わぬ共通点。
「種まく人」木岡さんの真摯なものづくりに
カタンコトンと針は絶えず日夜動き続けます。

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