川端プリント代表 川端康男さんインタビュー全文掲載
ごまかしのない安全な衣服をお客様へ。理想と現実の間でたたかい続ける川端プリントさんのインタビューを全文掲載しました
全くごまかしのない安全な衣服づくりを。
工学博士の木村先生とともに「新万葉染め」を開発し、
その思いを受け継いで今日まで染めを続けてきた
川端商店三代目・川端プリントさんの
思いが詰まったインタビューを全文掲載します。
新万葉染めにかける思い
草木染めと聞いてどんなイメージをされますか?
--伝統産業というイメージがあります。
そうですよね。工芸品ってよばれますよね。工芸品っていうのは何かといいますと、やっぱり職人の技で昔ながらのやり方で、というものです。
とはいえそもそもどこの世界、どこの国も最初は天然の染料で染めていたはずなんですね。それが日本ではたまたま着物の業界で残ってたんです。
それは(他の国とは)違う意味での、工芸品って形で伝授されてますので、世界でも珍しいんちゃいますかね。こういう経済が発展したところで使われているのは。
それはなぜかといいますと、昭和の初期にそういう名前が命名されまして、合成染料と違いを明確にするために『草木染め』という名前がつけられたんですね、商標登録で。
それが自由に使えるようになったから『草木染め』というのが走り出したんですけど、定義がないんですね。草花でただ染めているというので草木染めというのがはじめはあったんですけど。
一方ね、フランスやヨーロッパのほうではやっぱり食品に、自然なもので着色したいということで、そういうものが工業的に発展したんですね。
そのやりかたは、日本と違って工業的ですごい効率がいいんですよ。まず、コストも考えて、扱いやすくてということを中心にしているんですね。イメージだけは残ってますけど、(草木染は)定義ないもんですから。
--確かにあちらの食べ物はとても見栄えがきれいです。
ヨーロッパの抽出の仕方、これが新万葉染めと大きな違いがありまして。
新万葉染めは、余分なものを加えない、要するにまったく自然な力を使って染めるっていうことにこだわっています。
それは木村光雄先生という方がご一緒に---共同開発者で五年前なんですけど、その方からいろいろと伝授を受けて、監修を受けながらやってるんですけども、
(木村先生から)一番の指導をうけた分は、「自然なものの力で十分染まる、綺麗な色が出る」と。
今の草木染めというのは全部渋い色が出るイメージされるでしょう。それはなぜかといいますと、色の色素を壊してしまっているんです。その壊すようなやり方が今伝授されてしまっています。
「本来もっている色は今の石油で作られている色よりも目に優しく、綺麗な色が出る」ということを僕は木村先生から教えられたんですね。
先ほどのヨーロッパ(での食品への染色方法)、世界でいわれてたのは、抽出の仕方、これにひとつ問題があるということなんです。
僕は五年前、向こうの状況を知るために向こうの材料を取り寄せました。外部に委託して行ってもらって、フランス、イタリア、それとドイツですかね。材料を仕入れまして。実際売られているやつです、染色用として。主に使われているのは食用で使われている色素です。
食用で使われているから、口にするから安全ですよね、基本的にはね。でもその中に入っているものは安全やと思っていたけど、僕らはそれを検査したんです。
どういう検査の仕方というますと、乾燥させて、その中に何が入っているか、自然のもの以外のものがどんだけあるか、染まるものはどんだけあるかというのを調べました。専門家がいたからできた事なんだけどね。
その中に驚いたことに、樹脂分、いわゆる自然界に存在しない樹脂が出てきた。
色を壊さずに抽出する方法は、まず今僕がやっている「粉砕」ただ粉砕する方法。新万葉ぞめはこれでやってますね。それともう一つの草木染めというのは、100%それなんやけど、ちょっとやり方が違うんですね。色を潰してやるやりかた。
一方海外のやり方は「アルコール抽出」というやり方でやってました。
色材を有機溶剤に溶かして、その中に溶けたものを全部水分を飛ばして、水気を飛ばしたものが、色素が100%に近い状態。それが世界のヨーロッパで売られているものなんですね。
すばらしいんですよ、扱いやすさが。1kgあたり日本円にして仕入値にして5万円ぐらいで、少々高いけども。
さっき自然界に存在しない樹脂と言ったけれども、その中に、抽出するときに使った有機溶剤、要するに石油系が入ってました。
だからネチョネチョするんですよ、乾燥させると。だから僕らは天然のものであったらあくまでもそこもこだわろうっていって。
世界でも粉砕しただけで染めているのはうちだけだと思います。
市販されているやつは、ヨーロッパとかの粉末を買うて、水で薄めて、液状で売られているんですね。それか粉末で売られていると思うけど、今のとこは高いのであまり見ません。だから薄めて、コスト面が合うので、1kgあたり利益が出るように薄めて売られる。
そういうなん(そういうもの)が、いろんなところの、ネットで調べたら出てくる、そういうところ(の草木染めの染料)。
まあ、それはあくまでやり方なんで。でも実際材料から仕入れて個人的にやられているのは日本では他にないくらい、(うちは)取り組みをやってる。
--その色って違うものなんですか?自然だけど有機溶剤で出しているものと、粉砕したものと。
色味は変わりません。ただ濃度が、薄めてますので、同じ材料のグラム使っても濃く染まるんですね。
堅牢度は薄めているやつは助剤が入ってまして、その助剤も専門家に調べてもらったんやけど、ここちょっと内容はそこまでいえないですけども、いろんな助剤が入ってます。
--草木染めとはいえ、効率よく染めるためにいろんなものが使われている事が多いんですね。それは表記上には出てきますか?
出ません、調べないと。
ただこんなんが入ってるんやないかというのが、やっぱり染めやすくするには、いろんなありますよね。人間の知恵というのがあります。そういうノウハウを、大手はもっておられますので。だからまったく自然の力で染める新万葉ぞめっていう定義からは外れてます。
だから今回やらしていただいたやつ(キュアインナー)っていうのは、自然のもの、顔料、要するに界面活性剤とかああいうのもまったくない。水と樹脂だけで作っております。防腐剤も入れないでね。
みなさんがきている服とかプリントとかは、もともと、作業をよくしてコストを経済的に合うようにしたものが材料で作られているんですね。今まではそれで良かったと思う。
でも、今、循環型、これから地球のことを考えると、やっぱし自然に戻ることのできないもの---できないというわけではない、遅いんですね、100年、200年かかるものを1年間、1時間、2時間で戻るものでなるべくやりたいっていうのが。
界面活性剤、これはなにかというと、石油系と水を混ぜるために必要な助剤なんですね。ほとんどの水溶性といわれるものは、それで油を水溶性にしている。
水に溶かして、石けんみたいなものです、あんなんでやってるんですね。それは工場入ってきたらにおいで分かります。ぷーんとした石油系の。うち匂いしないでしょ。
--確かに全然(しない)。
--いい香りがしますよね。
「はい、うちの工場は甘い香りがする。そういうことは、何かというと、(石油系のものは)空気も知らない間に汚しているということです」
--合成系の染料が出てきたのはいつ頃なんでしょうか?
合成の染料が出てきたのは明治の13年か16年かそれぐらいです、日本に渡ってきたのは。
明治時代、大正時代というのは、発展した時代。いろんなものが合理的になった時代です。大正ロマンで見られたあの服っていうのは、あれの勢いでいってるんですね。
あんときは日本が一番輝いてた時代だと思うんですよ。すばらしいですよ、ああいうのを見てても、柄も、色も。
---活気が感じられますよね。
ただ今、足し算から引き算の時代になってきてますので、そういうのをどこを残してどこをやめていくかという時代に入ったと思うんですね。そういうのは誰も分からないんです、専門家が見ても。
だからあっち転んでこっち転ぶんじゃなく、新万葉ぞめの定義は、自然のものでやる。だから他社のやってるものを否定しているわけじゃない。
他社は他社で自然のものでここまではええやろと、従来に比べたらハイブリッドなことをやろうとしてる。だからそれはそれのやり方でして。
---いろんな方法ややり方・段階があって、お客様もそれを選べたら最高ですよね。
---話は変わりますが、色素が壊れるってどういう状態なんですか?
実をいうと色って配糖体の中に入っているんですね。分子。この分子っていうものは200メッシュ(74ミクロン)という大きさ。
人間の目ではちょっと分からないぐらい、すごい細かい。
その中に固まりの分子の大きさが色として存在できるんですけど、これが自然の人間の体と同じなんですよ。人間の肌で、お湯につけて、あついな、やけどする温度。
やけどして皮膚が死ぬ温度、これが自然界で全部同じなんです。その温度ぎりぎりでやるのが一番美味しいし、栄養があるんです。その温度が80度なんです。
約80度。その80度以上になると死んじゃうんですね。
従来の草木染めの染色方法だと、100度ぐらいまで沸騰させないと染められないというのがあって。
新万葉染めは、機械ですごく色素を細分化することによって、80度で色をつけることができるという特徴があって、そこで従来の草木染めより鮮やかな感じになるんです。
---色素が生きているからですね。
配糖体がはじけると、飲むとおいしい。栄養分たっぷりなんですね。
例えば鍋とか、ぐつぐつするでしょ、あれは自然の持ってる配糖体が崩れて汁にビタミンとかが出てきてるんです。
だから草木染めで長時間煮詰めて出すと色が出ないんですよ。
なぜそうなったかというと、昔のものは、葉っぱとか根っことかとってきて、おおまかに切って入れるだけなんですね。
表面の色は死ぬけど奥に残っている色はあるから、その色で染まっている。でもほとんど死んだものがくっついてしまってるんですね。
くっついてるっていう言い方が正しいのか分からないけども、色の分子が80度ぐらいで出やすくなるんですね。
水の力ってすんごく、見たときに、動いて見えないでしょ。でもすごい勢いで動いているらしんですね。分子がもともと動かなくなったら、水の1/5ぐらいになるらしです。
今、人間が見ているのは、地球の圧力によってここまでしかあがってこない。温度あげることによってどんどんあがってくるという。水が動きまくってるということらしいんですね。
そういう力を使って色を出すには80度がちょうどいいんです。死ぬぎりぎりまで(笑)その圧力、水の圧力によって生地のなかに押し込むんですね。
押し込むと今度は出たがるんですよ。出んようにするには、今度は分子を大きくしないといけない、媒染剤っていうのをくっつけちゃって、出れんようにするんですね。それが化学変化されるんですね。
そういう考え方が一番分かりやすいので今そういう説明をしてます。
---伝統とサイエンスが一緒になったっていう感じですね。そんなこと昔の人は考えなかった。
そう、なんでこれ染まってるかというと。考えなかったでしょうね。
昔の場合は、もともと温度なんかもそんな上がらなかったろうし、データもなかった、感覚でやられてるはずなんですね。媒染っていう言いかたもなかったでしょうから。
おもしろいのは、奄美大島の泥ぞめっていうのは、泥でそまっているんじゃなく、
中にある媒染剤---鉄といろんなものが配合された土があって、その中で化学変化しているだけなんですね。
中に、鉄とか銅とかクロムとかいろんなものが、あすこの土地柄あるんでしょうね。何回もやることでそれが染まっていく。
そういうことを今の専門家たちはデータ化してる、それを使わせてもらっているのが新万葉染めです。
---新万葉ぞめを開発された木村先生が科学者だったからか、とてもサイエンスな感じがしますよね。
木村先生はもともと合成染料の研究をやられていたんです。ヨーロッパのほう、ベルギーでしたかね、あのへんの水質汚染で指導に行かれたんですね。2年ほど。
福井大におられたときに合成染料を開発・研究されてたものですからヨーロッパの情報もよくご存じで。
染色は一番海を汚すんです。
排水をちゃんとできなかったからヨーロッパの川は汚れてしまって死の川になってしまって、それをどうするか、無色透明にするにはどうしたら良いのかという指導をされていました。
その時に「このままでだめやな」と思われて、65歳で引退されたときに草木染めを始められたんですね。
昨年残念ながらなくなられたんですけども、最後にいわれたのが
「川端くん、この新万葉染めの普及をお願いします」いわれてなくなられたので、責任重大なんですね(笑)
僕はそんな力がないんですけど、ただ五年間一緒にやらせてもらったので、いろいろと教えていただいたものを、今データを見ながら(やってます)。一番重要なんは、偏見を持たずに腹くくってやろうと。
少なくとも川に入って、この新万葉ぞめは、今ここで鴨川に流しても、淀川のもとでは無色透明になるんです。土にかえります。それがもとめてることなんですね。
--木村先生との出会いはどこからですか?
7年前に僕たちがこの本を見つけて、6年前から共同開発をはじめました。
(草木染めについて)電話でいろんなところに問い合わせたんですが、先生は電話をした次の日に飛んできて質問に全部答えてくれた。他の先生は「そんな事は無理」と言ってたけど、
木村先生は「やってみましょう」と。否定しはらへんかったんです。
--そこから共同研究が始まったんですね。
そのころは新万葉染めもなくて。色の指定も先生とやりました。
木村先生が植物染めをやろうって思われたのはヨーロッパの川の水質汚染を目にしたことからなんですけど、今それは中国で起こってるんですよね。
それを「どうしたらいいのか」というのを昨年。僕の名前も書いてますけど。
--こちらのご本は内容が詰まっていますね。
これは木村先生との五年間の結晶ですね。でもまだ内容的に難しくて。
もう一冊、付録付きで子ども向きのものを出そうとししていたんですけど、だめでしたね。先生なくなられて。夢かなわずに。
--そうなんですね。絵本、諦めずぜひ出版してほしいです。絶対大人も子どもも楽しめると思います。
「適量」であることが大事
今、間違った偏見があることが、うちは鉄とアルミと銅を使うんですね。
最初のときは僕自身どうしても銅というものに関して偏見がありまして、消費者も銅ときくと「毒物や」という感覚で。
なぜかといいますと、工業廃棄物でイタイイタイ病とか、あれは銀ですけどね。ああいう事件もあって、鉄分に関してはみなさんすごくシビアな考え方をされておられますね。
これは何かというと、自然のもんというのはすべて安全とは限らないんです。
何かといったら量の問題ですよね。適量を使う。適という言葉。そういう知識を持ち合わせない者が扱うと問題になる。それは木村先生も常々いわれていました。
だから余分なもん、これを染めるのにこんだけの量であれば大丈夫、でも余分なもんを入れちゃうと川に流れていく。流れていったら媒染剤とかそういうのは何で化学変化するか知ってたら。
化学変化って何かご存じですか。
--なんとなく...
何で化学変化するかって、安定したいんですよ。不安定やから。くっつくことを人間が勝手に化学変化っていってるんですね。
要するに落ち着いた状態は何か。不安定なものは不安定なもので、プラスとマイナス、要するに女性と男性やと思ってください。男性がマイナスとしたら女性がプラスとするでしょ。
プラスは草木染めの色です。マイナスはどちらかといえば鉄とかそういうものね。染料の固着剤とかそういうふうなもの。くっつくもんと思ってもらったらいいです、ちょっと荒っぽい説明ですけど。
川に流すと、何かにくっつこうとするんですね。人間の体に入った場合、飲んだときに何かといったら、人間の体にくっいちゃう。くっついたらどうなるかというと別の物質になっちゃう。
それが毒物になってしまったりするということなんですね。だから適量な分を扱うというのが一番何でも必要になってくるんです。
僕らが使っている分は、お風呂の、温泉とかと同じようなものです。
あんなか見てみたら、「こんなん入ってんの!?」ちゅうものが入ってるでしょ。あれ飲んだりしますよね。あれは健康に良かったりする。だからそのへんの知識を間違わずにやっていただいたら大丈夫。
毒物というものは何かといったら、石油系のことに戻りますけども、(一般の服は)界面活性剤とか、柔軟剤とか、すごくいれたがるんですね。
柔軟剤は何で柔らかくなるかといったら、これも化学変化ですね。生地にひっついて、エマルジョンっていって樹脂化して、つながるっていう。
柔らかいっていうのは一本、ぐちゃぐちゃっていうのは固いんですね。隙間があって空気が入ってるから柔らかいんですね。
だから柔軟剤っていうのはいろいろあるんですけども、うちで使っているのはなるべく自然なものを使いたいっていって自然なものを使っています。でもコストは高いんですね。10倍ぐらいしますから。
従来から皆さんが着てるやつは、一回問題になったんですけど、ホルマリンって危ないですよ。
ホルマリンって面白いんですけど、アンモニアから化学変化させてやるんですね。ホルマリンは人間の細胞を殺しちゃうんですね。
だから子供の中に入るとせっかく成長するっていう細胞を殺しちゃうからすごく駄目なんですけど、だから子供の服とかにはノンホルというのが求められてるんですけど、
実はホルマリンはちょっと分子を一個入れるだけで、皆さんが着てるいろんなものに普及してるんですよ。
この化学式でくっついてる分は、ぽんと外れたら毒物になるもんがなんぼでもあるんですよ。そういうなんは、意外と僕ら使ってる専門家も知らない。
これノンホルだからいいですよって、でも化学式見たら、ほとんどホルマリンと変わらない。一個分子がついてるだけで。
そういうのを木村先生は常々心配されていました。「何かの加減で戻る可能性がある」と。
それは柔軟剤、ああいうの首にまいたりストールしますやん、あれははじめは柔軟剤は怖くて使わなかったんですね、
化学式がちょっとどんな形で空気中の空気、今中国からいろんなものが来てますやん。ああいうのは安定していない。
人間の体に入って、先ほど言ったように化学変化しちゃうんですよ。細胞にくっついちゃう。
ストールとか、色が変化するってことは化学変化しているんですね。
何の物質になっているかっていったら、もしかしたら有毒なものになっている可能性もあるし、それがまた洗濯でお風呂場で洗うとしたらそれが人間の体にくっついてしまう、付着するってことですからね。
そのすぐには分からないかもしれないけど、次の子どもが生まれたときに何らかの変化があるっていうのは、環境ホルモンってものですね。
たとえばノニフェノールという環境ホルモンは、昔から接着樹脂で絶対入ってるものなんですね。環境ホルモンは、僕の調べたところでは前は560種あって、毎年増えてきているんです。でも最近いわなくなってるんですね。
--たしかに最近聞かないですね。
結局ここらへんも次の世代、その先の世代に絶対出てくるであろうということは科学者は知ってるんですね。
でもどうしようもない。今、安いものとか、そういうもので生活できるようになってますから。
(安全的に)ぎりぎりの線でいってる。今後危ないなあというものを使っている現状があるっていうのは知っていただきたいですね。
理想と現実のあいだで
--柔軟剤のことをもう少しお聞きしたいんですが、御社で使われてる柔軟剤の原料はどんなものですか?
海洋コラーゲンです。肌に塗るやつですね。化粧品で肌を柔らかくするのと同じグレードのものを使ってやってるっていう。
誰でも使うわけじゃないですね。こだわっている方に通します。「ちょっと高くなりますよ」と。
高いといっても十倍もするわけじゃないです。でも今まで世の中は10円20円を削る、けちるっていう。こっち(安いもの)しか使えないっていう時代だったので。
うすうす分かっていても、うちも決して順風満帆というわけではないんです。
今、プリント部門の仕事では、顔料の中身もメーカーもうちは全部すべて言えます。ただそれは中でブレンドしてるんですね。お客さん(アパレルメーカー)に聞いた内容で中身のブレンドの仕方を変えています。
めんどくさいことしてるでしょ。
見え方とか、色中心とか、堅牢度中心とか。古着風にするとか、そういうことが可能なんですね。総柄風にするには摺り手が刷りやすい、とかね。
難点なのは、その中に皆さん使われている染料とか、顔料にたとえますと、かきょうざいっていうのがあるんですね。架橋剤。
ほうかざいっていう言い方を皆さんしてるんですけど、架橋ってなにかというと、分子と分子をくっつける、手ということです。よりくっつける。
分子なんですね。合成でできたものなんですけど。
これはすごく不安定なもので、空中に出ると人間の体にすぐ反応しちゃうんです。で、これ説明書を見ると毒物って書いてあるんですね。
毒物をいれながら出さしたもの。それが市場のほとんどに出回ってる。
うちはそれを使ってないんですね。すごいやんって思うでしょ。
--思います。
それは何かというと、手間かけてるんですね、やっぱし。
コンベアっていう熱処理をする機械、700万ぐらいの機械があるんですけど、うちこんな小さな工場で買ってしまったんです。
でもその値段、電気代と人の割増分もらってないんです。もちろんよそには勝てない。だからそういうものがなくなっていくんです。
架橋剤を入れたらその日にすぐ出荷できるんです。でも僕らはそれを使ってないから一日必要なんですね。
寝かしてから熱処理する。だからコストは高くなる。でもそれは一般の方には分からない...そんなあほらしいことありませんね。だからなくなっていくんです、仕事が。
だから中でがんばってるんですけども、何せコストがあがってきてますんで、実をいうとそこ(プリント)から撤退しようかなと。この設備も。
だから染めの方に切り替えていってるんです。(昔の体制に)戻すわけにはいかないんでね。
今、現場サイドと消費者と、真ん中にアパレルってあって、その辺の意志がうまくつながってない。今までですと、お客さんいるから守ろうと一切口にしてませんでしたけど、もう守るものもなくなりましたんで。
世間に出てるものは全部そういうものが使われてて、一手間を減らしている。
ただそれは加工屋さんが悪いわけじゃないんですね。やはり求められるものにはそういうものが必要。だから毒物っていうものは、皆さん命かけてやっておられますんで。
僕らの年代の先輩たちは、データ的にほぼ間違いないのが、50~60歳ぐらいでなくなっています。70まで生きておられません。それほどきつい毒物です。そんなものが一般の方に渡っているっていうのが現実。
ある時(染色材料を?先方に要確認)売られている方に質問状を送って返ってきたことが、書面で書かずに口頭でいわれたのが、「使うな」と。
「そういう材料嫌やったらうちで買わんといてくれ」と。
もうひとつの回答は「それは消費者に渡るときは大丈夫」と、化学変化してるから。
これは何かといいますと、化学変化させると大丈夫なんですよ。ただそれは適量入れた。はかっていれた量。それが適当、自分の都合の量が指定通りにやらなかったら残ってるんですね。
その残った分どうなるかというと、洗われずにそのままいくと、買われた方は絶対にそれは残りますよね。そういうことをちゃんと認識してるかというと、誰も言ってない。
--それは現場の裁量とかで変わるものだから...
そうです。調べようがない。安い服ほどそういった問題は隠れていますよね。そういう問題もいずれかこの先出てくるであろうと思います。
ただ僕らはちょっと早すぎたかもしれませんね。7年、8年、一回も曲げずにやっておりますから。そういうことを。
「徹底的に安全なものを」という原点
--川端プリントさんは3代続いておられますが、今のスタイルにする前は普通の染色屋さんだったんですよね。社長はなぜこういうことをベースに置こうと決意されたんですか?
昔プリントしてた子供服のメーカーから、当時発砲プリントていうのをやってたんですけど、それを「赤ちゃんが食べてしまった。大丈夫ですか?」っていう質問が来たんです。書面で来ました。
「カワバタさん、これ、大丈夫なのか書面書いてくれ」って。
要するにプリント屋さんの責任やと、説明責任があると。
んで、書いたんですね。でも書くにも僕その頃考えがなかった。まず安いものでええもんでかっこええもん作ったろうという考えでした。
そんで、はじめてそれを分析するにはどうしたらいいかわからなくて、いろんな専門家を回ることになったんですね。
まず回ったんは材料を仕入れてるところに質問状を送ったんです。でも電話では「大丈夫」しかいわない。書面が必要なんです、証書書いてくれと。そしたら困らはって(苦笑)
「消化するもんや」と。何が入っているか教えてくれなかったんですね。
でも消費者は即答がほしいから。残念ながら書き方が分からないから、僕はアパレルの指示通りに書いたんです、「安全です」と。
ただ僕もやってることに対して、「ほんまにこれは大丈夫なんか」と調べる火がついたというか。
そしたら毒物やらいろんなもの出てくる、「これ食べたらあかんやん」となって。
だから食べても、間違えて口にする可能性があるから、食べても大丈夫なようにやろうといって、「イープリント」っていうのを開発したんです、6年前に。すぐに新万葉ぞめもやりはじめたんですけど。
イープリントの何がすごいって、食べれるんですよ。コンニャクで作ってあるから。
僕が考えたんじゃなくて、江戸時代のプリントをいろいろ調べたんです。そしたら当時はニカワかコンニャクしかなかったんです。
ほんでニカワは、接着はいいんやけど扱いにくいなあと。一方コンニャクはいけるんちゃうかと思って。
で、コンニャクと、セリシン(シルクの成分)と、それとキトサン。かにの甲羅ね。
--まるでサプリメントみたいですね!
要するに高タンパク質。高タンパク質なものはなにかと調べてそれを全部仕入れたんです。
それをとかして樹脂化してくっつけて、いろいろやったんですけど、その中で残ったのがコンニャクでした。
それぞれよさがあるんですよね。
卵白はどうやって調べたかといったら、キューピーマヨネーズってあるでしょ、あれ長谷川商店っていって昔大阪にあったんですね。ほんで研究所に、「昔長谷川商店から仕入れてたもんです」って電話入れてね、僕行きました(笑)
「昔プリントやってて覚えている人、誰か技術者いますか?」っていったら、たまたたまいた。その仕入れた先の方が。それを頼りにいったんです。
そんで研究所に行って卵白の実験を始めた。親身に教えてくれましてね。
卵白ではどうしても弱いんです、洗濯が。
でもそんなかに群馬から仕入れたコンニャクをブレンドしてやったら結構使えた。キトサン入れると今度は堅すぎて、一番接着がいいんですけど、切れないんですよ(笑)
--おもしろいですね!普段食べてるものの特性でいろんな可能性が見えてくる。
そういうノウハウはあるんです。そういう趣味でやったとこが本業になりつつあるんですね。
そのときこの中は石油系でばんばん生産しながら、だんだん変えながらやって、コスト合わない場合もずっと続けたんですね。かといって戻して、迷いながらやってました。
でないと非常勤合わせて(スタッフが)20人ぐらいいましたから。その人ら食わしていかなあかんというので、その狭間の中でやり続けて、ていう時代がありましたね。
ただ値段が合わない、それはできない状態についてるのが現状です。そういうの分かっておられるプリント屋さんも他にもいますけど、この前潰れました。
これって難しくて、環境とかあんまり考えると、やっぱりコスト面とか、一般の方に大量に支持される時代ではないっていうのが実証されたので。
やっぱりきちっと説明して、ちゃんとした量を作っていく。そういうことも長年の。
こういう商品は、一部の方には、残念だけど、一部の方です、今は。一部の方を大切にして商品を提供するっていう役割があるっていうのが今の僕の持論ですね。
--相手の会社さんの中でも葛藤があったでしょうね。
そうですね、特にデザイナーさんなんかはその狭間で苦しんでやめていきましたね。
デザイナーも悩むんです。デザイナーはやりたいんですね、やっぱし。
その先、もっと上の部署にあがっていくと拒絶反応を起こしてしまう。精神的に苦しめてしまう。なのでこっちからはあんまり営業はしないようにしましたね。
実際に前やめたところのデザイナーも、共感はして応援はしてくれました。でもやっぱり上の方で叩かれましたし。従業員からも、彼らは現場をリアルに分かってますから。
僕の覚悟は、自分でしていくということで、ストールだけしかよう作らないのでね。
ただアピールの仕方は下手ですね。実際にいろんなところでいわれると意地になって言い返すからだめなんですよね(笑)
「絶対大丈夫」という自信と責任をもっておくりだしたい
7年間続けてきて...踏ん張っているという言い方かもしれませんけどね。商品化するまでにすごく日にちをかけてるんですね。
藍染めでも、いろんなところの国やメーカーのを仕入れてみて、紫外線でも試してみて。「じれあかん」といわれているのは、「あかん」っていうのは人間が勝手に思ってるだけで。
こうやって扱えばいいっていう、デメリット表示ってあるでしょ。あれはお客さんを、自分を守るためのデメリットになってる。
だけど本来は違うんですよ。「こうやって扱ってたら、ちゃんとした愛情を持って扱ってもらえます」ってことなんです。
そういうの(の実証は)実験しかないんですよ。その道のりは、ひとつのものを産むのに5年とか、かかっちゃうんですよ。どうしても。
--万全を期して世に出せるまではそれ位かかる、ということですね。
今は時代が早すぎるんですね。僕は昔の考えっていうか、それが絶対商品が必要なことやと思って、すごく実験はしてますね。それに見合った収入がないっていうので苦しんでるっていう現状はありますけど。 でも、買ってくださるお客さんはいます。 一匹狼でやってきましたんでね。一匹狼っていったらかっこいいけど、ちょっとひねくれてる。ゆうてみたらぶれない。だから一緒にやっていって途中で離れていった方も結構いますけど、協力してくれる人もたくさんできました。
全部理想と現実なんですよね。昔、マリーゴールドを栽培するために、4年前に木村先生と宮古島に渡ったんです。
マリーゴールドは日本の大方の地域で同じように栽培できるんですけど、当時は実験してないからそれがまだ分からなくて。沖縄から北は岐阜県ぐらいまで、各地で同時に栽培を試験的にやったんですね。
同じ種類でやったんですけど、色素はほぼ変わりませんでした。ただ栽培する量が違うだけで。
これぐらいやったら知識があったらできるんなあと思ってやり出して、3年たちました。本格的に栽培したんは13年からです。
協力してくれたんは、大阪の箕面、それもNPOですね。もうひとつは岩手県の釜石。津波の被害のあったところ。
もともと震災のあったときに、あの辺の女川とかよく行ってたんです。そういう兼ね合いで、
向こうから「地域でマリーゴールドを栽培したい」と「津波で荒れ果てて何もないからやりたい」ということで。もうひとつは、町田の畑を使わせてもらって。
その三か所と、それとうちの自社農園。計5か所からマリーゴールドが安定して入るようになったんですね。そこでマリーゴールドで最初に染めました。
小森さん「すごいきれいな色で、私も大好きなんです」
あとはログウッド。紫色ができる色素がありますね。それ木の中の芯を使うんです。
マメ科の木で、五年で太くなるんですね。そこから染められるようになるんです。どんどん大きくなって、街路樹です。
日本で探してもどこにもないし、植物園にひょろっと生えている。これはカリブ海、海沿いにあるジャマイカ、グアテマラ、メキシコ、そのへんでとれます。
これはマヤ文化で使われた色素で、媒染剤でいろんな色が出るんですね。
日本でもログウッドって売られてますけど、あれはフランスから来てて、フランスから取り寄せたものもしくは中和したものを使っていて、木の状態で入っているものはどこもないです。
--そうなんですか?
事情があるんです、国の政策の。あれは海外に持ち出したらあかん。なぜそうなっているかというと、フランスが買い占めてるんです。ログウッドすべて。だから日本は手にできないんです。
--知りませんでした...
実をいうとマヤ文化ってすごい色の文化でもあって。すごくあるんですね、魅力的なものが。「ゲロップ」ってご存じですか?
--いえ、わからないです。
アーミー服ってあるでしょ。あの黄色は全部自然の色なんですね。洗濯しても落ちない、紫外線にあててもおちない。 (色がつく天然のものは)あるんですよ。なんぼでも。僕らが知らないだけで。
--夢が広がりますね!
ただ、何でそれを仕入れないかといったら、やっぱり僕の考えでは、日本で栽培して日本でできるものでやろうって。 なるべくなら栽培しないと自然を破壊するって根本的なのがあるんですね。理想ですけど。
なんでそんなんいうかというと、アカネ。アカネを仕入れてるんですね、インドで。
一番質がいいのは、不思議やねえ、地域によって特徴がある。インドのヒマラヤのが一番いいんです。セイヨウアカネ、ニホンアカネ、いろいろあるんですけど。
アルダリンっていうんですけど、全部地域によって同じアカネ科かで色もだいたい一緒、中に含まれている色素が12種類あって、その分子の多少は違うんです。ニホンアカネが一番日の丸のアカネ、真っ赤っ赤。セイヨウアカネはちょっとオレンジっぽいんです。
インドアカネはすごく濃く色がでて堅牢度もいいんです。だからインドアカネなんですね。
でも日本で栽培したら外来種になるかもしれませんね。
うちは7年前、インドからインドアカネを2トン仕入れたんです。
--2トントラックいっぱいって事ですよね?すごい量ですね!
その頃ってまだ知識ないですやん。輸入コストを考えたんですね。コンテナが2トンやったんです。これはビジネスになると考えた。これを5年ぐらいで消費しようと。
売れることしか考えてなかったから、どんどん仕入れちゃったんですね。でもそれで5年保つんかも分からない。でも一回仕入れなあかんから、入れちゃえと。
すごい量。今、倉庫に寝てるんです、大阪湾の。ずっと置いてあるんです。
--どういう状態で入ってくるんですか?
根っこのままです。木も木のまま。
新万葉ぞめは粉末にしないといけないんですね。粉末の色の分子は200メッシュ。ここがミソなんですね。
それするにはうちのなかの技術で粉砕するしかないんです。誰もできるわけじゃない。だから海外で粉砕したのが入ってきても新万葉染めじゃないんですよ。
ある程度は細かくしてもらうんですけど、そういうのは全部自分で。下手したら粉砕した中に他の赤いものを入れられても困りますし。
--確かにそうですね。
でね、そのときヒマラヤの山は、そのインドアカネをとるために、たぶん裸になったんちゃうかなって。想像したんです。
2トンってすごい量でしょ。栽培しているわけじゃない、自然のものでしょ。これ自然破壊ですよね。その時は気づかなかったんです。
--そうですね...
使う量だけでいいんですよ。一回ずつ染める量だけ仕入れて。
新万葉染めの良さは少量で染まるんです。今まで1回染めるのに100グラム必要だったのが、3%ですよ、100グラムやったら3グラム。ということは、2トンもいらない。何十年分になる。
--確かに。全然いらないですね(笑)
大企業が手を出さないのはここなんです。庭でできちゃうからね、一生分。一生懸命沖縄やらに走る必要はないんです。自分の土地をちょっと借りたら良いんです。
そういう発想は最初になかったから失敗したなと。でも仕入れたから倉庫に捨てられないからずっと使ってる。
ちなみにログウッドはなくなりました、100キロ仕入れて。
--本当に少量でできるんですね。でもアカネの件は考えさせられます。
「どんなに良いものでも過度になれば負担になる」って、私たちもついビジネスをしていると忘れがちになってしまう。
よく考えないといけないですよね。
ビジネスの仕方を一から考え直すええ時代になったんちゃいますかね。
工場時代も大きく固定費やら電気代やら見た目はすばらしいですけども、出て行く一日の光熱費やらね電気代は1万以上かかっちゃいますし。ボタン来てはいつけました、いうたらそれが無駄なことしてますね。
そうならないようには、この時代に見合った工場に変えていこうと。この一年はいろいろと変えていこうと。
最終的にはこういう広い場所は必要ないんで、それを畑やそういうとこを所有しながら、お店を見える化しながら作っていくという形に変貌しようかなと。
--今年は大きな次へつながる動きのある一年になりそうですね。それは京都でですか?
京都、この周りで。だから今やっているところも、場所を借りて。せっかく何でね、 eプリントとかさっきちらっといったものも、一般の方に見ていただけるような形にはしていきたい。まあまだ課題は残っていますけど。
染めのようすを実際に見せていただきました
新万葉染めは省資源でできるので環境にもやさしく、地球を汚しません。
今回私たちのために、1枚のストールをマリーゴールドの花びらの色で1から
染める様子を実際に見せていただきました。
マリーゴールドの粉末です。ここの屋上でやってるやつです。むしもわかない。
--サラサラですね!きれいだし、お花のいい香りもします。ここまで細かくなると、純粋な「色素」という感じですね。これは花の部分だけなんですよね。
花びらだけを使っています。花びらをばらばらにする作業がなかなか大変です。
--バラとかでも染まるんですか?
花びらって色材としては弱いんです。マリーゴールドは特殊なんですけど。
--基本的には根っことか枝とかの方が良いんでしょうか。
花の色素って実は全部染まらない色素なんです。 「色」は人間の目が見て、紫外線が反射して映っています。これはずっと変わらないんですね、人間の見てる周波数。 でもバラとかあんなやつは、ずれてくるんです。だんだんずれてきて見えなくなる。だから自然なものは色がなくなってくる。 たとえばバラの花びらのお風呂をしても赤くならないですよね。
そもそも人間の手ってプラスイオンだからくっつくんです。染まりやすい。
お歯黒って昔の人がやってたのは、木の色素で、鉄でくっつけて。あれは染まっちゃうんです。せやけどバラの色素で染まったものを食べても歯は染まらないでしょう。
--なるほど、そういうことなんですねー。マリーゴールドはその中でも特殊と。
そうですね。マリーゴールドを使うと黄色いお歯黒ができます(笑)
木村先生は染まるかどうか周波数を調べて、データでとられて「それはだめやで」とかおっしゃっていました。
木村先生がここにいはったら今の質問で1時間くらいしゃべると思いますよ(笑)
媒染剤をいれるとさらに色が鮮やかになりますね。マリーゴールドはすごいです。布の5%の素材で染まる。従来(一般の草木染)だったら100%。 さっき言ったアカネはその感覚で仕入れてしまったんですね。。
--色はどうやって固定されてるんですか?
媒染にはミョウバンを使ってます。
ミョウバンって口にする、漬け物なんかにする、焼きミョウバンってあるんですけど、これは染色に使うミョウバンでちょっと違うんですね。
口にしても安全ですけど、口に入れるものではないです。まずいです(笑)
染色
花のカスがいたずらするんで、それを洗って落とします。もう洗っても(色は)落ちません。
--お湯の色はそんなに濃い感じがしないのに、すごくしっかり染まります!ムラというか花のグラデーションという感じですね。
自社でも新万葉染めで染めたストールを作っているんですが、安心するので枕元において寝られるという方もいらっしゃいます。 染めてすぐはにおいがあるんですよ。青っぽいというか草っぽいというか。
--緑はどうやって作るんですか?
緑はマリーゴールドと藍を使います。
マリーゴールドを染めてから、染まったものを藍につける。その濃度を変えていろんなグリーンができるんです。
京都と染色、つながっていく文化へのおもい
京都は昔から着物業が盛んで、このあたりも一つの通りごとに任される工程が細分化している。
この通りで織って、この通りで染めてという風に。大きな流れの中に存在しています。
なぜ京都で染めるのかといったら、京都の地下水がきれいなんですね。染色に適している。でも今はあんまり地下水使ってないですよね。反対されるんです、地盤沈下とか。
地下鉄が通ってから水量が変わったり、他にも経済的な問題もあったりで今はなかなか自由に使えません。
でもほんまゆうたら、京都の水で染めると色が違うんです。それは軟水と硬水の違いでもあります。軟水は染めやすい、硬水は染めにくい。水の中の成分、さっきも言ったけどイオンが関係してるんですね。
--酸性雨に濡れると干してるものの色が変わっちゃいますよね。
それも化学変化ですね。やっぱり水道水で染めると色が違うんです。水道水は塩素系が入ってる。塩素で染めると色が変わるんですね。塩素ってアルカリなので。染めには一応適してるんやけど、ちょっと色が違う。
それがどっちがいいかっていいかって語られへんけど、昔の人はそのあたりにすごくこだわってたんです。「京都の水で染めたらええ色や」と。
昔の方は「絶対日本の水の方がええ、洗いも染めもきれいやし」と言っていたんですが、中国で染めて色が少し違っても、もう業界の方も誰も何も言わなくなった。
だから、歴史にはちゃんと土台があるんです。京都で織物が盛んだった理由もある。そういう事も僕らはわかってるけど、外には伝えないと分からない。
--考えてみれば本当に基本的なことですよね。自分たちが来てるものに色がついてるって当たり前じゃないじゃないですか。だけど私たちはそういう風に「考えてみようよ」っていうきっかけもないまま大人になってしまって、そうなっちゃうとしっかりと作られたものが選択基準に入ってこなくなっちゃう。大人も軸がないままにもの選びをすることになっちゃう。
服に色が落ちないのは当たり前。でも色が落ちないところにどんなものが使われているかというのは絶対メーカーは言えないです。毒物とか入ってるから。
そういうこと考えていくと、専門家の知識がいる。
--昔、それが当たり前じゃない時代はどうだったのかっていうのを一度知っておければ...
選ぶ基準になりますよね。
--こんなにお話ししてくださって、本当にありがとうございます。
私たちみたいにちょっとだけ外にいると言えることであっても、業界の中にいる人は捨て身にならないと言えないことじゃないですか。「知ってほしくない」「言わないでほしい」そういうことも沢山ありますよね。
難しい問題だし、僕自身がこれを語ってしまうことで知ってる人にまで迷惑がかかってしまうというところはあります。
でも、戦うつもりならとことん戦うつもりでないと。中途半端な足だしはせんほうがいい。そういう気持ちでやってます。
ありがとうございます。
「新万葉染め」という言葉だけでは伝えきれない
川端さんのこだわりをたくさんお聞きできて、本当に嬉しく思います。
本日はお忙しい中にお時間をいただき、本当にありがとうございました。