京都・宮津 飯尾醸造のお酢
明治26年創業。原料米の無農薬栽培50年。“ほんもの”の純米酢はこれ!
「おいしくて、安全な、最高のお酢」を造りたい。
明治26年創業のお酢や 飯尾醸造は地元 京都・宮津の農家さんと共に
昔ながらのお酢づくりを120年間変わらずつづけています。
飯尾醸造の商品には量産品がありません。
素材選びから、手間ひまを惜しまない工程を通じ、最高のお酢造りを貫くことが飯尾醸造の誇り。
農家さん、杜氏、飯尾醸造が丹精込めて造ったお酢をぜひご賞味ください。
あなたが使ってるお酢は“ほんもの”ですか?
現代ではとっても貴重な、無農薬の新米と水だけが原材料の純米酢「富士酢」
原料のお米は無農薬の新米のみ。酢1リットルにつき、200gもの米を使います。
一般的にお酢の原料米には、古米やクズ米、米ヌカなどを使うメーカーが多いそうですが、飯尾醸造では、その年の秋に収穫した新米だけを原料に、お酢を仕込んでいます。酢1リットルにつき200gというたっぷりの米を使用することで「純米富士酢」の深いコクと味わいが生まれます。これはJAS規格が法律に定めた「米酢」と表示するために必要な基準(40g)の5倍もの量にあたります。「富士酢プレミアム」はさらに多くの米を使っています。酢1リットルにつき320g。JAS規格の8倍もの量です。素性の分かる新米だけをこれほどまで贅沢に使った米酢は他にないのではないでしょうか。
たっぷりのお米で仕込んだお酢は、ただ酸っぱいだけでなく、コクとお米の旨みがよく感じられます。
JAS規格の米酢と飯尾醸造「富士酢」の比較
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40g = JAS規格
JAS規格で、米酢と表示するために定められている米の量は、1リットルにつき40gです。 ただし、それだけではお酢が作れないため、「醸造用アルコール」(「アルコール」「酒精」とも呼ぶ)を添加して造るのが一般のお酢です。 「醸造用アルコール」は、エタノールと同じものを表します。 とうもろこしやさとうきび由来の廃糖蜜から作られますが、遺伝子組み換え作物が原料であることが多いようです。
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120g = 純米酢
米だけでお酢を造るのに最低限必要なお米の量は、1リットルにつき120g。120gの米があれば、水を加えてもろみを醸し、お酢にすることができます。
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200g = 純米富士酢
「純米富士酢」に使っているお米の量は、200g。これはJAS規格の5倍もの量にあたります。お米の旨味がしっかりとあり、すっぱいだけではないお味です。
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320g = 富士酢プレミアム
「富士酢プレミアム」に使っているお米の量は、320g。これは実に、JAS規格の8倍量にあたります。お米の旨味がたっぷりで出汁が入っていると錯覚する方もある程です。おだやかな酸味が特徴です。
昔ながらの酢の製法を守る
いい酢はいい米から。地元宮津の棚田で無農薬のお米作り
京都市内から車で約2時間、日本三景のひとつ、「天橋立」の近くに飯尾醸造はあります。蔵の目の前は日本海、車で数分走ればたちまち緑いっぱいの山と美しい棚田が望めるのどかな田舎で、明治26年から現在まで昔ながらのお酢づくりが行われています。昭和39年、現在頭首である5代目のお祖父さん、3代目の輝之助さんの頃から地元、京都・宮津の棚田で無農薬のお米を栽培してもらい、その新米のみを原料に富士酢は造られています。米の品種は8割が“コシヒカリ”、残りの2割が麹づくりに用いる“五百万石”になります。
わらぶき屋根の民家が点在し、里山の景観が残る日本の里100選にも選ばれた宮津市の北部、世屋(せや)地区は飯尾醸造の契約農家さんの畑の中で一番標高の高い棚田がある場所。標高が高く豪雪地域である為、冬場は積雪量も多いこの地域。4月下旬頃、近畿地方でもひと足遅く開花する「松尾の一本桜」という桜の名所でも有名なこの場所からは、緑豊かな山々と美しい棚田、その向こうに宮津の町並みと、遠くに日本海が望めます。
標高200mあたりの棚田。
周囲に民家や大きな建物は一切ありません。
棚田の後方。
空が近く緑の美しさに癒されます。
この美しい棚田で契約農家の方々が丹精込めて、田植えから稲刈り、天日干しまでの米づくりに励まれています。農薬を使わず、日々草を抜き、害虫の駆除には薬品を用いることはなく、飯尾醸造の玄米黒酢を薄めたものを稲に噴射することで虫からの被害を抑えています。害虫駆除に用いる玄米黒酢は製品として完成したものを適宜水で薄めただけのもの。この原料も同じ場所で摂れた米を使用しています。
人里離れた棚田でお米を作るのは、他の田んぼで使った農薬や生活排水の影響を受けないようにするため。昼夜の寒暖差も大きく、水が綺麗な棚田で収穫されるお米は最高の味わいを持ちます。
蔵人が米作りをしている棚田
五代目当主 彰浩さんと
米作り担当の伊藤さん
現在は棚田の景観を守るため、世屋地区から少し離れた場所ですが、蔵人も農薬を使わない米作りをされていて、4月の田植えから10月末くらいの稲刈りまでの間は つきっきりで米作り、収穫後はお酢の仕込みまでを担当するというふうに、お酢造りの最初から最後までを蔵人が携わることで、飯尾醸造ならではのお酢が生まれています。
親から子、そして孫へ。3代にわたる、農薬を使わない米作りへの決意とこだわり
3代目の無農薬の米作りへの決意
3代目が農薬を使わないお米づくりからお酢を造ろうと決意した頃は、昭和30年代の高度経済成長期。この頃は大量生産・大量消費が美徳、無農薬や環境保護という考え方自体がほとんどありませんでした。毒性の強い農薬がどんどんまかれるようになり、フナやドジョウなどの生き物がいつのまにか姿を消していく。そんな光景を目の当たりにした3代目 輝之助さんは、「こんな田んぼで作ったものを食べたら体がおかしくなるんとちゃうか。こんな米から酢を造っとったらあかん!」と感じたそうです。しかし、そんな時代だったからこそ、農薬を使わない米作りを頼むのはとても大変だったそうです。2年もの月日をかけて農家の方々を説得し、昭和39年に念願の農薬を使わない米づくりがスタートしました。
4代目の農家・農業への想い
農薬を使用しない米作りは毎日が雑草との戦いのようなもの。3代目の決意を引き継いだ息子の4代目毅さんは、農家の方々の負担を減らしたいという強い願いをもっていました。農家の方々と協力し、さまざまな農法を研究、実践すること20年余り。現在は、再生紙黒マルチ農法で米作りを行っています。この農法は黒い紙(マルチ)を敷きながら田植えをする方法で、黒い紙を利用すると日光がよく集まり稲の生長が促進され、自然にマルチが水に溶けて土に返るまでの間、雑草が生えてこないことも大きな利点です。この農法だと特殊な田植え機や資材が必要になり、費用面では高くつきますが、その費用を飯尾醸造が負担。できあがった米の買い取りも高く設定することで農家の方々は安心して農薬を使わない米作りに取り組んでおられます。
5代目の新しい試み 開かれたお酢やへ
このような4代目の後姿を見て育った現当主の5代目彰浩さんは、大学入学以降の10年間を東京で過ごし、農作業の経験はありませんでしたが「宮津には都会に無いものは何でもある」ということに気づきました。耕作面積がどんどん少なくなってきている棚田の景観を守るために、米作りができなくなった契約農家から曲がりくねった棚田を借り受け、蔵人が手作業ではじめた米作りの様子をブログで発信し、都会ではできない体験を宮津でしてもらおうと田植えと稲刈りの体験会をスタート、今では毎年のべ100名以上の方々が参加される一大イベントになりました。自分が植えた苗が、刈った稲が、お酢になって手元に戻ってくる。どんな人がそれを造っているのかが分かる。3代目の決意から生まれた米づくりが、現在ではお客様へ開かれたお酢やの試みとなってこれからも続いていきます。
稀少なお酢やの“もろみ”仕込み
毎年冬には自社の酒蔵で杜氏が泊まり込みで「酢もと醪(もろみ)」を仕込みます。収穫したお米を自社で精米から行い、麹づくり、酒母づくり、もろみの仕込みと昔ながらの製法を守る飯尾醸造は日本酒とほぼ同じ工程でもろみを造っていきます。
自社で全ての米を精米します
もろみ(酒)づくりはまず精米から始まります。近頃は酒屋さんでも、精米は他にまかせるところが多いようですが、品質第一に、目の届くところで造りたいという考えから、 飯尾醸造では精米も自社蔵で品種ごとに丁寧に行っています。自社で一貫して行うことで、精米機の中でよその農薬使用米が混ざることを避けられるからです。
自社の蔵で、杜氏が“酢もともろみ”(酒)も仕込みます
精米を終えた米は、洗ってから一晩水に浸され、大きな蒸し釜で約60分蒸されます。精米歩合は平均して83%程度。一般の日本酒よりも低いのは、美味しい酢づくりのために、タンパク質を多く残す必要があるからです。蒸し上がった米を40℃まで冷まし、米粒に麹菌をまんべんなくまぶしてから、麹菌を繁殖させるため麹室へ移します。麹室はむっとするような蒸し暑い空間。室温29℃、湿度70%に保たれています。固まった米粒に何度も手を入れてほぐしてやりながら、丸2日かけて糖化力とタンパク分解力の強い麹を作ります。できあがった麹は、麻布の上に広げて常温まで冷まします。良い麹を作ることは良いもろみ(酒)造りの要、つまり美味しい酢造りにおいても重要なポイントとなります。
麹ができあがると、酒母を造ります。小さなタンクに水と麹を入れ、酒造用の酵母を加えます。これに蒸し米を入れて撹拌すると、酒母の仕込みは終わります。仕込み終えた酒母は、7℃から20℃の間で約2週間、複雑で細やかな温度管理をしながら酵母を増殖させます。この厳密な温度管理が、元気な酵母を増やす決め手となります。
酒母ができると大きなタンクに移し替え、もろみ(酒)の仕込みが始まります。水、麹、蒸し米の順にタンクに投入しますが、 一度に大量に入れると発酵力が弱まるため、3回に分けて行います(三段仕込み)。最初の投入から2日後にはパシャパシャと音を立てて発酵が始まり、約30日かけてもろみ(酒)ができあがります。この間杜氏は、発酵の具合を確かめ櫂を入れるなど、一日中つきっきりで世話をします。
できあがったもろみ(酒)は、「酢もともろみ」と呼ばれます。アミノ酸が多く、味は濃醇甘口。この雑味と旨味が、のちに美味しいお酢へと変わるのです。
時間と手間、職人の勘から生まれる、まろやかな味わいの酢
「酢もともろみ」をお酢蔵に運び、ようやく米酢の仕込みが始まります。タンクに種酢と水、「酢もともろみ」を入れて40℃に温め、表面に酢酸菌膜を浮かべます。 種酢とは、120年前の創業時の酢に代々継ぎ足し、継ぎ足しされた現在の味の要となる重要なもの。酢を造るのに全体量の3分の1の量が必要です。この酢酸菌膜が2~3日後にはびっしりとタンクの表面を覆い、酢酸発酵が始まります。この酢酸菌は、蔵に120年以上前から住みつく伝家の菌。この菌が持つ個性が「富士酢」の味や香りの個性となります。
時間と手間はかかっても「古式静置発酵」でお酢を造ります
飯尾醸造の蔵では「静置発酵」とよばれる昔ながらの製法でお酢を造ります。これはタンクの表面の酢酸菌が、80日~120日間ゆっくり時間をかけて自然にアルコール分を酢にかえていく発酵法です。時間と手間、職人の勘が必要ですが、醸造している間に酢酸と水が調和し、まろやかで旨味の多いお酢を造ることができます。
残念ながら多くの酢のメーカーでは、効率を優先させるために機械で人工的に空気を送り込み、1日で発酵を終えてしまいます。この速醸法は「全面発酵」と呼ばれています。
※酢酸菌は好気性の菌で、空気に触れる面で発酵します。「静置発酵」では液面でしか発酵が進まないのに対し、液体内に空気を送り込む「全面発酵」では全体で発酵が進むため、速くお酢ができます。
発酵が終わった酢は、熟成蔵に移され、ゆっくりと時間をかけて熟成されます。熟成期間は最低でも240日~300日ですが、その間もただ寝かせておくだけではなく、何度もタンクからタンクへの移し替えを行います。5回以上移し替えて空気に触れさせてやることによって、できあがりの酢は、よりまろやかな風味に仕上がるのです。手間のかかる作業ですが、最高の状態で皆様の元にお届けできるよう、最後まで手を掛けています。
米から酢もともろみ(酒)を醸し、その酢もともろみ(酒)で酢を造る……。 昔から行われてきた日本古来のお酢の造り方です。ただし、いまだにこんなやり方を守っているお酢メーカーは本当に稀です。驚いたことに、400社余りある日本の食酢メーカーのうち、自社で製造の設備を持つのは3分の1以下。設備を持たないメーカーでは高い酸度のお酢を仕入れてきて、水でうすめて販売しているのが実状です。また、製造設備を持つメーカーの中でも酢もともろみ(酒)を造る酒蔵までも持っているところは、ほとんどありません。
無農薬のおいしい米を贅沢に使い、「静置発酵」で時間をかけて造った「富士酢」の味は
しっかり酸っぱいのにツンツンせず、まろやかです。
お米の芳醇な香り、濃厚なコクと旨みがあります。
実際に数値を分析すると、富士酢は酢酸の比率が低いことが分かりました。「酢酸」とは、強い酸味と刺激臭を持つ有機酸。揮発酸で、蒸発しやすい酸です。一般的な米酢は99%が酢酸ですが、富士酢は酢酸が86%で不揮発酸の乳酸、コハク酸、リンゴ酸など、穏やかな酸が多いのが特徴です。ツンとせず、酸が飛びづらいので酢飯にするとおいしさが長持ちすることを実感いただけると思います。
お米以外のお酢も富士酢のように丹精込めて造ります
飯尾醸造では、お米以外の原料からもお酢を造っています。お米以外のお酢も同様に原材料を吟味し、造り方も米酢と同様で、原材料からもろみ(酒)を造り、静置発酵でお酢にする工程を踏みます。原料ごとに違ったもろみの仕込みは、蔵人がほとんど手作業で行い、もろみ(酒)ができあがったら、静置発酵でお酢にしていきます。原料そのものを丸ごと使って造るお酢は 素材の味や香りがしっかりと感じられるだけでなく、天然成分がたっぷり含まれています。素材が良いのはもちろん、惜しげなくたっぷりの量を使うことも富士酢の精神です。
蒸した紅芋を掘り出し、すりつぶしてもろみにしていきます。
原料を袋に詰め、しぼり船に敷き詰めます。
もろみは蔵人4人の力を合わせてしぼります。昔からある「しぼり舟」は今も現役。
もろみを搾ったところ。鮮やかな色、良い香りがただよいます。※画像は無花果のもろみ