合成防虫剤の恐怖
『暮らしの安全白書』(学陽書房)より
防虫剤「ナフタリンとパラジクロルベンゼンは避けよう」
※『暮らしの安全白書』(学陽書房)より
使用を避けたいナフタリンとパラジクロルベンゼン
衣類の害虫は、人間に直接害になったり不快感を与えるわけではない。
しかし、虫食いを作り衣類をダメにするので、対策が必要である。
害虫の種類はイガ、コイガ、カツオブシムシ類などである。
衣類用殺虫剤は固型パック入り、錠剤型シートなどのタイプで売られている。
これらの有効成分は大きく4つに分類される。
それぞれの成分ごとの特徴をみてみよう。
代表的な衣類の殺虫剤はナフタリン、直接手でさわると皮膚が赤く腫れたり、炎症を起こすこともある。
製造する過程で不純物として混入してくるベンツピレンは発ガン物質であるとされているから、使用は避けたい。
パラジクロルベンゼンは頭痛、めまい、全身のだるさ、眼・鼻・のど・の刺激、腎炎などがある有機塩素系殺虫剤。また、白内障を起こすおそれもある。そのうえEPAが発ガン性ありと告示している。
毒性が低いように思われ多用されているが、潜在的な危険性がもっとも高い防虫剤である。
パラジクロルベンゼン系防虫剤を使うと、衣類の金糸、銀糸、ラメなどが、光沢を失ったり黒く変質することがある。これは塩素の化学作用が強いため、また、錠剤タイプのものは、誤って幼児が飲み込んでしまったという事故も多い。スイスのある湖では、家庭からの排水に溶けこんだパラジクロルベンゼンが魚に蓄積されているという話もある。
トイレの防臭剤としてぶら下げるタイプのあの鼻をつく丸い玉やドーナツ型も、このパラジクロルベンゼンが使われている。換気の悪いトイレにわざわざ発ガン性揮発物質を置いておくなど、百害あって一利なし。トイレの空気汚染濃度は高レベルで持続し、しかも戸を開けるたびに家中に広がることになる。真っ先に使用を中止しなければならない物質といってよい。
無臭だから恐いピレスロイド化合物
ミセスロイド(白元)、サザン引出し用防虫シート(フマキラー)など無臭のエンペントリン(ピレスロイド化合物)を主成分とする防虫剤も、最近普及している。ハンガータイプ、コーナータイプなど固型パック式や、シート、洋服カバーのビニールにつけているものもある。ピレスロイド化合物の特徴についてはすでに他の項目で紹介したとおり。無臭だから便利と思うより、無臭だから恐いと思わねば健康を守れない。
使うなら少量の樟脳を
学校や神社など公共の広場で大枝を広げている木の仲間に、クスノキがある。葉をとって匂いをかぐと、独特の芳香があることに気づかれた人も多いだろう。この匂いの成分が樟脳である。樟脳のオランダ語がカンフル。中国では太古より、ヨーロッパでは6世紀ごろから、医薬に用いられていたという。
中枢神経興奮作用があるために、かつては瀕死の病人に起死回生のため、抽出液が文字通りカンフル剤とかカンフル注射として使われたこともあった。現在はのどあめ、うがい薬、歯みがきや皮膚外用薬、また、セルロイドの原料として用いられている。
比較的高価だが、環境汚染の心配は少ないので、少量なら使用してもよい。
しかし、タンスや衣装箱の中の防虫剤の種類を急に変えたり、併用したりすると、衣類が痛むことがある。ナフタリン系防虫剤やパラジクロルベンゼン系防虫剤を使用している人は、衣がえのときにすべての防虫剤を出して衣類を虫干しし、いっせいに樟脳に変えよう。そのときに衣類の汚れやシミなどをクリーニングして落としておくこと、虫の卵を殺すためにアイロンをかけてから衣類をしまうなどの注意も必要。ただし、樟脳は引火性がある。幼児が誤って口にしないなど、取り扱いには充分注意したい。
電気蚊とり器
臭わないから使いすぎる
電気蚊とり器(マット式殺虫剤)は、殺虫剤を含ませたマットを熱板(150℃前後)の上に乗せて加熱することで有効成分を空気中に漂わせ、蚊やハエを駆除するものである。
マットは、室内にいる数匹の蚊が全部死滅した後も、有効成分が熱板上に残っているかぎり、一晩中殺虫剤を発散させつづける。
臭いがしないよう工夫されているから、最近の住宅事情から考えても、防犯上からも、使用する際に窓を開けていることはないだろう。しかし、マット式殺虫剤の有効成分アレスリン、フラメントリンはともにピレスロイド系殺虫剤。毎日吸いつづけていれば、化学物質過敏症にかかってしまう可能性は大きい。
一方、発熱装置にマットではなく薬液をコンセントにセットして通電すれば、殺虫剤が部屋の中に蒸散するのが、液体式電子蚊とり器だ(リキッド式殺虫剤)。
最近は、薬剤ボトル1本分を一度セットすれば、薬剤の取り替えなしで1日12時間使用して30日間使えるというふれこみで、30日蚊とりとして宣伝しているものもある。
蚊に悩まされる3~4ヶ月を、手間をかけずにすまそうと、たとえば薬剤ボトル3~4本使用したとすれば、135~180mlの薬液を私たちは毎日少しずつ吸いつづけることになる。しかも、ほとんど臭わないから気づかない。このときの空気の汚染濃度は、部屋の状態で多少違いはあるが、1m3あたり10μgのレベルで持続すると思われる。
ところが、薬液の有効成分は、やはりピレスロイド系殺虫剤。これが「快適生活」とCMされている生活スタイルの正体なのである。
ノーマット系、臭いのしない、長期間使えるなどの防虫雑貨に注意!
- ノーマット系=常に合成薬剤を揮発させる仕組み
- 臭いがしない=殺虫剤を使っているという実感がない
- 長期間使える=長期間、無意識に薬剤を吸い続ける
この数年、臭いがしない、長期間使えるという触れ込みの防虫剤が、恐ろしいほど普及しています。
たとえば、ガスはそもそも無臭です。なのに、ガス臭いのはなぜかわかりますか?
危険なので、臭いがつけてあり、その臭いで、ヤバイと分かるようにしてあります。
逆に、どうして、防虫剤の臭いがしないようにしてあるか、分かりますか?
それは、理由を述べなくても良いと思いますが、
できるだけ意識しないようにして、よく売れるようにしてあるのです。
虫除けスプレーは危険!
※食品と暮らしの安全より抜粋
強い突然変異性を発見
キャンプブームで虫よけスプレーの普及がすすんでいます。コンビニにも売っていて、スプレー式からジェル、泡フォーム、ティッシュなどのタイプがあります。有効成分はすべてディート。
アメリカで1950年代に軍事用に開発された昆虫“忌避剤”です。海外でも広く普及しており、私がフィリピンに住んでいた時も山へ行くときにはマラリア対策として必ず塗るように言われたのを覚えています。日本子孫基金は、都立立川短大の吉田幸弘教授(当時)に依頼した実験で、ディートに強い突然変異性があることを突き止め、88年から危険性かあることを訴えていました。
その危険が現実になったと思われる事態がアメリカで発生していました。
湾岸戦争症候の原因にディート
アメリカでは、91年の湾岸戦争に参加した70万人の内、復員後に10人に1人が頭痛、湿疹、関節炎、筋肉痛、慢性疲労、記憶障害など原因不明の慢性病を訴えています。戦争中に化学物質を多量にあびた結果、化学物質過敏症にかかったという説が強くなっています。しかし、その原困は、イラク軍の化学兵器、化学工場攻撃や油田火災からの排煙、砲弾の放射性物質、伝染性病原菌などさまざまな可能性があり、結論は出ていません。
93年には、神経ガスヘの対策用薬剤(臭化ピリドスティグミン)と一緒にディート使った場合、ディートの毒性が10倍になるというデータを農業省の医学獣医学昆虫学研究所の、ジム・モス博士が公表。兵士の安全を守る薬が複合作用で、逆に彼等を傷つけていた可能性が高くなっています。
帰還兵の子供たちに先天異常
さらに恐ろしいのは、この湾岸帰還兵に免疫不全や先天欠損症の子供が生まれていることです。国防省は「帰還兵の子供に特別多いというデータはない」と言っていますが、市民団体「先天欠損症子供の会」では、2万人に1人といわれる症例が、すでに12ケースも報告されているので非常に多いと言っています。
原因が男性にあるとすると、生殖細胞の遺伝子に間題があることになります。ディートが突然変異性を持ったまま精子をつくる細胞に到違した可能性があるのです。ディートの遺伝毒性は今のところ証明されていません。
世界で初めてディートに強い突然変異性を発見した吉田教授は、その後定年退官されたので、遣伝毒性のテストは行われていません。日本子孫基金としては、できればディートの遺伝毒性テストに取り組みたいと考えています。
湾岸戦争症候群は、神経ガスや害虫から人を守るはずの化学薬品が、逆に病気を引き起こしたケースです。また、単独では安全な物質も、数種類複合して使うと、ものすごい毒性物質に変わる実例でもあります。「疑わしきは避ける」の原則からみれぱ、ディートは最優先で避けるべき物質といえるでしょう。