アップサイクル雑貨「Angkyut(アンキュート)」
フィリピン発、廃材を使った未来へつながるアップサイクル雑貨
「カワイイ」から世界に「イイコト」広がる。
アップサイクル、ご存知ですか?
社会全体が持続可能な未来を目指している21世紀。
環境への関心が高まるとともに、いったん使ったものを再利用することもすっかり私たちの生活に馴染んだものとなりました。
その中でも、もはや誰もが知っている「リサイクル」は、使い終わったものをいったん素材のレベルにまで戻したり溶かしたりして新しいものへと作りかえています。
一見とても良いことのように思えますが、素材として使える材料が限られているうえに 新しく作るよりリサイクルの方が手間とエネルギーがかかるという本末転倒なものもあり、 「本当に『エコ』なものは何か」が少しずつ見直されている現状です。
そんな中で、新たな資源活用の動きとして盛んになってきているのが「アップサイクル」。
捨てられてしまうものを新たに作り変えるのではなく、元々持っているものの個性や形、特性を生かしたまま新しいものへと甦らせるこの動きは、
素材を生かすことでより省エネルギーに、そしてよりユニークなプロダクトとして「もったいない」の精神とともに世の中に広がりはじめています。
一見普通のポーチに見えるAngkyut(アンキュート)も、実は元のかたちを生かして作られたアップサイクル雑貨のひとつです。
作り手は家族を支えるフィリピンのお母さん
Angkyut(アンキュート)のポーチとホルダーはすべて手編みのハンドメイド。
作っているのはフィリピン・マニラで家族と暮らす専業主婦のお母さんたちです。
フィリピンは貧富の差がとても激しい国。
いまだに国民の30%以上が世界銀行が定める国際貧困線以下で生活し絶対的貧困におかれているといわれており、世界全体の貧困が少しずつ減っているなかで
フィリピンに関してはわずかながら増大しているというデータもあります。
Angkyut(アンキュート)を作っているのも主に1日1ドル以下で生活する貧困層の人々。
彼らは「パヤタスダンプサイト」と呼ばれるゴミ投棄場周辺のスラムに暮らしています。
「ダンプサイト」とはゴミ投棄場のことで、投棄された廃棄物の中から紙、プラスチック、 金属などの廃品回収を生業にする人々が住み着くため周辺がスラムとなっています。
スモーキー・マウンテンのそれから
フィリピン・マニラといえば「スモーキー・マウンテン」のことを思い出す方もいるかもしれません。
都市部から回収されたゴミがひとところに集まり、山のように積まれる最終処分場。
化学反応や自然発火によりこのゴミから立ち昇る煙から、スモーキーマウンテンと名付けられたようです。
児童労働や生活の悲惨さがフィリピンの貧困の象徴として国際メディアにも取り上げられるようになったことで、
スモーキーマウンテンは閉鎖され周辺住民も強制的に退去させられました。
しかし本質的な問題は何も解決されることはなく、立ち退いた人々の中には、スモーキーマウンテンに代わって最終処分場となったパヤタスダンプサイトに移住し同じ廃品回収を生業にしている人々も多く存在します。
スペイン、アメリカ、それから日本...
フィリピンは長い間植民地として、自国の文化や産業を奪われてきました。
そのため、今も自国を代表するような大きな会社や産業が少なく、英語も堪能で優秀な人材は国外に出稼ぎに出たり外資系企業で働く事例が多くなっています。
国内では、貧困層の人が安定した職につくことはとても難しく、日雇いで危険な仕事をする人も絶えません。
そうやって、一日中汗だくで働いても、十分な労賃を得られず、家族や自分の食料を購入できず、ごはんを食べられない日もあります。
フィリピン首都圏の1日あたりの最低賃金は2017年5月現在約500ペソ(約1250円)です。
一方、ダンプサイト周辺の人々は1日の世帯収入の合計が約360ペソ程度(約900円)です(2016年NPOハロハロ調べ)
アリーンタラ家族の場合
3人家族(お父さん、お母さん、子ども1人)
中学卒業。お父さんは自転車タクシーの運転手をしています。お母さんは専業主婦の傍らでこの手工芸を副収入の機会にしています。 平均の世帯収入は月約6,000php程度(約15,000円)、1日約200php程度(約500円)です。 お母さんは子どもが大学を卒業しこのような生活を変えていってくれることを願っています。
Angkyut(アンキュート)ができること
経済的にも社会的にも苦しい環境の中でも、家族を支えたくましく生きる女性たち。
このAngKyut(アンキュート)雑貨は、そんな女性たちが集まり未来への希望を託して造られる雑貨です。
もともとは、地域の学校で、子どもたちが飲んだ後のジュースのパックや、お米や飼料肥料が入っていた袋です。
洗剤やアルコールで素材を清潔にしてから、製品に合わせ型取りをしていきます。
例えばOrigamiシリーズの作品は、小さな長方形に型どりを行い、折り紙の要領で小さなパーツに折り畳み、パーツとパーツを横1列につなぐ作業を根気よく続けます。
最後にテグスを使って列をつなぎあわせ、1つのポーチを完成させます。
この作業は大変ではありますが、一度手順を覚えてしまえば誰でも作業ができることがポイント。
裁縫など高度な技術を持たないお母さんでも製品作りに参加することができます。
さらに、危険な作業でもなく、場所を選ばずにできるため、
子どもの世話などの家事育児で時間がないお母さんたちでも、家事や育児の合間に作業をすることができます。
彼女たちはとても意欲的で、自分たちでチームを作り、技術指導をし、支え合いながら制作を続けています。
いわゆるスクォッターと呼ばれる不法滞在地域で、家族や親戚とともに支えあいながらサバイバルの日々を過ごす女性たち。
Angkyut(アンキュート)は彼女たちに就業の機会と、大きな元出を必要とすることなく安全に副収入を産み出せるチャンス、
そして何より、それらを通じて社会とかかわり、共に生きるためのコミュニティに参加する機会を作りだしています。
Angkyut(アンキュート)ができるまで
Angkyut(アンキュート)の主要素材は、フィリピンの一般の人々が購入するお菓子やジュースなどの空き袋です。
アルミやプラスチックでできているため、耐久性や防水性に優れています。
学校など人の集まる施設で清掃活動などを行う人々に協力してもらい素材を集めており、彼らの副収入にもなっています。
中を開いて洗剤で洗い、自然乾燥させた後、裁縫や編み作業を行なっています。
最後に製品の仕様を確認しながら長い糸などを切り、アルコールで拭きパッキングして完成です。
集めてきたジュースのパックを洗います。
洗ったパックを天日で乾かします。
パックの加工にうつります。
最終チェックをして日本に送り出されます。
※こちらはジュースパック雑貨の制作工程です。Origami(オリガミ)シリーズとは若干制作工程が異なります。
商品紹介
LIP&KEY HOLDER
必要な時にかぎって、どこへ行ったかわからないものといえば、リップと鍵。
これはその両方を入れてバッグの外側につけられる便利なアイテム!
どこにでもかけられるキーホルダータイプだから、使いたいときにいつでも取り出せる。今まで探しものをしてた時間は「なんだったの?」となる事間違いなし。
柄はシックなシルバーと元気なカラフルの2柄展開。チャックは3色からお選びいただけます。
チョコレートやビスケットなどの入っていたアルミ素材のお菓子の袋を使っているので、
耐久性も防水性も抜群です。
一つずつ手作りで作られているので、色の出方もそれぞれです。
ハンドメイドの味わいとカラフルさをお楽しみください。
Origami Pouch(オリガミポーチ)
コスメやこまごました雑貨を持ち運ぶのにベストサイズのポーチ。
ORIGAMI(オリガミ)
のしっかりとした編み込みがクッションになってくれるので、デジカメなどの機器類や、大事なものを入れるのにもぴったりです。
ユニークなハガキサイズで目立つので鞄の中でも迷子になりません。
チョコレートやビスケットなどの入っていたアルミ素材のお菓子の袋を使っているので、
耐久性も防水性も抜群です。
一つずつ手作りで作られているので、色の出方もそれぞれです。
ハンドメイドの味わいとカラフルさをお楽しみください。
明日へつながる「体験の場」をつくる
NPOハロハロ代表 成瀬悠さん インタビュー
Angkyut(アンキュート)の制作・流通を支援しているのは、2008年(法人化は2013年)から
フィリピン地域の貧困層の生活向上と自立を支援している、「NPO法人 ハロハロ」さんです。
代表の成瀬悠氏が単身で立ち上げ、フィリピン現地の人々との対話の中で一歩ずつ確かな成果を残しています。
ハロハロとは
フィリピン語で「いろいろ・ごちゃまぜ」という意味。
フィリピンの代表的な冷たいスイーツでもあり、アイスクリーム、フルーツ、フレーク、かき氷などさまざまなものが入っていて、スプーンでかき混ぜて食べます。
『NPO法人ハロハロ』はそんな、国や所属、年齢などを越えてさまざまな人が参加する多様な事業から豊かな未来を目指す、「ハロハロ」な活動を目指しています。
■本日はお忙しい中京都までありがとうございます。
国内では関東地方を拠点にされているんですよね
はい、主たる事務所は東京に構えており、日本ではお話会などを開催したり催事などに出展し 、世界とともに生きる豊かなライフスタイルを啓発する活動を行なっています。
活動について
■ハロハロさんが現在行われている活動について教えてください。
私たちが現在行っている事業は、主に3つの分野にわけられます。
1つ目の活動分野は、生活向上事業。
手工芸を通して現地の人々の副収入機会の拡大と自立を目指しています。
今回ご紹介したOrigami(オリガミ)やシェルアクセサリーなどの制作支援を行っています。
また、小規模なビジネスを展開したいと考えている人へマイクロクレジット(少額貸付)を貸し付けて、彼らが自分で事業を運営し生活を豊かにしていく支援を行なっています。
2つ目の活動分野は、教育事業。
次の世代につながる人材育成のため、幼児教育や高等教育への進学支援、また再生パソコンを活用した学習支援などをしています。
■パソコンを活用して、とはどのような事ですか?
フィリピンは授業の課題をパソコンで提出しなければならないんです。
なので、パソコンが使える環境にない子は課題が出せないのでどんどん学校に行かなくなります。
そのような理由でドロップアウトしていく子供を減らすために、共有で使えるパソコンを提供して、課題が提出できるようにしています。
2015年よりスペインのらあ麺屋ひろさんとともに教育基金をスタートさせ、奨学金制度により地域の中でも強い想いを持つ若者層10名弱を大学まで通わせることができるようになりました。彼らには地域でのボランティア活動を義務付け、地域の子供たちへ学習補助や道徳教育が行なわれています。
今まで主に経済的な理由から教育をあきらめる事例しか知らなかった貧困地域の子供たちは、身近なお兄さん、お姉さんが努力して大学に通い自らの夢を実現して行く姿に、自分の未来の姿を重ねます。
地域に若いロールモデルを作ることが、貧困の連鎖を断ち切る一歩につながっているのです。
そして3つ目の活動分野が、啓発事業です。
フィリピンと日本の双方の人々が交流し、ともに豊かさを分かち合える豊かな社会作りを人づくりから進めています。
例えば、フィリピンの事業地を訪れ地域の人々とともに社会課題に体当たりで学び合うスタディツアーを行なっています。異なる文化的、社会的背景を持つ人々同士で考えるからこそ、柔軟で斬新なアイディアが社会問題の解決につながることもあります。
また、国際協力の垣根を低くし日本の若者世代の巻き込みを図る映像・演劇の製作上映上演も行なっており、ショートコメディ「フェアトレードボーイ」や朗読劇「ごみスイッチ」があります。
さらに日本の国際協力や環境催事、地域の催事などに出展したり、日本各地で活動の説明会なども行なっています。
2013-2014年に公開された映画「フェアトレードボーイ」
これらの事業は全て補完し合いながら世界に豊かな社会を築く「人づくり」につながっています。 例えば、学習補助を受けて高等教育を受けられている地域の生徒が、お父さんお母さんの仕事の機会作り事業をバランスシートを作成し運営状況を分析するなどのデータ面でサポートするようになり、地域の子供たちに勉強の大切さも教える土曜学校のボランティア先生を務めるようになる、などの事例があります。 収益と支出の面からも、スタディツアーでの参加費収入はフィリピンの子供たちへの学習補助事業や手工芸技能練習会につながっていたりします。
■フィリピン現地でパートナーとなっている生産者さんについて教えてください。
はい。私たちのパートナーはフィリピンのマニラとセブの二か所で、それぞれの地域で約30名ほどが働いてくれています。
セブではシェルアクセサリーの製作などがメインですが、
Origami(オリガミ)シリーズを作ってくれているのは主にマニラ・パヤタス事業地の女性たちです。
彼らはとても意欲的で、マニラの方では定期的に講習会を開催し、約38世帯、190名の生計の向上につながっています。
作るのが上手な人は自主的に講師やマネージャー、コーディネーターなどの役割を担ってくれているんですが、 それが組織強化やリーダーシップにもつながり、地域行政や教育機関、民間団体同士の連携も強くなりました。 学生インターンとボランティアによって、地域の人々との国際交流も活性化しています。
■ハロハロさんのモットー、活動理念についてお伺いしてもよろしいでしょうか。
私たちは、ハロハロの活動に参加/応援してくれる日本とフィリピン全ての人々にとってのチャンスが世界に拓けて行くことを大切にしています。
私たちは援助ではなく、共に働き生きる団体であろうとしています。
一方的な資金や活動の援助を行うのではなく、私たちは事業地域に生活する人々とともに対話しコミュニケーションを育みながら、ともに豊かな未来を模索し地域課題解決活動を行なっています。
日本から一方的にお金や資源を与えるのではなく、あくまでチャンスや場を与えた上で、彼ら自身が自発的に進むことをハロハロは望んでいます。
私たち日本人側の活動も、すべて彼らとの対話、人対人のコミュニケーションの中で進んでいきます。
そうやって出てきた意見を聞いた上で、「援助」ではなく、「最も良い形はなんだろう」と一緒に考えていくんです。
ハロハロは小さなNPO団体です。NPOや財団などの民間団体にも大小様々な規模があり、また専門性も様々であるため、
それぞれの団体に応じた役割があると思っています。
私は特に専門性があったわけでもなく、社会貢献を仕事にしたい一心で自分でNPO法人を一から立ち上げ、1人1人の顔が見える小さな事業地の範囲で、透明で意義のある活動を実直に積み重ねてきました。
小さい団体だからこそ、いわゆる大きい団体の支援対象からは外れてしまうような人々にもアプローチができ、1人1人のニーズを確かに拾い上げながら地域に根付く活動ができることもあると思います。
■一人の人間として対等な視点に立って見ることができるんですね。
今、私たちとともにある人々は「お金のつながりではなく活動の意義を共有し豊かな地域を人々のつながりで築こう」とする、自らの地域社会への参加が地域の未来につながることを理解している人々です。
私たちは支援をするのではないからこそ、地域の人々の力に頼っており、その地域の人々が次々に地域のまた違う人を巻き込む原動力につながるのです。
■その中で、一握りのパートナーを決める時にハロハロさんが大事にしているのは何でしょうか。
「向かう方向が同じかどうか」ですね。
(私たちNPOがきて)「日本人が来た、お金がもらえるぞー」と思って寄ってくる人たちはいずれ去っていくんですね。
そうではなくて、「自分たちの力でがんばって働きたい」と思っている人たちと、「一緒に作っていこう」という気持ちでいてくれる人たちだけが残ります。
自発的に場を維持して自分たちで進んでいくということは、忍耐力も耐久性も、モチベーションも必要です。
私たちはお手伝いをしているだけで、あくまで動くのは彼ら自身。
こちらがハンドルを切るわけではないし、舵をとって進んでいくのも彼ら自身です。
それでも進んでいきたいと共に前を向ける人たちと一緒にお仕事をさせてもらっています。
■フィリピン現地へのスタディツアーはいつから始められたんですか?
最初は元々支援してくださっている方々のお声からはじまりました。
「実際に現場を見てみたい」という声がきっかけでスタディツアーが開催されたのが2014年のゴールデンウイークです。
大体毎年GWと夏、冬あたりに開催するようになって、もう10回以上になります。
お休みのシーズンに合わせていることもあって、社会人や20代~30代の若者中心が多いですね。
ハロハロのスタディツアーは、現地を見てもらうだけでなく「参加する」ツアーであることが特徴です。
フィリピンの事業地の人々と日本人と、異なる社会的文化的背景を持つ人々同士で、目の前に広がる社会課題へいかにアプローチし自身が生きていこうとするのか、知識や体験を共有することにより、日本とフィリピン双方の場にこれからの豊かな社会を築く大切な人が育っていく、そんな場にしています。
■知識や体験、ですか。
なんでもいいんです!
たとえば防災の知識とか、ちょっとした日本の習慣だとか。
この前のツアーでは「手洗い・うがい」を現地の日人にレクチャーして帰ったんですが、
聞くと今でも地元の人たちは毎日うがい手洗いを慣行しているんですって。
そういう話を聞くと、なにげなく教えた日本側の人もうれしいじゃないですか。
うちのスタディツアーではそういった、国や年代を超えた人と人とのつながりを大事にしています。
成瀬さんご自身のことを教えてください。
■20代半ばでNPOを作るという大きな決意は何がきっかけだったのですか。
決定的な出来事、というものは特にありませんでした。大学を出て印刷会社の営業アシスタントとして働いていたんですけど、
働いていてずっと「違和感」のようなものがあったんです。
「自分の生き方はこれでいいのだろうか」そういうモヤモヤが日々ありました。
お金を貯めるだけに一日の大半を使って働いて、そうやって集めたお金でプライベートを充実させる。
そういう風に暮らしていくことに、「なんだかちがうな」という思いがあり、周りとのズレを感じていました。
そんなモヤモヤの中で「社会起業家に学べ!」という本と出会い、そこで「社会起業家」という働き方を知りました。
そこで「そうか、自分のやりたいことはこれなんだ!」と確信して、それからNGOのスタデイツアーに潜り込み、自分でNPOを立ち上げ、今に至ります(笑)
■エネルギッシュですね……元々そういった活動に興味が向いておられた、という訳ではないんですか。
全くです!むしろ学校で強制的にさせられるボランティア活動などには全然興味を持てない子どもでした。
ただ、自分で納得できないと動けない分、決めたらどこまででも進む、そんな一直線なところはあったように思います。
社会起業家という目標を持ってからは、2008年にフィリピンのNGOのスタディツアーに参加した後も、日本でのフェアトレード部門の推進活動をボランティアとして担う中で運営などについての知識を少しずつ身につけ、自身でNPOを立ち上げました。
2012年に特定非営利活動の法人格を取得し、2017年の12月で5周年となります。
■スタディツアーもですが、おひとりでNPO団体を切り盛りされるのは大変ではないですか。
いえ、私ひとりの力ではありません。
確かに表向きは私ひとりが走り回っているように見えますが、わからないことは専門の人に聞いて助けていただいたり、
資金を援助していただいたり、そういうたくさんの方のご支援をいただけて、今こうしてハロハロがあります。
一度に大きく何かを変えられる訳ではないので、目の前で見えている、自分にできることを一歩一歩というスタンスで私もやっているし、
フィリピンの地域の人々も同じようにやっています。
小さなNPO主導で細々とやっているので、社会的なインパクトからいうと
「実際に収入がこれだけ上がった」とか、正直そういった数値としての評価はなかなか上がりにくいんです。
でも、ハロハロが本当に大事にしているのは「働き生きる楽しさを知ってもらう」ということ。
現地の人がこういった「体験や経験」を通して何かを感じ取ってくれる事を何よりも大切にしています。
■成功体験や「自分たちにできるんだ」という感覚、誰かに感謝されて嬉しい気持ち、 そういう「体験」にすごく重きをおかれていることを何度もおっしゃってくださっていますよね。
それが私の何よりのモチベーションでもあります。
地域社会からも一般の行政からも漏れてしまうような不法滞在やスラムの地域の人たちはどこからも孤立しがちで
「自分は一人かもしれない」って気持ちを抱えている人が多いんです。
境遇は違えど日本人も同様に孤独感を抱えている人は多いと思います。
そういう人にとって、自分の感情や意見がとても大切にされる経験や、自分が少しだけ行動したことがきっかけになって「みんなで一緒にひとつのことができた」という体験---
たとえばご飯が配れただとか、ひとつ雑貨が完成して販売できただとか、その体験ってやっぱり大きいんです。
「(自分でも)やれば違うんだな」と思える。
そういった体験が鍵となって、今後も何かのきっかけで繋がっていく、彼らが今後生きていく上での大きな体験になるんじゃないかなと思って続けています。
Angkyut(アンキュート)のこれから
■Angkyut(アンキュート)の雑貨ですが、全て手作りという事を考えると、すごい手間がかかっていますよね。これ1つを作るのにどれ位の時間がかかるんでしょうか。
例えば一番小さいOrigami Lip&KeyHolderでも、型どおりの大きさに切るところからはじまるので、約8時間かけて1つの製品ができあがっています。 素材を集めて洗って乾かす作業の時間もカウントするなら1製品2日はかかると言えるのではないでしょうか。
■材料を探すところから、となると本当に根気のいる作業だと思います。
フィリピンの人はよく働くと聞きますが、それがよくわかる製品ですね。
そうですね、皆さん本当に一生懸命にがんばってくれています。
■Angkyut(アンキュート)とハロハロさんのこれからについて聞かせてください。
Angkyut(アンキュート)としては、フェアトレードに関心がない人にもこの雑貨を知ってもらいたいという思いがあります。
10代~20代の子が「かわいい」と手にとって、手に入れた後で廃材だということを知る。
そのくらいの感覚で、単純に気に入って買ってくれる人を増やしていきたいです。
ハロハロとしては引き続き地元の生産者団体の支援を続け、彼らの自立をサポートしていきます。
今年は生産者さんたち自身で会社を立ち上げたいという目標があるので、一緒に前を見て頑張っていきたいですね。
■ありがとうございました。