
レトロな造りが素敵な、JR北鎌倉駅 |
鎌倉といえば一番に大仏様(!)を想像するのは、私だけでしょうか?大仏様といい、鎌倉幕府を開いた源頼朝といい、どこかダイナミックで、限りなく広がる青空のような爽快なイメージを抱いていたのですが、北鎌倉駅で電車を降りたとたん、私のイメージとは全く異なる世界がそこにありました。
情緒豊かな小道のすぐ背後は深い木々にあふれていて、訪れる観光客の方々も、静かに木漏れ日の下の散策を満喫しているといった印象。どことなく、京都は大山崎あたりの雰囲気に似ている気もします。
一息ごとに、呼吸がとても深くなっていくのが自分自身はっきりと感じられ、一歩ずつ歩くごとに、まるで背についた羽がパタパタとはばたいているような軽やかさもあります。
そんな風に、北鎌倉の空気に溶け込んでしまいそうになっていたときに、今しがた通り過ぎた建物がふと気になり、立ち止まって振り返ってみました。とても可愛らしい洋館・・・。こぢんまりしているけれど、どこか存在感があって、建物の中の暖かい空気がまるでオーラのように全体を包んでいるような、優しいたたずまい。
「ふ~ん・・・」と歩み寄ってみると、玄関に看板・・・ 葉、祥明・・・!

この看板を見落とすと迷子になります |
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おしゃれな洋館!と思いきや・・・ |
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美術館のホームページに、「友人の家に遊びに行くような気持ちでご来館ください」と書かれていたとおり、「美術館」という言葉から想像していた趣とはかなり違ったため、それらしい建築物を探していた私はうっかり通り過ぎてしまったわけなのです。
玄関では、さっそく犬のジェイクのぬいぐるみが、「葉祥明ワールドへようこそ♪」と出迎えてくれています。葉先生と聞いて一番に思い浮かぶのは、優しく可愛らしい色合いで、地平線の見える原っぱで子供たちが遊んでいるメルヘン画でしたが、訪れたときはちょうど「Young
Age」展という企画をしていて、葉祥明先生が1972年に絵本作家としてデビューする前にニューヨークで絵の勉強をしていた時代の貴重な作品が展示されていました。
エコール・ド・パリに影響を受けて描いたという、モディリアーニ風の肖像画や、ベトナム戦争中のソンミ村虐殺をテーマにしたものなど、私が知る限りの淡い色彩の葉先生の作品とは異なる絵の数々が、館に入るなり私を待ち受けていました。葉先生の軌跡を垣間見る事が出来たようで、それだけでもなんだか大きな収穫です。

マフラーを巻いたJAKEに出迎えられて |
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玄関を入ったところは絵本などが並ぶショップ |
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そして、次の部屋に足を踏み入れると・・闇色の中の地平線、水平線。月。夜明け。小舟。
ああ・・・深いな。かなり・・・。
ただ単に、海岸の風景だと思って見ているうちに、だんだん、ただの海岸じゃないように思えてきます。ただの小舟だといえばそれまでですが、どうやらそれは普通の小舟じゃない気がしてきます。シンプルな画風の中に、思わずため息が出そうなほどの精神的な世界の広がりを感じずにはいられません。
なんとも表現しがたい不思議な感情が沸きあがってきて、しばらく足が完全に止まってしまいました。

サニーシリーズも展示されていました |
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絵画やポストカードを熱心に選ぶ訪問客 |
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そうして、どうにかこうにか先へ足を進めると、そこは見慣れたはずのパステルの世界。でも、先ほどの刺激のせいでしょうか。驚いたことになんだかこれまでの印象と全く違うのです。
子供たちの笑い声が聞こえてくるような、木々の間を通り抜けるそよ風が感じられるような、あるいは、遠くにいる大切な人を想う心が全身に染み渡るような・・・不思議な感覚。
黄色やオレンジ色の安心感。緑の香り。青色の透明感。そして白色の・・・なんでしょう。自然に湧き上がってくる、この不思議なイマジネーション・・・。
次の予定がなければ、ずっとずっーと立ち止まってしまいそうな、そんな心地よい体験ができたひとときでした。

最後は洋館のまでお決まりのパチリ♪ |
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玄関先の庭にて・・・黄色がきれい! |
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